第一回 AYDEA Women’s 対談 ゲスト / 堀江愛利 女性のリーダーシップのあり方とは?(後編)
3月は国際女性史月間です。3月8日の国際女性デーにはジェンダーレスな社会の実現に向けて、幅広いフィールドで活躍する女性を讃えるイベントが行われました。
AYDEAでは代表の松井綾香をホストに世界中のさまざまな分野で活躍する女性をゲストに招いて対談を行なっています。第一回目のゲストはWomen’s Startup Labの代表、堀江愛利さんです。前編では女性起業家を取り巻く現状の変化や、女性起業家だからこそ乗り越えないといけない課題などを伺いました。
Text by Reiko Suga
松井:未曾有のコロナウイルスの蔓延によって(女性)起業家のマインドは変わったと思いますか?
堀江:コロナによって、より家族の新たな負担やアイソレーション(孤立)が起こっているので女性起業家が辛い立場に立たされていることは確かです。だからこそ、お互いをサポートしようという声が上がっていて、女性たちが今まで以上に強くなったと思います。
松井:こうした状況でどういった方法で女性起業家をサポートしていくのがいいのでしょう?
堀江:今回の公開取材のように、Club Houseは面白い人たちと繋がれるし、いいツールですよね。新しいコネクションができるので、いいですね。人になかなか会えない中、オンラインでのコミュニティ構築は重要になっていきますね。
Women’s Startup Labのコミュニティはいつも支え合って進化し続けています
女性がマジョリティになれば女性起業家も活躍しやすい世の中になる
堀江:ネットワークは起業家によって、とても重要です。起業をするとそれぞれのステージでの課題も大きくなるし、辛いことがどんどん出てくるので(笑)。投資家だけでなく、今回のような未曾有の事態においても、困った時にネットワークの中に助けてくれる誰かがいると問題解決が早いです。男性起業家たちはすでにこうしたネットワークを持っているので、女性も遠慮せず、そこに入っていくということもありますが、より女性起業家の友達を作っていくこと大切だと思います。忙しい中孤立するよりか、常に自分のボードメンバーだと思い、一緒に問題を解決できる女性たちを持つ。ある意味CEOの何かあった時のための保険みたいなもんですね。そのコミュニティで子育ての話をしたっていいし、男性には分からない女性特有の問題もたくさん語れる。
中にはラスベガスに卵子凍結トリップに行った女性起業家のグループもいました。女性起業家に妊娠したらどうするの?と投資家に言われることもよくある話です。男性にはないでしょ。今は男性主導の世の中ですが、女性がマジョリティになれば、もっと色々な視点から変化が起こりイノベーションも良くなるというデータもたくさん出ています。結果を出すことの多様性も生まれるはず。 家庭と仕事を両立させ、ミーティングも原則17時以降はしないと決めて、取締役に賛同させるCEOもいました。これから新しいルールを作ればいいですね。
松井:世界を見渡した時に、まだまだ日本は女性起業家の数が少ないと思いますが、日本において女性起業家を支援する環境についてどう思われますか?
堀江:日本人のレベルは世界的に見てもとても高く、優秀な方が多いので、まずは起業をするということは絶対可能性大なことだと思います。でも、“出る杭は打たれる”じゃないですが、実力があって結果が出せても叩かれたり、優秀な人が多いのに、社会がまだまだ複雑で日本女性への風当たりは大変だと思います。 ですので、外国でチャンスがあるかもと思う起業家がいれば躊躇せず、英語が完璧でなくてもアメリカに来て挑戦したらいいし、まず始める勇気を持つといいのかと思います。そのうち思いがけない形で助けられたり、答えがどんどん出てくるものです。
日本人の女性起業家というのはまだまだ少ないので、支援する環境を整え、投資を増やすこと、女性企業家へのバイアスを取り除いていくなどの支援をあればいいなと思います。 まずはVCのお金を出す人に、「女性起業家に投資をすることはリターンも高い」という知識を知っていただきたい。ビジネスでダイバーシティということが結果として良い会社作りにもつながり、女性起業家がますます増えてくることを期待します。
松井:最近では日本でも企業の女性社長や役員も以前に比べ増えてきたように思います。
堀江:アメリカの大企業でも「女性、女性」という声は聞くけれど、蓋を開けてみたら全然女性に投資していないというのはよくあることです。あるいは、表向き“男性が扱いやすいタイプ“(わきまえる女性)を女性リーダーに置くことで本気で変化を起こそうとしていない企業も多いのではないでしょうか。消費者がそういった企業のリップサービスではなく、実際に何を新しく変えていっているかというところに厳しい目を持たないといけませんね。
松井:それでもマイノリティにスポットが当たりやすい社会になっていますか?
