H31.4.6 黒塚 覚え書
平成31年4月6日 四月大歌舞伎 歌舞伎座
夜の部黒塚最高だった
1等席 2列。
感想というより覚え書。よだいめの話しかしてない。
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一景。
歌舞伎座広い。大阪の文楽劇場(平成30年9月)とは全然違う。
下手から観る一景。あばら家の周りの、ススキを少しだけ飾った(材料に使ったような)柵の存在知らなかった気がする。背面、下手の入り口奥にあり2面を囲んでいた。
岩手登場。糸車が、影では上手を向いていたのに、簾が開くと正面むいている。また上手を向けるように移動させて柵を右手で開き舞台へ。細かい。僧たちを招いて下手に着席。
岩手、下手にいることが多いから、上手のお席残念だと思ってたけど、下手にいる相手に体をちょっと向けて話すのでめっちゃこっちに視線飛んでくるのやばい。座席の文句はここで消えた。
一景は他のどこよりも視線が離せない。微動が醍醐味だから。いままでみた黒塚のどれよりも緊張した空気を感じて幸せだった。
近くだと、見える見える視線のひとつひとつが。タイミングは知ってても、こんな振りだったか、とか、ここで目を開けて僧たちを見ているんだ、とかを感じられたのがとっても幸せだった。もう忘れた。
阿闍梨たちと話してて、はじめて顔をあげて目をあけて、少し遠い目になるようなシーンがあったんだけど、そこでよだいめの目がキラキラって光ったの一生忘れない。
そうこうしてたらもう糸車。はやすぎる。後見が寿猿さんとの噂でよく見たけど、きちんと見えなかった…。カツラを被ってるのは分かった。笑
糸車を取りに行く後ろ姿が、既に登場したときの岩手より小さい。変幻自在に加えて、拡大縮小も自在なのか。弱気になると小柄に見える岩手カワイイしわかりやすいし、よだいめすごい。
歌う岩手カワイイ。ずっとしんどそうな顔してるので、この辺りから既に阿闍梨一行は敵。興味本位で初対面のババアに歌えとか言うのやめてさしあげて。
歌うとき、右膝を立てていたのか。絵描くとき正座にしてたから今度から改めよう。あと阿闍梨たちも座ってなくて左膝立ててる。
種ちゃんと鷹之資くん、元気があって既に最高。修行の身って感じして、若い山伏たいへん萌えました。目つむって歌を聞き入っているの好感が持てる山伏です。
舞台が近いから当然鳴り物も近い。今日の音楽はほんとにマジガチ特別に良かった。
唄を掛け合いみたいに繰り返したり交互に唄ったりするの大好き。岩手が歌い終わって鳴り物さんに視線を向けてたら、歌ってた岩手がちょうと動くタイミングだって見逃してギャッてなった。
糸車ぐるんぐるんするの、記憶を消して初回のびっくり体験に戻りたいくらい好き。知ってて見た今日は、こんなに綺麗に回してたんだって新しい感動。
目を覆う悲しげな岩手つらい。歌舞伎の泣くフリ、結構手と顔に距離があるの、型として美しすぎ。
阿闍梨に来世は大丈夫って言ってもらえて嬉しいところ、いいのかなって希望を持った自分を制するように首を振って俯くシーンの完璧さ…。あれを毎日あのクオリティでやられてる奇跡みたいな御身に感謝。5本の指に入る黒塚の好きなシーンです。静から動、たくさんあるよね。全部良い。
ゴーン。思わぬ時を過ごした。で、ああ一景が終わるって思うの、時間(飽きないダレないし短すぎない)として完璧で好き。
通い慣れたる山道にて、あたりの岩手の優しさ好き。最初に登場したころより幾分か柔らかい顔をしている。
枠裃輪を後ろに戻して、寿猿さんから杖を受け取る。右手。
鈴虫よりはやく気付く岩手、のイヤホンガイドの説明があったらしい。すばらしさ。
ピクリ、ピタリ。気付く、止まる、足、あの足、動く、触れる、ゴーン。すばらしさ。
念を押す岩手かわいい。既に覗きたそうな強力。
岩手、あの最小限の動きの中でめちゃくちゃ表情ある。話してるとき軽く頷いたり、怪訝そうな目をしたり。気も違ってなければ、企んでもいない。対話ができる。どこまでも人間。
花道をはける。空を切る首の動きに震える。至芸。
覗くなって言ったろ?!
