疎まれた夏休みー子ども支援について考える
「夏休みは今年から短くなります」
もしそのようなことを言われようものなら私であれば発狂ものであるが,子どもを抱える多くの家庭において,夏休みの短縮,さらには廃止を求める声が近年上がっているのも事実である。
まずは以下の記事を見てもらいたい。
ある認定NPOが実施した調査によると,貧困世帯の約6割が,その経済的負担から夏休みの廃止・短縮を求めているという。
当然ながら夏休みは子どもが家にいる時間が長くなり,また給食もなくなるため,家庭における食費の支出や保護者の世話の手間は増加する。
保護者の視点から見ると確かに道理であるが,一方で夏休みを心待ちにしている子どもたちにとっては受け入れがたいことであるのもまた事実であろう。
では保護者の負担を減らすにはどのようにすべきかというと,子ども食堂を運営している身から言うとやはり,子どもの居場所の拡充を目指すのが一つの解決策になり得るという思考に落ち着く。
しかし子どもの居場所の現状を見ると,これもまた厳しい状況が見えてくる。
平成30年に農林水産省が実施した調査を例に挙げよう。本記事では一部抜粋して紹介するが,詳細を知りたい方向けにリンクを貼っておく。https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/attach/pdf/kodomosyokudo-33.pdf
まずは以下の図表をご覧いただきたい。
図1は全国の子ども食堂の開催頻度とその時間帯を示しており,ここから約半数程度が月に一回のみの開催であることが読み取れる。また,その開催の大半が平日夜と休日の夜に集中している。
では何が問題かというと明らかなのが,その開催頻度の低さ,また開催時間帯に因り十分な支援とはなり得ていないことである。
もともと休日であれば親も仕事が休みの人は多いし,平日も夜は自宅にいる親が多いだろうから,孤食は減らすことができる。
もちろん基本的には子どもたちも学校に通っているから,開催時間帯としてはそこまで問題ではないのかもしれない。しかし今回のトピックは夏休みであり,そういった長期休暇においては子供らが平日の日中に家で過ごす時間も必然的に長くなり,そうなると当然現状の支援では不十分である。
ちなみに私が運営する子ども食堂は,月に一度休日の昼間という典型的な形を取っており,同じく神戸市長田区で子ども食堂を開催している約20程度の団体は,ほぼすべてが同様に月に一度休日の昼間に子ども食堂を開催している。
これは全国的な統計に比べて大きく形態が異なるが,その分支援の形としては余計に難しい状況であるといえよう。
こういった状況に拍車をかけているのが図2のような状況である。
幾つかピックアップしよう。
「来てほしい家庭の子どもや親に来てもらうことが難しい」「学校・教育委員会の協力が得られない」「スタッフの確保が難しい」などなど。
これらを包括して広報上の諸問題と言うことにする。
これら広報上の問題点は,複数の要因に分岐する。
例えば学校や教育委員会に食堂のチラシの配布を依頼すると,「地域団体のチラシを依頼通りすべて配布すると際限がなくなるし,学校があっせんするような形になるので,学校関連団体以外はすべて断っている」とこういう具合である(なお体験談であるが)。
とはいえ,ほかに子どもたちの目につきやすい場所もなかなかになく,各家庭への告知も難しいというのが現状だろう。
ボランティアスタッフの募集に関しても,地元でそういう活動をしているのを知らなければ参加しづらいし,そういう意味では連鎖的に問題が発生していると言える。
そのように基盤が明確に作れていない状態では,開催頻度や規模を拡張することはできないし,仮にできたとて無意味である。
もちろん資金や開催地といったほかの問題もあろうが,それらの問題点は安定的な開催を成し得るようになって初めて真剣に対峙すべき課題であって(規模が小さいうちはそこまで大きな問題となり得ない),まず最初の基盤を作るためには,広報上の環境整備を整える必要がある。
事実,私たちの団体においても地域広報が目先の問題として浮上しており,先に述べたような理由からなかなか解決には至っていない。
現在長田区においては,子どもの居場所紹介パンフレットを作成したり,紹介サイトへの誘導チラシの配布を行ったりしているが,能動的情報受信者にしか届きづらい状況であり,受動的であってもそういった情報を受け取れる状態を作っていかねばなるまい。
その点では,現在行われているような食料・財政支援だけでなく(もちろんそれも重要ではあるが),現状各団体の個別やり取りに一任されている小学校でのチラシ配布や地域の掲示板・回覧板の利用制度を整えるなど,より内実に沿ったこまやかな支援が望まれるところである。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?