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いつのまにか出国と入国のスタンプが消えていた

コロナ禍までは気付いたら日本にいない生活をしていたのだが、コロナ禍をきっかけに気付いても気付いても日本にいる生活になっていた。
日本がいちばん好きだから、全くもって悪いことではないのだけれど。

そんなわたしが、ひさしぶりに日本を出ることになった。10日間程度の、ちょっとした旅行。

歳を重ねると、5年間でも結構老ける。
海外に出て、入国審査でパスポートを見せたら、実際の自分の顔と見比べられて、
「これは本当に君か?」
なんて言われたら悲しい。
そうは言われなくても、ちょっとうーんと考える仕草をして何事もなかったかのようにパスポートを返されたらそれはそれでどうも悲しい。

そう思って、10年のパスポートを取得できる年齢になってからも毎回5年のパスポートを取ってきた。
そしてついに、1冊前のパスポートは、取得した直後に始まったコロナ騒ぎやら何やらで5年間一度も出番がないままその役目を終えた。
あれは結構写真うつりがよかったのに。残念。

まあそんなことはおいておいて、ひさしぶりに日本から出ることになったわたしは、何も考えずに空港の出国ゲートに向かった。
そして、【自動化ゲート】と呼ばれる、見たことのない機械を目にした。指示通りにパスポートを置いたり正面を見たりしていただけで、いつの間にかゲートを通過していた。

ん?なんだこれ。
人は?化粧バッチリのパスポートの写真と、これから飛行機のスッピン顔を見比べられてちょっと怪訝な顔をされるあの居心地の悪い時間は?
あれ?というか出国のスタンプは?????

パスポートの査証欄に押されるスタンプというのは、国によって全然違う。
丸いのもあれば四角いのもあって、長いのもある。
何が書いてあるかわからないニョロニョロやクルクルの文字が書かれていたりもする。
パスポートという小さな冊子の中に、いろんな世界が集っていく。
わたしはあれが好きだった。

なのに、【出国】と書かれたあの四角いスタンプが押されなかった。
いやいや、なぜだ。それは困る。わたしの、凝縮された素敵な世界が。

すぐにネットの叡智に頼った。
すると、「出国や入国のスタンプが欲しい人はゲート通過後に係員に申し出る必要がある」旨が書かれていた。
わたしのように、パスポートの中の小さな世界図鑑が好きなひともままいらっしゃるようで、いろいろなひとのブログに「事務室に行ったら押してもらえた」などと書かれていた。
ネットの叡智万歳。

インフォメーションのお姉さんに事務室の場所を教えてもらい、出国審査場にあるからかどこか厳かな雰囲気を感じるその場所に恐る恐る近付いていくと、中に入る前に係の方が「はいはい〜スタンプですね」と言いながら出てきてくれた。全然厳かではない。
でもそうやって出てきてくれるあたり、結構いるんだろうな、押してほしいひと。

そして無事、出国スタンプを押してもらえた!
いや〜、よかったよかった。

ちなみに帰りもゲート通過後とのことだったのだが、こちらはゲートを通過したら後ろにスタンプ係の人が待ち構えていた。
押してほしいひとはここで、いらないひとはそのまま通過とのこと。
やはり結構いるんだろうな、押してほしいひと。(2回目)

無事出国と帰国を揃えられた


そんなこんなで無事自分の中のミッションはクリアした。
やっぱりここに記録が残るのは嬉しい。いつ旅に出たのかがすぐにわかる、いい思い出にもなるしね。

わたしの主な目的は「いい思い出」だが、実はこのスタンプがあると日本国内でのいくつかの手続きに便利らしい。
海外旅行保険の請求にも、このスタンプがあるのがいちばん楽だとネットに書いてあった。
過去に経験があるが、海外に出ていて免許の更新が期限内にできなかったときも、パスポートの査証欄を提示したら対応してくれた。

詳しくはそういう記事を調べてもらえたらと思うが、今はスタンプが押されなくなった影響で航空券の半券やeチケットなどでも対応してくれることが増えたとはいえ、スタンプがある方が手続きが簡単で楽らしい。
そりゃそうだよな、偽ることのできない、完全な証明なんだもの。

ここからは余談だが、この「自動化ゲートのせいでスタンプなし」はもしや日本だけではないのでは?と思って調べると、
やはりアメリカや韓国、イギリス、オーストラリアなどでもスタンプがなくなったと書いてあった。

来年3月にオーストラリアに行くのに押してもらえないのか?と思ってネットで調べると、「ほしいと言えばあとで押してくれる場合もある」と書かれていた。
場合もある、じゃないんだよ。押してくれよ。
わたしの小さな世界図鑑がどんどん失われていくのはもの寂しくて困るんだよ。

そういえば昔、メキシコからキューバに遊びに行ったとき、航空券の裏にスタンプを押されたことをふと思い出した。
なぜパスポートではなくて航空券なんだ?と思っていたら、パスポートにキューバのスタンプがあると、アメリカへの入国に影響が出る可能性があるからということらしかった。
アメリカとキューバは当時、国交断絶の状態にあった。日本のパスポートホルダーにとってそれ自体は直接的には関係ないことではあるが、旅行やトランジットでアメリカに入れなくなると困るかもしれない、とわざわざキューバ側が配慮してパスポートではなく航空券に押していたらしい。
当時のわたしは何度もアメリカへ渡航をしていたから確かに入れなくなるのは困るのだが、せっかくのキューバのスタンプが航空券の裏というのもなんとも残念ではあった。

そういう仕方ない事案でパスポートにスタンプがないことはあれど、まさか自動化の流れで普通にスタンプが押されない日が来るとはね。そりゃいずれ自動化される日は来るだろうとは思っていたが、自動化されたとてスタンプだけは残るとなぜか思っていたのだが。
いっそのこと自動でスタンプ押してくれたらいいのに。押してほしい場所にパスポートをセットしてください、みたいな。

そんなことを思いつつ、3月のオーストラリア渡航の際も事務室に行って、そしてオーストラリアでも交渉してみよう。
わたしには!スタンプが!必要なんだ!と。

スタンプがほしいひとは、どうかもらうのをお忘れなきよう。自動化ゲートを出てすぐのところでもらわなければならないのでご注意ください。
飛行機に乗ってからやっぱりほしかったなと思っても、こればっかりはどうしようもないのでね。

ではまた、次の機会に。

お読みいただきありがとうございました。

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