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のび太みたいに生きてみない?【横山康行「のび太」という生きかた】

私は「ドラえもん」についてあまり知らない。

もちろんテレビで見たことはあるが、知っているのは登場人物などの基本的な情報だけだ。

理由としては、小さい頃に母から「あんな道具に頼るなんてダメだ」とドラえもんに対してあまりよくない印象を受けてきたからだと思う。

母の影響もあってかあまり見ない方がいいかな、と感じてここまできた。

今回はそんな私が、横山泰行さん作「「のび太」という生きかた」を読んだ感想を書いていきます。

意外とドラえもんっておもしろいですね。そしてのび太も好きになりました。

* * *

ドラえもんといえば「ひみつ道具」

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ドラえもんのストーリーに欠かせないのが、「ひみつ道具」だ。

私の母がドラえもんを嫌悪した理由は、「実現しないようなことに夢を抱かせることはよくない」ってことだと思う。

そして道具に頼って努力をしなくなるのもよくないという気持ちもあったのではないか。


しかし横山さんはこう書いている。

のび太にとってひみつ道具とは、あくまでも「自分のいいところ」を伸ばしたり、ちょっと足りないなにかを後押ししたり、また潜在意識のなかで眠っているのび太の優しい心を覚醒させたりする、触媒のような存在

確かに本書を読んでみると、のび太は不可能そうなことをジャイアンなどに口走ってしまい、焦りながらも自分なりにもがいてみたりドラえもんに助けを求めたりする。

「ドラえも〜ん助けてよ〜」と泣きついても、結構のび太は自分で試してみていることも多いのだな、と初めて気がついた。

母が思っていたように(私も)「困ったらひみつ道具が助けてくれて楽しく過ごせました、チャンチャン♪」ではないのだ。

のび太の夢はいつも、一時的にひみつ道具によって実現するかに見えます。しかし、夢をほんとうに実現するためには、本人の努力や実践がもっとも大切であることを示す形で多くの話は終わります。

だからドラえもんという話が人気を集め、主人公ののび太が魅力的に映るのだろう。


考えすぎないのび太っていいよなあ

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夢もひとつの具体的な目標の一例です。のび太のように目標を声に出して自己実現すると、目標に向かってのファーストステップが形になります。

そうだ、自分にはここが足りない!と感じた。

幼稚園のときはコアラが大好きで、コアラになりたがった

小学生になると絵を描くことが好きになり、将来の夢は漫画家と言っていた。

いつしか「カリスマ」という言葉がはやり、「カリスマ美容師か保健室の先生になりたい」と小学校の卒業文集に書く。

(保健室の先生は楽して修学旅行に行けると思ったからだ。教員として修学旅行の引率をして、全ての養護の先生に謝りたい気持ちになったのは言うまでもない)

このあたりまでは周りの人たちはにこやかな表情で「いいね」と声をかけてくれていたように思う。

コアラになりたいなんて、我ながらかわいい……笑

そしてコアラはいつもかわいい。意外と凶暴らしいけど。

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ところが中学生になり親戚の結婚式に出て「結婚式ってなんて素晴らしいんだ!」と感動した私は、ウェディングプランナーを志す。

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その夢は高校生になるまで続き、高校後の進路を決める際にそのことを母に打ち明けると母から一言。

これからは結婚式は儲からない。儲かるのは葬式だ

なんて失礼なことを言う親だ、と衝撃を受けたことを覚えている。

当然ホテル業界のことを学べる専門学校へ行くのは否定され、その先の目指す未来も一瞬で打ち砕かれた。

私は少しでもウェディングプランナーの夢に近づけるよう、観光業について学べる大学進学を目指すも受験に不合格。

とにかく早く東京に出たかった私にとって浪人という選択肢はなく、なんとなく受かった大学に進学する。

学生時代、勉強はあまり真剣にやらなかったけれど大切な友人もたくさんできた(お酒もたくさん飲んだ)し、なにより東京で一人暮らしができたってことが自分にとってよかった。

第一志望の大学ではなかったけれど、その大学に進学したことは後悔していない。

しかしそんななかで長年憧れてきたはずのウェディングプランナーの夢は、いつしか消えてしまった。

* * *

大学卒業後は地元に戻るように母から言われていたのだが、なんとしてでも東京に残りたかった私は親が満足できる職業を考え、教員となる。

子供は元から好きだったし、父や姉が公務員だったため公務員って悪くないかな、と思っていたのだ。

教員は忙しかったが、楽しかったこともたくさんある。

なによりも大人が想像しないことをしまくってくれる子供は最高におもしろかった。

しかし大学進学と同じく、「なんとなくこの仕事についてしまったな」とだんだん思うようになった。

このまま続けていっていいのだろうか?

本当にやりたいことって?


私は本当は何をしたいんだ?

