※断じて結婚したいのではない

いいか
わたしは断じて結婚したいのではない

結論から言う
結婚が可能な人間になりたいのだ

将来の夢はお嫁さん!的な
夢見る幼子のような気持ちで
結婚したいと言っているのでは無い
そう捉えられるのは大変不本意、
というか癪であるからして
言葉を変えさせてもらう

結婚できる人間になりたいのだ
要は真人間になりたいのだ

というか、真人間になって欲しかったのだ

結婚なんて簡単じゃん!
婚姻届にサインして提出!おわ!
こんだけじゃん!

そう思っていた時期が俺にもありました

同棲して現在8年目
半分くらいの時か、4年ほど前
私と彼の間に籍を入れてもいいかも感があった

今思えばあの時勢いに任せて
籍でもなんでも入れちまえばよかったのだ

なぜ籍をいれなかったのか
今からでもいれればいいじゃないかと
そう考えては見たがやはり難しい

同棲をして同じ家に住み
同じ飯をくらい同じ部屋で眠り
同じ風呂を使って同じ洗濯機で服を洗う
お互いの財布で二人で使ったものを支払う

その暮らしぶりは同棲とはいうが
ほぼ事実婚、というか
もう結婚していたようなものだ

籍を入れて一体何が変わるんだ

世帯がひとつとなり
苗字が変わったり変わらなかったり
扶養に入ったり入らなかったり云々

それが違いだというなら
籍を入れるのはむしろ無理だ
諦めざるを得ない

お互いの苗字が嫌いだったから
名前を変えたくは無かったし
扶養問題にしても
彼はアーティスト活動に忙しく
仕事という仕事はコンビニ夜勤のアルバイトか
日雇いに行くくらいなもんで
私を扶養するどころか納税すらままならないし
私も安月給でキーボードを叩いているだけなので
納税がままならようなない人間を
抱える訳には行かなかった

彼には健康上の問題もあり
普通に働くことが困難でもあったので
いつかのセーフティネットとして
生活保護の申請ができる余地を
残しておく必要があった
そのためには私と生計を同一であると
書類に残す訳には行かなかったのだ

奨学金を借りて大学まで行ったくせに
当の本人の無能さゆえに低い給与で働く私
ただの事務のはずなのに
何故か帰るころにはクタクタで
ああ、あの雑用のせいかと思い返しながら
鉛よりも重く感じる体と頭を引きずって
少しの食材になし崩し的に火を通し
お米でお腹ぱんぱんが1番安上がりなもんで
ご飯が進むか否かだけにフォーカスした味付け
浴槽にお湯を貯めるのも億劫で
ほとんどの日をシャワーで済ませた
洗濯物を回すまではいいが
いよいよの時間になり寝落ちして
干し損ねることもしばしばあり
そんな自分に辟易していた

こんな自分に付き合わされる彼も可哀想だと


結婚したいのではない

結婚できるほどの真人間になりたかった

結婚したくないのでははい

結婚できないのだ


全て自分の行いのせいだ
今までの報いがこうやって現れただけだ

同級生は毎日旦那のために作った弁当を
Instagramに投稿しているし
同僚もゲームで出会った年下の彼と
付き合って一年経たずに籍を入れた
前の職場の子も2人目が生まれているようだし
親からは地元の人間が結婚する度に
その報告を聞かされる

みんな頑張っていた子たちだ

わたしだけだ
なにもなせず
なににもなれず
ひつようとされず
ひとのやくにもたてず

わたしだけがただ、ひとり


8年続いた同棲も解消寸前だ
アーティスト活動の邪魔になるらしい
私が彼と過ごしたがってそばに引き止めた時間を
アーティスト活動に当てられていたなら
彼は今頃もっと売れてもっと稼いでいたらしい

わたしがひとりでいられる人間だったなら
わたしがもっとまともな人間なら
彼は納税の義務を果たせていたのだろうか


わたしは結婚したいんじゃない

結婚できる人間になりたかった

いいなと思ったら応援しよう!