姉が一景の終わり方が好きって言っててめっちゃわかる。鬼女でありしか!で、ワーッて暗転するの、to be continue. 感あってわくわくするよね。
ああ一景が終わってしまう。
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2景。一番好き。
月が息が止まるほど美しい。
琴、尺八、三味線などが更に情景をありありと魅せてくれる。知ってるからだとは思うけど、もう既に岩手の心の開放感を少し感じるような、清々しい音色。
芒を分け入って岩手登場。初めて知ったけど、芒が身体に触れる場所をわざと通りながら揺らしている…。通ってるところがワサワサと動いて、岩手が今どこにいるのか遠くからでもわかる。よだいめのそういうところだよ。感服。
膝をさする岩手かわいい。
2景、どうしても踊りが上手いことに注目しちゃって、岩手よりもよだいめを観てしまう自分がちょっと悔しいなって思うけど仕方ない。
雨の露を杖で払う動作ひとつで、心を持って行かれてもう二景から帰ってこられない。
細かい振りは覚えてないけど、要所要所きめるところは全部好き。後ろ姿さえ決まってしまう。ただいることをしている瞬間がない。
水を汲むところのパントマイムの巧さどうだ。あんなに重そうだったのに、スーッと杖に戻っていくゆっくりした動き堪らない。棒まで変幻自在か。
座って月明かりに照らされて嬉しそうな岩手。雲も晴れ。よかった。岩手が嬉しそうで私もめちゃくちゃ嬉しい。
影と戯れるシーン、角と見誤るところ、今まで見逃してたのか三代目の映像を見過ぎなのか、手のジェスチャー増えてた気がして可愛さもあの瞬間の意味が伝わる速度も倍増。良い。エヘヘって笑う岩手かわいい。私も一緒にニコニコした。この辺はよだいめが消えてめちゃくちゃ岩手を感じられる。
杖をパタリって薪の上に落とすところ好き。どう見ても目あけてなくて、よだいめ目瞑って踊られるのいい加減にして天才か。
背中を向けて月を見ながら、両手を上げて左右に揺らして踊る動作めっちゃ好き。ほうやれさの辺り。
岩手の心情に合わせて、音楽もライティングも変わってゆくの、あまりにも美しい。だんだん白っぽく明るくなっていく。
下手から太鼓の音が聞こえると、ああ二景が終わるって悲しくなる…。三景は楽しみだけど岩手が死んでしまうのは悲しい。
強力が出てきて、急いで木のそばで薪を結わえ直してるのかわいい。このあとすぐ捨てるくせに。
猿弥さんはコロコロなのにどうしてあんなに踊れるのか。
見たであろうがな、の後、ふつふつと我慢できない怒り背中で表現するところ大好き。
強力が恐怖で立てず、だんだん小さくなっていくのに対し、岩手むくむくと力が溢れ出して大きくなっていくように感じる。
はやく振り向いて。あーでも振り向いたら終わっちゃう。
待ってましたすぎるブルーライト。興奮で三年くらい寿命が伸びた気がする。
近いから声が一段と大きく聞こえるし、きっと遠くでもびっくりすると思う。この緩急のために観ている…って感じ。血管ブチ切れそうな岩手こわいかわいい。
いか〜り〜の〜めんしょ〜く たちまちにィ
フーーッ フーーッ って鼻や口や眉をヒクつかせながら薪を背中から下ろす表情、ゆっくりした動き、全部好き。ブン投げるの、こんなに力強かったんだ…そうだよねすげー遠くに飛ぶもんね…って冷静に思った。棒で強力を操ったあと棒も投げるの好き。めっちゃ飛ぶ。
ダダダダダダ、足を踏みならす音が速すぎ。
飛びすぎ。
膝立ちで強力を追い込むところは、三代目よりよだいめの方が圧倒的に好み。良い進化。音楽に合わせてリズミカル。首も使って音をとってるのも怖すぎ。なんでそんなん思いつくの。
猿弥さんが嘘みたいに転がっててカワイイって友人が後で言ってて笑った。
妖力を使ってるときのよだいめの手の形が人外。岩手以外も。あの手好き。
待ってましたすぎるバク宙。人間じゃない。ここでも興奮で寿命が三年伸びる。
これもよだいめの垂直飛びの方が好み。重力を感じなさすぎて、本当に人間じゃない。後見さんお見事です。
ここまで一息だから、腰が抜けて立てない強力の気持ちわかるわって思ってるころ、強力はすでに踊り出してる。
まじで猿弥さんはコロコロなのにどうしてあんなに踊れるのか。
ああ二景も終わってしまった