堀江:アメリカでも「#Metoo」や「Time’s up」ムーブメントなどがあり、みんなが声をあげるようになって来ています。女性蔑視の発言をして辞任した東京五輪・パラリンピック組織委員会の森会長がなど、こうした女性への差別的な発言を元に組織の変化と対応が厳しく問われる時代です。ここで私たちが許したら、あるいは騒ぎを落ち着かせたというだけで解決したと勘違いをして、そのままにして行く事で次の世代の多くの女性たちが苦しむことになると思うことが必要だと思います。歯をぐっと食いしばって声を上げなければいけないと。おかしいものはおかしいと。よくある話だからしょうがないよねという、流しはやめたいですね。
堀江さんを中心に親密な様子が伝わってきます
女性たちの意見を発言できる場を増やしていくことが重要
松井:みんなでアクションを起こして女性たちの意見を世の中に知らしめていくことは本当大切ですよね。
堀江:そうですね。CEOとして、毎月、自分で自分が世の中に発信したい内容の記事を書くのもいいと思います。自分のプロモーションにもなるし、そうした記事を書くことで自分たちの取り組みやみなさん(女性から見た)の考えを世の中に知らせる場が増えるからです。こうしてClubhouseのようなところで話すのでもいいですし、Noteなど女性起業家の声を世の中にどんどん出していくことでアンコンシャス・バイアスがなくなっていく積み重ねだと思います。女性起業家で暴れられる土壌を作りましょう(笑)。女性同士は助け合い、常に女性のサポートやプロモーションを考えること変化は生まれると思います。
松井:今後、日本の女性たちはどうエンパワーしていくべきでしょうか?
堀江:色々な価値観があると思うのですが、例えば自分の子供たちの未来を考えるように日本の女性はより平等に活躍できる社会を作って行くには何が必要か考えていくのも大切ではないでしょうか。まずは声を上げて、価値観のブレスト、アンコンシャスバイアスの気づきを常にもち、男性とも女性とも一緒に考える場を持つ。そして、アクションをおこすことが大事!先日Clubhouseでキャリアウーマンの方の苦労話などについて話を伺いましたが、みんさん、社会の中でサバイバルしているなと感じました。子供に熱が出た時に、会社に対して申し訳ないという気持ちになる人が多いようですが、本当は会社のほうが多様性のある社会の実現に向け、そう言った子供を持つ親が遠慮しなくても良い環境を作ることが必要なのです。
いつもパワフルなディスカッションで有意義な時間をいただいています。
AYDEA代表の松井と堀江さん
松井:今後、起業を目指す女性たちに必要なスキルは何でしょうか?アドバイスもお願いします。
堀江:まずは始めちゃったほうが早いです(笑)。起業始めはなんでも自分でやっていく必要があり、なんでも学ぶ、やる、助けを求める、スキルは絶対必要ですね。 どれも分からなくてできなくてもできるように動く行動力と好奇心、諦めない強い信念で取り組むことが大切。あとは、気を張りすぎない。失敗だらけでもそんなもんだと笑えるぐらいの前向きな気持ちで取り組む姿勢も必要。起業しているというのを公にするのが不安なときは、プロジェクトをやっています、でもいいし、まずは周りの人に伝え、巻き込みをしていきましょう。
強い人しかできないと思うかもしれませんが、違います。イメージ的には力強い人凛とした人を想像しますが、女性の強さというはBamboo(竹)のようだと私も思っています。 ほそくしなやかで美しく、一見弱そうに見える、でも実は土の下でがっしりと根を張り、他の竹と力強い組み、支え合い、コンクリートも突き抜ける静かな強さをもっています。私は女性の強さの象徴だと思っています。
自分にとっての“救急箱”を常に用意しておく
