飲食店ホール(バイト)としての矜恃②

前回の続きだが、
小さな個人経営のスペインバルで(ほぼ)人生初のバイトをして
そこで教わった飲食店ホール(バイト)としての矜持、心もちを
自分が忘れないためにまとめて書いていく。

あくまでも俺がスペインバルで働いていた時に
教えてもらったり自分で考えたことなので
当てはまらない方、職種はもちろんある。
これから述べる矜持への異論は大いに認める。

まず、正直笑顔がどうだとか声の大きさがどうだとか
そんなのってどうでもええんじゃないかと思っていて、
今はマスクしてるし声は大きいのが正義ではないし
俺が働いていたのは焼肉屋でもラーメン屋でもないわけで
大きな声って店にそぐわないのである。
にこにこ笑顔じゃなくても
おっきな声じゃなくても
感じがいいなとお客様には思ってもらえるものだ。
なんなら逆に考えて欲しい。
睨まないことと、聞こえない声は意味ないってこと。
これがわかっていれば良いと思う。

次にうちの店でのポリシーだったが、
お客様のわがままは即却下はしない。
氷なしのドリンクにして欲しい、
人数分の皿に分けて出して欲しい、
アヒージョをえびとマッシュルーム両方入れて欲しい、
メニューにないけどこういうパスタ作って欲しい、
バケットを4枚のところ人数に合わせて5枚にして欲しい、
子供がいるので塩加減控えめな料理にして欲しい、
付け合わせが実際カポナータのところピクルスにして欲しい、
その他もろもろお客様からのイレギュラーな要望は
オーナーに相談すると大体のことはまず通る。
あるいは条件や代替案を示してくれる。
増量だとかグレードアップだとかそういう要望には
「プラス○○円となりますがよろしいですかと聞いてみて」など
叶えられるがこうなるよ、をきちんと提示する。
うちに来てくれるお客様はそれでわかってくれるし、
そのことで、お客様の要望を無理して丸呑みしているわけではないのだと
バイトである自分も安心して聞くことができるのだ。
近隣の類似のお店やチェーン店との差別化も図れるし
何よりお客様が喜んでくれるのでそうしている。
お客様からああしてほしいこうしてほしいと
わがままを言われたとしても
メニューにないものは無理ですと突っぱねるのでなく
安心してオーナーに相談して欲しい。
願いを聞いてくれたお店の店員さんになれるはずだから。

そして、お客様に見せてはいけないものがいくつかある。
まず自分の後ろ姿を極力見せないこと。
何も極端に全てのお客様に前だけ見せて歩けとか言ってるのではない、
ホールで注文されるのを待っている時、
運ぶ料理を待っている時、
伝票に記入している時、
バーカウンター内でグラスを磨いている時などなど
前を向いて、全てのお客様をみていて欲しいのだ。
席の料理の進み具合を見て次の料理が出るタイミングを変えたり
空いたお皿やグラスをすぐに下げられるように、
注文したそうなお客様を声かけられる前に見つけるため、
カトラリーを落としたお客様がいないか、
倒れそうな位置にグラスがないか、
席をはずしているお客様の荷物を見ておいたり、
お客様同士の関係を見て誰から飲み物を出せば良いか把握したり、
ホール店員の仕事のためにお客様はよく見ておく必要がある。
それだけではない。
ホール店員の振る舞いでお客様はある程度コントロールできる。
うちで泥酔するお客様がほとんどいないのは
大衆居酒屋ほど気軽でもないし、
デートや女子会、接待や家族での食事に選ばれやすく
泥酔するようなシーンで使われることが少ないためだが、
それに加えて、
お客様のお酒を飲むペースを店員がよく見ていて
適宜お冷をお出ししていることや
おすすめする飲み物を変えているからでもある。
関係性の気づけている常連のお客様へは
「今日いつもよりペースお酒が進んでいますね!」と
雑談のように声をかけることもする。
お連れのお客様が自動的に飲み過ぎそうな方を気にかけてくれるのだ。
大声を出すお客様もほとんどいないが、
それはホール店員が接客の声のトーンを押さえたり、
ぐわっとボルテージが上がりすぎてしまう時に
席へ行ってお皿やグラスを下げたり
大皿料理を小さいお皿に取り分けましょうか、など
お声かけをして一度上がりすぎたテンションを
落ち着かせたりしているからである。
カラオケで熱唱中に店員さんがフライドポテトを持ってきたら
自然と声が抑え目になる人が多い。そんな感じ。
お客様から目を離してはいけない。
サービス、ホスピタリティのためでもあり、
お客様の安全やお店の雰囲気を守ることにもなるからだ。
もちろん、グラスが割れてしまったりお皿が溜まってしまったり、
気分悪くなって戻されたり料理が遅れてクレームになったりすると
店員も大変になるのだから、
そういったことから店員自身を守ることにもなる。

お客様に見せてはいけないものはまだあって、
それはバッシングのためにぐちゃぐちゃにされたお皿や料理である。
うちではお客様の目があるところではトレーを使わない。
お皿の上にパエリアで出た貝殻やエビの殻などがあったとして、
それらのお皿は重ねずにバッシングする。
食べ残しの乗った皿に他の皿を乗せたりもしてはいけない。
食事中のお客様に、ゴミのように扱われる食材を見せてはならない。
お皿の上に紙ナプキンやおしぼりを入れてもならない。
グラスにお箸を入れるなどもってのほかだ。
バッシングも綺麗に美しく見せてほしい。
気持ちよくお食事いただくために必要なことだ。
ノーゲストの時やお客様が帰られた後の個室のバッシングは
一つの皿に食べ残しや殻類をまとめてトレーを使って下げても良い。
次のお客様を早くお通しするためのバッシングだからだ。
もちろん美しさのために少量ずつ皿やグラスを引いていては
いつまで経っても肩付かないので
常にお客様のテーブルに気を配って
空いた皿やグラス、使用済みの紙ナプキンなどは
積極的に下げていこう。
お客様が帰られたテーブルの上には
最後に飲まれていたもののグラスだけ。
これが理想と言える。

もう一つお客様に見せてはならないものがある。
それは店員同士の雑談や大きな声での指導、そして確執だ。
コミュニケーションを取ることはとても大事なことだが
店員同士話し込んでいるところにお客様は声をかけづらい。
うちにオーダーベルはないので、
お客様はお声掛けや挙手、アイコンタクトで店員を呼ぶ。
だから店員同士話すとしても目線は常にお客様を向いていること。
話し込むとお客様はお声かけをしにくくなってしまうので
ウェルカムな体制を常にとっておくことが大切なのだ。
これは先に述べたお客様を常に見ていることとも重複する。
また、大きな声での指導もお客様には見せるべきではない。
他の店員の失態や誤りに注意しなければならない時
その声がお客様に届いてしまうのはよくない。
単純にそれが聞こえたお客様の気分が良くないからだ。
そして店員同士の確執。
働く仲間は選べない。
もしかしたら中には自分と合わない人もいるかもしれない。
でもそれはお客様には関係ないことだ。
たとえ仲が悪くとも、店員という役をやっていると思って
お客様には見えないように、影響が出ないようにしてほしい。
もちろん相談に乗ってくれる人は複数人いる。
チームで働く以上、忘れないでいてほしい。


おっと、3000文字近くなってしまったので今日はこの辺で。
何を当たり前のことを書いているんだとも思ったし
中には時代錯誤なこともあるかもしれないけど
私は私自身のバイトながら矜持としてこう思っている。
自分自身のメモ、備忘録として書き出しているので
あまり深読みはしないでほしい、、、かな

続きはまた次回、③で。




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