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「朝一番のおしっこを持ってきて」の意味って?

前回「朝、食事をしないで来てね」の意味について書きました。

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実はそこに入れようと思っていたのですが、思いの外長くなってしまいましたので・・・

今回は別記事として「おしっこネタ」をお届けしたいと思います。

こんな感じで言われたことあるよね?

昔々、私が小学生の頃、毎年ある時期になると「茶色くて厚めの紙」と「醤油びんっぽいポリ容器」を渡されて「朝一番のおしっこを取って持ってきてね」と先生に言われました。

そういえば「お尻ぺったん」もありましたね。今はありませんけど。

(根絶したわけではないと思うので、大丈夫なのかな?なーんて思ったりもしますが、ちなみにこの記事をUPしている時点では、保険から外されています。)

前の晩に茶色い紙に印刷された通りに折り紙で紙コップを作り、忘れないようにトイレに準備しておいた記憶が、今でも残っています。

この記事を読んでいるあなたはいかがでしょうか?そんな思い出ありますか?朝の忙しい時にめんどくさい!なんて思ったりしませんでしたか?

大人もそうですが、子供の学校検診も、実はこの「朝一番のおしっこ」って重要だったりするのです。

「おしっこ」の量や濃さっていつも同じなの??

ここからは「おしっこ」→「尿」に変えてお話ししていきましょう。

私たちは腎臓の機能を失って人工透析や腹膜透析等をしていなければ、1日に何回かトイレに行って尿を排泄します。これが自然な体の仕組みです。

さすがに普段、毎回出た尿を細かく観察したりする方は少ないとは思いますが(本当は観察して欲しかったりします)、実は毎回出る尿の量は変化していて、尿の濃さも変化しています

水分をたくさん飲んだりすれば、トイレが近くなってたくさんの尿を排泄しますし、運動して汗をかいたり、水分をなかなか取れなかったりすれば、トイレに行く回数も減り、行っても濃い尿を少し排泄するだけ、という経験はあなたにもあるはずです。

コーヒーやお酒を飲んだ後の尿の臭いが、コーヒーやお酒の臭いになっていることに気がついている人もいるかもしれません。私の父は芋焼酎をよく飲んでいた時期があって、そんな時はトイレが芋焼酎臭になることもありましたね・・・(しみじみ)

私たちは「尿」というものを通して、体内の老廃物を外に出しているのですが、老廃物を外に出すだけではなく、体の水分量を保つように尿の量も調節されています

水分をとり過ぎれば、老廃物と一緒に不要な水分を薄い尿として外に出していきますし、体が脱水の状態でも老廃物は外に出さないといけませんので、少ない水分の中に老廃物をたくさん溶かして、濃い尿として外に出していきます。

つまり、尿の濃さは、その時その時で変化しているということになります。

尿検査する人にとって、これ大事な話なのですよ。

尿検査って、ざっくり言うと?

皆さん誰でも必ず受けたことがある、いわゆる「尿検査」は「検尿」とも呼ばれています。

随分前はトイレの奥の窓口にいて尿の入ったコップと格闘している「検尿室のおばちゃん」的イメージだったと思いますが、私の前職では可愛いお嬢さんたちや優しい青年たちが患者さんの応対をしながら奮闘しております。

さて、この「尿検査」では「尿試験紙」という『誰でもすぐに使える魔法のアイテム(!)』を使って検査をするのですが、要は尿の中の様々な成分が「ある」のか「ない」のか、あるとしたら「少し」「中くらい」「結構いっぱいあるよ」くらいの非常にアバウトな感じで測るシロモノでございます。

ということは・・・

先ほど「尿の量・濃さ」はその都度変化しているというお話をしましたが

・薄い尿であれば薄まってしまって「尿試験紙」が反応しない→本当は「ある」のに「ない」となる

・濃縮している尿であれば、成分がぎゅっと濃縮している→「1日の平均的な成分の濃度よりも「高めにあるよ」と出る

という現象が起こるわけです。

その都度出る尿を専門用語で「随時尿」と呼びますが、このように「随時尿」では濃度の変化が当たり前に起きていますので、尿の濃さを示す「比重」というものも一緒に測定して、他の結果を判定する時の参考情報に使っています。(ちなみに特徴的な比重を示す疾患もあります)

ちなみに、色が濃ければ濃い可能性もありますが、お薬や飲み物などの影響で、色が濃くなったり少し変わった色になることも普通にありますので、色の濃さだけでは判断がつきません。

朝一番の尿が重要な理由(わけ)

こんな感じで常に濃度が変化している尿ですが、「朝一番のおしっこを出してね」と言われる理由はそこにあります。

朝一番の尿を専門用語では「早朝第一尿」と呼びます。

さて、この「早朝第一尿」は「随時尿」と何が違うのか、なぜこのタイミングの尿だけ別の呼び方をするのかですが・・・

ここでイメージしてみてください。

「早朝第一尿」ってどんな状態で取れる尿だと思いますか?

朝一番最初に出る尿ですから、寝る前にトイレに行ってから寝て起きるまでの間に膀胱に溜まっている尿ですよね。

つまり、寝る前にトイレに行った後、水分を取ることもありますが、寝ている間は水分も取らず、寝ている間の汗や呼気などで体内の水分が失われて脱水の状態になっている→かなり長時間濃度の濃い尿が作られている状態です。

「早朝第一尿」は成分がぎゅぎゅぎゅっと一番濃縮されている尿なのです。

「濃縮されている尿では各種成分の1日の平均排出量より「高めにあるよ」と出ることがある」お話は先ほどしました。

と言うことは・・・

「一番濃縮されている早朝第一尿で成分が出なかったら「ない」「少ない」」って判断できるわけです。

随時尿ではここまでの濃縮は難しく、薄まってわからないことも多いので、日常的なスクリーニングとして良く使われますが、厳密に結果を判断したい時は一番異常高値の出やすい「早朝第一尿」での検査が行われたりします。

また、ここでは詳しくお話ししませんが、私の専門分野である「尿沈渣」(尿中の有形成分)も尿の濃さや尿pHが影響してきます。例えば随時尿で薄い尿だと、細胞が膨張したり、破裂したり、溶けたりして判定できなくなってしまう等、尿の様々な状態に影響を受けます。

早朝第一尿は濃縮され、かつpH5.5付近で尿沈渣の保存に適しているpHなので成分がしっかりと残っていて、濃縮されているので成分数も多いということから、尿検査全般にとても良い検体となります。早朝第一尿の尿沈渣で異常成分が出なければ、「ないです」と判断できる確率が高くなるわけですからね(0とは言い切れませんが)。

学校の健診で「朝一番のおしっこを持ってきてね」という理由は、「早朝第一尿」は異常が見つかりやすいということ、子供なので学校でおしっこをとるのは色々と難しかったりする、といった様々な事情からきているのです。

頑張って朝一番のおしっこを取って学校に持っていってくださいね。








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彩月しおん(あやつき しおん)
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