光について【絆光記】
私たちは、語らねばならない。
あまりにも眩い光は私の影をくっきりと浮き彫りにする。
あの光たちに比べて私の影はどれだけの価値があるのだろうか。
絆光記の感想noteです。
Shower of lightを聴いた衝動で書きました。
ルポライターを軸に考えたこと言葉にしていきます。
あらすじとかは書きません。
万一読んでない方がいたらこのページを今すぐ閉じて読んできてください。
本コミュにおける光とは言葉と読み替えてよいだろう。
冒頭にある白紙の文書でルポライターは”役立たずの言葉”のことを言葉にしようとしている。
言葉の力をこれまで描いてきたシャイニーカラーズは、役立たずの言葉をそれでもなお言葉にしようとする姿勢を描こうと足掻き、反抗している。
私はシャイニーカラーズのこういうところが好きなのだ。
〇光の届かないところにいる人たち
有識者によるとイルミネの3人がアンバサダーを務める映画はヘレンケラーの障害を描いたものらしい。
ヘレンケラーは生まれつき見ること、聞くこと、話すことのできない少女だった。そんな彼女はある日”先生”に出会い、長い時間をかけて言葉を学び、世界各地にいる障がいを持った人々と想いを通じ合わせて障がい者教育や福祉の発展に貢献した。
真乃、灯織、めぐるがそれぞれ出会った、言葉を届けられなかった人たち。
彼らも目には見えないかもしれないが何らかの生きずらさを抱えた人々だった。
真乃と出会った彼女は、真乃を一人の人間として見ていなかった。
あまり善良とは言えなそうな社会団体の歯車、もっと悪い言い方をするならカモを探している人だった。
社会に居場所がない人間に対し、悪い社会という言い訳と「ここがあなたの居場所」と仮住まいを餌にして資産や労働力を毟り取るような団体は存在する。
彼女の認知はどうあれ、彼女は真乃を同じ目線で見ることはできていなかった。
灯織と出会った彼女は、灯織の善良さによって傷が深くなってしまうような精神状態だった。
心が摩耗しきっていると世界の全てが自分を攻撃しているように見えてしまう。特に、少しだけ自分を客観視できているなら嫌な自分を自覚してなおさら自己嫌悪が深まっていく。
少なくともこの時の彼女は、灯織の紛れもないやさしさで傷を深めてしまっていた。
めぐると出会ったアイドルの女の子は、無意識化ではあるだろうが、明確に八宮めぐるという人間に傷を負わせるべく言葉を振るってしまった。
自分と八宮めぐるというアイドルは違う世界に生きている、違う世界の生き物だときっと彼女は思ったのだろう。
そして心のどこかでこんな思いをするのなら出会わなけらばよかった。
私がこんな思いをしているのはあなた(めぐる)のせいだと。
この言葉にめぐるは返せる言葉を持っていなかった。
当然だ、返す言葉が見つからない、やり取りを拒絶するための言葉を彼女は潜在的に選んでめぐるに投げかけたのだから。
〇同じ地平に立っているんだ
今の私たちでは光を届けられない人たちがいる。
それ知ってイルミネーションスターズの3人は、海辺の街のワークショップに参加することを決める。
言葉を見つけるために、まずは自分たちの知らない世界、知らない人々のことを知ろうと。
ワークショップにはこの物語のもう一人の主人公であるルポライターが、プロデューサーからイルミネーションスターズの記事を書くために依頼されてやってきていた。
なんで俺なんだ?と不思議に思いながらも彼は仕事を選べる立場になかった。
別に俺じゃなくてもいいのにと思いながら、だれにでもかける綺麗でお行儀の良い文章を彼は紡いでいった。
ワークショップの参加者の中に、”光の届かないところにいる人”がいた。
めぐるを前にした彼女は、八宮めぐるではなく都会からやってきたアイドル、ここじゃない世界の私とは違う生き物に対してを吐く。
受け取ろうとはせずに、一方的に。
だって彼女は私とは違う。人間じゃないんだから。
何事にも体当たりができることが彼女の魅力だ。
あきらめずに少女と同じ目線に立とうとし続けた彼女の努力は実を結ぶ。
「相手の気持ちは相手にしかわからない、でもそれは相手の気持ちを知ろうとしない理由にならない」と不器用に相手のことを見ようとし続ける灯織やめぐるの姿に、絶望的なまでに心を握りつぶされる人間が一人砂浜に立っていた。
光たちの発する言葉が、明るくて真摯で希望に満ちた言葉が、光の届かなかった人たちを救えているんだったら。
影の発する言葉が、暗くて惨めで希望のない言葉は、不愉快で否定的で思いやりのない言葉には、何の価値もないじゃないか。
〇言の葉の星たち
そもそも、光にかたちなどないのだ。
受け取り手次第で感じ方は違うのだ。
光は反射する。
誰かが言ったことが瞬く間に広がっていく。
光は屈折する。
真摯な言葉は誰かの手でいかようにも捻じ曲がる。
言葉は、言葉だ。
誰かの心を動かすことができる。
誰かと心を通じることのできる。
そんな万能の道具じゃない。
自分の心を騙す薬にもなるが、それも飲みすぎると毒になる。
そんな使いにくい道具だ。
でも自分の心に正直な言葉だけはきっと、自分を救うことができる。
それだけは自分が、自分の生み出す言葉に付与できる間違いのない価値だ。
それが偶然、誰かの救いになることがあったら、それ以上に嬉しいことはないだろう。
真乃も、灯織も、めぐるも自分のあり方を変えなかった。
”言葉の届かないところにいる人たち”がいるように”もう言葉が届いている人たち”だってたくさんいるのだ。
”言葉の届かないところにいた人”が何かのきっかけで違う場所に行ったり違う自分になったりして、向こうから言葉を受け取ろうと歩み寄ってくれるだってあるのだ。
だから、誰のものでもない、自分だけの言葉を紡いでいこう。
〇通じたい
言葉は、言葉だ。
誰かの心を動かすことができる。
誰かと心を通じることのできる。
そんな万能の道具じゃない。
でも、そんなとても不器用な言葉という道具を使って誰かと通じ合うことができたらとても楽しいと思う。
それにはお互いに、相手の言葉を理解するために歩み寄らないといけない。
だから同じ地平にいる、正反対の貴女に私はこう言ってやるのだ。