養蚕は”遺産”なのか
ツイッター経由で、こんな情報をいただいた。京都新聞
中身は以下のようなもの。好奇心は刺激されたが。
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・養蚕に関わる資料を収集してきた団体がその管理・活用法に頭を悩ませ、その引受け手を探している
・資料の中身はかつて日常的に使用されたものや写真など
・行政や公的機関にもお願いをしているが良い返事は得られていない
・昔は80人ほどの団体だったが今は20人ほどで平均年齢も75歳を超える
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まあ、誇り高き上方のみなさんが宮崎なんぞに引き受けを求めようとはしないと思うので、コミュニティとしてこれを資源として管理できるとよいかもしれないとは思っております。
それに加えて、この記事は大きく2つの論点に絞れるかなと
① 保存を目指した結果、更新されないコミュニティ
② ”価値ある資料”なのに後ろ向きな行政・公的機関
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保存を目指すのはよいことなのか?
結論からいえば、保存”だけ”を目指すのは最適ではないかと。
理由としては工芸と同じく「用の美」としての価値が求められるべきだから。保存するなら常に作り変えられた対象が存在し、新旧の楽しみを味わえるほうが価値がある。現代に根付いているからこそ保存する価値は高まる。それを旧態のコミュニティだけで盛り上がるとその時は楽しいかもしれないけど循環が生まれないから組織が老化する。
フロッピーディスクは同様の機能を果たすUSBやクラウドがあるから懐かしめるし、活動写真はセル画やCGへの変化が現代を形作っているから価値がある。
ただの保存に特化しては自己満足で終わってしまう。
”価値ある資料”となるには
現代との比較対象を作ること。保存資料を実際に見てないからわからないけど、その資料の中で今ほとんど変わらない形で使われているものは一定量あるんじゃないかと思っている。カイコは遺伝資源として、またタンパク質の成分利用としては進化を遂げているけれど、養蚕農家の形態としてはそこまで大きな変化はないはず。
そう考えた時に現代でも使われているものを保存しようとしても高い価値は生まれないし、現代人に根付いていなければ一般にその価値を伝えるのは容易いことではないと思う。
養蚕業に従事する立場として
引き受けられるのならもらいたい。ただ、選別はさせてもらいたい。すべての資料に対して説明をつけて、まずはネット上に無料の資料館でも作っちゃったらどうかなと。
”これ今でも使ってますよー” とか ”これは別のやり方でこんな風にやってますよー” とか。
あとは、若手の養蚕のコミュニティで共有しながら勉強会の資料としても活用できそうだし。保存が目的だとしても、保存するためには使わなきゃと。
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結局、養蚕の資料を”遺産”と位置付けちゃってる現状がすべてだと思うので
・40年間で1kgあたりの単価が数百円しか変わってない養蚕農家への繭代を上げられるような販路を生み、現代に応じた収益をあげられる人を増やし
・ブロガーさんとかエンジニアさんとかのコミュニティに副業で季節的に養蚕業に従事してもらえるような、したくなるような環境を整えて
・養蚕業への一般的な認識をもう少し浸透させて
・比較を楽しめるような人を増やして養蚕を守るものじゃなく楽しむひとつの季節的エンターテイメントに(ハマると大変だけど面白い)
ってなるといいんじゃないかなと思ったところでした。
立秋も過ぎ、昨日からうちも晩秋の小石丸養蚕が始まりました。
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