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三景
おしゃみに聞き惚れる。セリが上がっているんだろう振動を感じながら、ワクワクが止まらない。
黒塚登場。セリ上がり終わると前に台ごと押し出されて、後ろに芒が差し込まれる。真正面じゃないから、鬼女が入っていくのが見えてしまって興奮して阿闍梨たちを観てなかった。
たとえ何処に隠るるとも、ってほんと酷い。岩手が何をしたってんだよ…って、岩手寄りになってしまう。何をしたって人を食いまくったんだけど。
うしろの方に声あって→いかに客僧、止まれこそ、のところめちゃくちゃのむちゃくちゃに好き。揚幕のむこうとか、扉の奥とか、塚の中とか発せられるくぐもった声大好き。うしろの方に〜が歌だから、その後もすごく歌ってるような印象あって最高なんだ。
ジャン ジャン ジャン ジャン
みか〜え〜る〜かな〜た〜に
悪鬼のすがた、
忽然として、現れた〜り〜
ドロドロドロドロドロドロドロドロ
全く息が出来ない。
塚が割れて出てきた岩手の、内に内に力が溜まっている様子に泣く。
法力などとはこざかしや。
俯いたまま。顔を上げる瞬間が待ち切れない。
「我こそはみちのくの安達ヶ原に年を経て通力得たる悪鬼なり」
日本語が美しすぎる。書写して壁に貼りたい。
首をブン、ブン、て振るところ、演技に見えないというか、狙ってこんな絶妙なことできるの?って思うくらい怖い。こんな気持ちが何度も湧くから、自分が観た回が一番良かったわとか思えるお気楽な脳みそでありがたい。
ドロドロドロドロ 顔を上げてライトアップ。
怖すぎてちびるけど、ここでやっと息ができるようになる気がする。
かたき誓いのあればこそ〜。あー好きもー好き。名作歌舞伎全集とセリフ違ってる。たぶん三代目が変えたのかなって思うけど、収まりよくてグレイト。
鬼一口ってワードすっごい好き。かわいい。
戦闘シーン、次は余力があったら歌詞をもっと聞こう。目ばっか集中しちゃって、すごく切なくて寂しいこと言ってるみたいなのに、いつも聞けてない。
種ちゃんと鷹之資くんメッチャいい…たぶん着いていくのに必死なんだと思うんだけど、それがすごく苦戦しているみたいに見えてカッコいい。
種ちゃんが上手から法力ガシャガシャしたとき、左の頬や目だけヒクヒクって動かしてたえんさまの表情筋やばい。この辺の苦しそうな鬼女ほんとにかわいそうだけど、苦しそうな演技が上手すぎて同時に感動もしていて心がぐちゃぐちゃになる。
大阪では下手寄りの席だったから、下手で膝立ちして杖で何とか倒れずに済んでるところがすごく印象的だったのを思い出した。今日は座席的にあまり見えなかった。
木に髪を擦り付けるとこ、動物みたいでかわいい。シャーとかシーッとか息遣いめっちゃ聞こえる。
仏倒れ、暗転した!やったー!暗転バージョン大好き。
仏倒れの前に、床に膝と両手をついてるとこでゼェゼェしてるの、よだいめがゼェゼェしてるのと、鬼女がゼェゼェしてるのが混ざって、演技を一線超える。どっち?よだいめ?岩手?人間?鬼女?少女?老婆?おじさん?
あなたは誰。
舞台の真ん中で、僧たちが固まって座り、その周りを鬼女がぐるぐるして、襲おうとするけど出来ない、みたいなところ大好き。結界を張られて入れないような感じに見える。
鬼女の元気がなくなっていくので泣く。本当に死んでしまうの悲しい。祈り伏せるって表現すごいよね。
塚の中にズルズル入っていく鬼女、本当に悲しいんだけど、少しだけこれで楽になれるねって思えてくるのは、鬼女がなんとも言えないような表情をしているから。
ここは妄想だけど、鬼女って、岩手を守るために生まれた存在の線を推す者だから、法力で岩手から鬼女を引き離されて心の中で2人は会話してると思うんだよね。
辛かったね。しんどかったね。もういいかな。もういいよ。恨むのも疲れたし。人あんまり美味しくないし。そうだね。頑張ったね。偉かったね。て。楽しい妄想。
鉄杖をポトリと落とし、塚の中で小さく小さくなる。あぐら。
袖で顔を覆うシーンあったっけ?顔みせて!って思ってたら、ゆっくりと袖を下ろして封じられた岩手の表情が現れた。ああ終わる。
阿闍梨がグルグルグルってやるの好き。
静かに幕。
拍手。
あ〜〜楽しかった〜〜〜〜