成功している女性起業家は、夫やパートナー、母親だったり、あなたなら必ずできる!と言ってくれる絶対的な存在がいます。起業をしていると待ったなしでとんでもないニュースが飛び込んできたりするのですが、そうした時に絶対的な味方がいるとこうしたピンチもなんとかくぐり抜けることができるんです。緊張感が続きすぎてブチッと来ることもよくある話ですがその前に、相談をできたりする、自分にとっての“救急箱”を用意しておくといいですね。シリコンバレーは仕事のプレッシャーから病んでしまう人も多い。私も会社に行くのに車から2時間出れなかったことがありました。相当参っていたんでしょうね。WSLabの一番最初のオフィスでは、「Founder Under Repair Room」(起業家リカバリールーム)というものを置いてました。そうしたら結構みんなその部屋に入っていくんです。糸が切れたように泣いてスッキリする人もいれば、仮眠を取りリカバリーを図る人もいて。でも、ホッとできる場所は必要なので、みんなでサポートをしてそういう救急箱をみんなで用意してあげてください。より成功と効率を上げることばかりに意識がいきがちですが、人間、ダウンする時期もあって当たり前。それも考慮して日頃からベストを保つためにも、ダウンタイムの対応の準備が必要ですね。
起業というのは長いマラソンを走っているようなもの。起業家=頑張らないといけないイメージもありますが、いっぱいいっぱいになる前に頑張りすぎない練習や自分のパフォーマンスマネジメントをすることも起業家に求められるスキルです。
その点男性は日頃、成果ととも祝う、遊びにでる!というのが本当に上手ですね。(アメリカ的なのかもしれませんが)そういった意味でも、目標を立て、頑張ることばかりでなく、達成した暁にはまめにお祝いすること、また、自らの成果を垣間見る時間を持つことが大切です。自分へのご褒美を設定しておくのもいいでしょう。みんな遊んでください(笑)!
松井:最後に最近、気になっているトピックスがあれば教えていただけますか?
堀江:これまでお話してきたことの延長線上にあることですが、今まで女性が活躍してきた歴史を見ていると、必ずティッピングポイントがあります。セクハラをされたことを公の場で正々堂々とアメリカでは言えるようになり、日本もその後を追っていますが、次のフェーズに入ってきています。
女性問題は女性だけの問題ではなく、社会の問題として捉えられ、そして、実際にお金が動き出す。 つまり、女性に対しての投資まで持っていく必要があります。そのためには何が必要なのか?を問いかけることです。
女性のために!と言って女性に集中するのではなく、彼女たちが走れる道路補正、つまり活躍できるための“環境作り“がとても大切だと思っています。
松井:アリさん、貴重なお話ありがとうございました!今後も女性起業家が助け合える取り組みをできたらと思っています。
Ari Horie (堀江 愛利)
広島県出身。米国IBMを経て、数々のスタートアップでのキャリアをもとに、2013年にシリコンバレー初、女性に特化したアクセラレター”Women’s Startup Lab”を創業。世界中から集まる女性起業家の育成やベンチャー支援を行う。個人のマインドセット変革や確固なる現地のネットワークによる独自の育成プログラムで注目を集める。近年はイノベーション加速を目指す企業のリーダー育成にも多く携わり、参加者から高評価を得る。CNNのビジョナリーウーマン10名に選ばれ、昨年10月には、Entrepreneur Magazine “100 Powerful Women of 2020”に選出され、更なる活躍が期待される。
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