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スリランカの夜が危ない話

先日、スリランカに行ってきた。
人生はじめてのスリランカ。

緑茶の次に紅茶が好きなわたしはセイロンティーも好んでよく飲むが、その産地であるスリランカに行く機会にはこれまで恵まれなかった。
しかし今回、偶然にも最終目的地までのトランジット地の候補にスリランカがあがり、せっかくなのでストップオーバーにしてスリランカも旅しようじゃないかという話になった。

紅茶以外の要素で知っているのは、インドの近くの島国なことと、カレーが有名なことぐらい。
正直スリランカという国に、そこまで思いを巡らせたこともなかった。

基本的に日本は世界の中でいちばんといっていいぐらい治安がいい。
最近は治安が悪い話も聞くようになったが、それでも世界レベルで見たら飛び抜けていい方だと思う。
あまりスリランカという国事情に詳しくないが故の未知の雰囲気も相まって、行く前までは治安はあまりよくないんだろうな〜と漠然と思っていた。

そんなこともあり、今回のスリランカでは専属のガイドさんを依頼していた。
2泊3日、もといほぼ2泊2日の旅のあいだ、スリランカ人のシャーマンさんがドライバー兼ガイドさんとしてわたしたちを案内してくれる。
せっかくだからとやりたいことを並べ立てすぎてギューギューの行程になったが、大丈夫!と外国の方特有のおおらかさでOKしてくれた。
相手が日本人なら、道が混むかもしれないので無理です、と言われそうな強行スケジュール。

まあそれはいいとして、そのシャーマンさんは過去に日本に住んでいたことがあるらしく、日本語がとてもお上手な方だった。
こちらの日本語での質問に普通に日本語で答えてくれる。なんだったら、「二期作」とかいう、日本人でもそう言わない単語も話していた。すごい。

ちなみに、二期作については、スリランカでは二期作だからいろんな種類のお米が獲れて、カレーの種類によって食べ合わせるお米を変えるんだよという話だった。へえー。そうなのか。

そんな日本語達者なシャーマンさんと色々話すようになった頃、スリランカって治安はどうなのかとストレートに質問をぶつけてみた。

実は、スリランカに着いてすぐのとき、空港まで迎えにきてくれたシャーマンさんがわたしのスーツケースやバッグを代わりに運んでくれていたのだが、その途中で「WELCOME TO SRI LANKA」という看板を見つけてあそこで写真を撮ってほしいと頼んだ。
するとシャーマンさんはいいですよ!と言ってその場にわたしのスーツケースやらを放置して、スタスタと看板の方に向かっていったのだ。
【海外では荷物から手も目も離すべからず】という呪文が細胞レベルまで染み付いているわたしにとっては恐怖を覚える光景で、慌てて自分の荷物に駆け寄りそれを持ってシャーマンさんを追いかけた。
するとシャーマンさんは「大丈夫大丈夫!置いといていいですよ」とわたしの慌てようを見て笑ったのだ。
そのとき、あれ?思っていた治安と違う???とそこそこ大きな疑問が湧き上がった。

空港を出てすぐのところ。スリランカ到着を実感した

そんなことがあったものだから、先述したように治安についてストレートに疑問をぶつけてみたのだ。
すると返ってきた答えはこうだった。

「夜は絶対にホテルから出ない方がいい」

ああ、そうか。やはりそうだよな。女性だけで、もしくはひとりで、ということではなく、夫もまとめてという話だ。
つまりは、暗くなってから外出するのは危険だということだ。強盗とか、襲撃とか、いろいろあるだろうし……とそこまで一瞬で思ってから、続くシャーマンさんの言葉に思わずキョトンとした。

「象に殺される」

??????????
ゾウニコロサレル??????????

えーっと、それって、象に殺されるってこと?
殺され…物騒やな、いや、象?象って、🐘?ぱおーーーーーん?????

不思議な日本語に即座に反応できずにいると、こういうことだと教えてくれた。
わたしたちが日本で見ている動物園の象と違って、スリランカには野生の環境に象がたくさんいる。そしてその野生の象たちは人間が使う道路に出たり、民家の庭先の葉っぱを食べたりすることもある。さらに彼らはなかなかに凶暴で、その辺で出会い頭の人間を吹っ飛ばすこともあり、実際に象に攻撃されて亡くなった方も何人もいる。
現地の人であればこのあたりは野生の象が出てくるかもしれないということを何となく予想できるが、観光客はそういうことがわからない。だから夜にふらふらとその辺をうろつき、そして野生の象に偶然出会ってしまう。象はパワーが強いから人間なんてものの一撃。ほぼ即死で、象に殺されたことすら気付いていないかも、と。

なんか最近、日本でも熊で聞くような話だなと思いながらも、だから夜は外に出てはいけないですよという言葉をもう一度胸に刻んだ。

いたるところに野生の象に注意の看板があった

ちなみに、人間はというとそんなに凶暴ではないらしい。警戒していたスリや強盗、襲撃などという人間による犯罪はそんなにないですよ、とのことだった。
なぜなら、警察が怖いから、らしい。日本と違って悪いことしたらその場で警察に殺されるかもしれないですからね、怖くてみんな悪いことはしないですね、と。
たしかに、アメリカでもよく警官に楯突いた人がその場で撃ち殺されてるよね。
でも、だからあまり犯罪を犯さないというのはなかなか優秀な警察機能だなと思った。アメリカよりだいぶ機能しているかも。まあ、スリランカは交通ルールの違反なんかは全部警官への賄賂で揉み消せるらしいけど。
シャーマンさんもわたしたちを乗せてくれているときに捕まって、こっそり1000ルピー払って5分で解放されて帰ってきた。

この話はすべてシャーマンさんがしてくれた話だから、実際の犯罪率や犯罪数はわからない。そもそも日本みたいにきちんと犯罪件数なんてカウントされていないだろう。賄賂使えるし。
だから手放しで、スリランカは安全だから大丈夫と思うのは絶対にやめた方がいい。日本より安全なところなんて本当にない。フードコートで席に鞄を放置してご飯を買い物に行くなんてとんでもない。シャーマンさんはやっていたけど、スーツケースをその辺に放置して離れたところに写真を撮りに行くのもものすごくよくない。
とはいえ、想像していたよりもだいぶ治安のいい国のようだった。人間はね。象はダメ。

ということで、結論はタイトルのとおり、スリランカでは観光客は夜に外出してはいけない。男性でも女性でも。なぜなら相手はわたしたちより何十倍も戦闘力が高いから。俺ボクシングまあまあ強かってんで、とか関係ない。鼻先で一撃よ。開始1秒で何もかも終わる。

長くなるのでまた別の機会に書こうと思うが、スリランカはとても楽しいところだった。1年中27度というのも魅力的だ。
なかなか機会に恵まれることもないかもしれないが、成田からは直行便も出ているので機会を持てる人はぜひ行ってみてはいかがだろうか。
そのときは象にお気をつけて。

読んでいただきありがとうございました。


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