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直感やひらめきに素直にしたがうことのできるのび太は、意識が新鮮なうちに動き出すので、つねに目標に向かって進んでいけるのです。

“親に否定されたからウェディングプランナーの道を諦めた”

“親が満足するからこの仕事を選んだ”

と、もしかしたら都合よく思い込もうとしているのかもしれない。


直感とかひらめきって自分の中でしか感じられないことで、しかもそれに気づくのって一瞬なんだと思う。

でもピンときたことをやってもないのに、周りからの声や情報を聞いて頭で考えて自分で諦めさせることって多い。

「段取りを考えてからじゃなきゃ……」

「稼げるかシミュレーションしてみよう」

もし浪人して第一志望の大学に行っていたら、もしウェディングプランナーになっていたら、もし教員ではない仕事をしていたら……。

全部「たら・れば」の話だが、それもただ頭で考えているだけなのだ。

プロセスを考えることに全力を尽くしてしまって、実際になんの行動も起こせないようでは、本末転倒。ときには、のび太のように先のことをあまり考えないで、今やっていることに全力を尽くしてみてはどうでしょうか

頭では考えているよ!と思ったって、自分の頭の中は他の誰からも見られない。

ということは行動でわかってもらうしかないのだ。

たったそれだけのシンプルなことなのに、どうして動けないのだろう。

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きっと恥ずかしかったり、失敗するのが怖かったり、バカにされたくなかったりっていう自分を守ってあげたい気持ちが大きいんだと思う。

でもそれって自分のことも周りのことも全然信用していないことでもある。

本当に失敗するかわからないし、本当に人からバカにされるかだってわからない。


まだ起きていない未来をただ心配しているだけだ。

「自分の力でやってみよう」と思わせる行動をとってこそ、「失敗してもいいさ!」と、その計画に乗ってみようという人や、「あたたかい目でみまもってやろう」というサポーターも現れるのです。

そうだよね、なにもやりたいことを明確にアピールしていないのに、周りからバカにされる!とか思ってる自分って、なんだか滑稽。

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そして失敗したらそのまま泣き寝入りするだろって自分を想像してるのも、自分に失礼だね。自分ごめん。


価値って言葉はあまり好きではないけれど

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タケウマのできないのび太は、広場で楽しそうにタケウマ遊びをしているジャイアンやスネ夫、しずかちゃんたちをひとり眺めていました。のび太は心のなかで、「いやな遊びが、はやるなあ。あんなもの、乗れなくたって、人間の値うちとは関係ないや」とつぶやいています。

こののび太の気持ち、わかるなあ。

私は絶叫マシンが苦手だから、テーマパークに対して心からヒャッホー!となれない。

例えばディズニーランドなら園内にいるだけで非現実的になれるし、なんならイッツ・ア・スモールワールドに乗って、キャラメル味のポップコーンとチュロスが食べられればそれで十分。

みんなはできるけれど、自分だけできないことってそんな重要なことじゃない。

勉強だって同じだと思う。

本書を読むと、のび太の先生とかお母さんたちがよく言っている言葉って結構残酷だ。

今までなにも思わなかったけれど、よく考えてみたら(教員やってたから?)ドラえもんのなかで大人たちが自然と発している言葉は、そのままののび太を受け入れられてないってことなんだろうな、と思った。

0点だからだめ?

片付けできないからだめ?

きっとのび太が生まれてきた時はそんなこと、お母さん考えなかっただろうにな……。

とか思いながらも、自分だって教員時代を振り返って反省する点が多々ある。

でもそうして気づいていくのも大事な一歩なのだと思う。


そもそも大人たちが信じている「価値」とか「価値観」ってなんなんだ。

「大人たちが言うことが正しい」「言うことを聞かせよう」って子供に思わせようとするのってとても怖い。

大人の言うことだけが正しいのではないはず。


子供たちがそれぞれもつ力を優しく育てて(「見守って」が正しいかも)いけば、もっと温かくて柔らかい世の中になっていくんじゃないかな。

長く生きてきた大人が、経験とか知識をもとに子供たちにあれこれ言って煽るのは本当によくないと思う。

価値って言葉は難しい。

価値なんて言葉があるから価値を確かめなきゃって思うのかもしれない。


こんなこといいな、できたらいいな

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藤子先生の最も有名なメッセージ「夢や冒険に憧れる心は失ってほしくない」は、夢のタネは無限になるけれど、夢に憧れる心は有限で、忙しい日常生活のなかでついつい忘れがちになったり、年齢を経るにしたがいますます喪失しがちな実態を指摘したものです。

こんなこといいな できたらいいな

あんな夢 こんな夢


自分がやりたいと気づいている夢はたくさんある。

それを諦めさせていたのは全部自分なんだろう。


きっと私の周りにもサポートしてくれるドラえもんはたくさんいる。

それを信じていきたいとこの本から感じた。


私はアロマについて学ぶためのフランス留学をまずは夢にします。

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のび太みたいにいつもフレッシュな頭で、軽やかに動いていこう。

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