【雑感】東ゆう【トラペジウム】
トラペジウムを見た。東ゆうさんに狂った。
原作はまだ読んでません。パンフは流し見程度。
まずはくもりガラスの向こう側にいる東ゆうさんの心に手を伸ばし続ける体験を大事にしたい。
つまりこれから書くことは全場妄言です。悪しからず。
東ゆう:オリジン
OP映像にめちゃくちゃ詰まってる。
多分小さい頃から感受性が著しく弱く、周りの子たちから影響を受けることがほとんどなかった。それに伴い共感性も低い。
いじめを受けてた亀井美嘉さんに物怖じせず話しかけてるのもこの裏付け。
そんな幼少の彼女を惹きつけたものがアイドルの輝きだった。これまで心を動かすものに出会えていなかった彼女の頭の中はアイドルのことだけ、やがてはアイドルになることだけになって行く。
感受性の弱い自分をこんなに魅了するアイドルという職業という認識と、他者への共感性の薄さが後に「かわいい子はみんなアイドルになるべき」という思想の種になる。
オーディションを闇雲に受け続けてもアイドルになれない。何度落ちた後に気づいたのだろうか。
きっとたくさん泣いて、何が自分に足りていないかを数えたんだと思う。
自己啓発本を読み漁って必要だと思ったものを、全部実行してきたであろう描写からも東ゆうが考えて努力できる子であるというのが示されている。
ちょっと脱線するが東ゆうさんに頸動脈を抑える癖をつけたのはすごいと思った。面の皮が厚い嘘吐きを映像で書く上で、その人物の緊張をあえて描写せず(完璧な嘘を守りながら)見てる人間に伝えられる。かつ、上記の描写にも使える。いろんな作品で取り入れて欲しい。
東西南北を青春切符で旋回中
ようやく本編の話。物語は東西南北の美少女集めから始まる。
「キャッチーな特徴」や「見た目のかわいさ」を後天的に身につける手段として彼女は「東西南北」というキャッチーさを持つ「美少女」で固められたユニットの一角となることを思い付いた。
思い付いたのなら実行はし得。この行動力を持つ彼女は仮に東西南北の美少女を集められていなくても次の矢を射っていただろう。東西南北の仲間を集められたのは奇跡でも彼女が頭角を見せるのは必然だったと言える。
下調べをして華鳥蘭子さんと友達になるために恐らく影響を受けているであろう「エースをねらえ」を予習して行くという行動力。多分他にも可能性がある漫画や映画は一通り確認してる。
大河くるみさんと話を合わせるためにロボットを購入してC言語を学習する。さすがにやりすぎだよなと自分自身を嘲笑しつつも仲良くなるきっかけになったので良しとしよう。
一方で大河くるみさんには付け焼き刃の知識は早々に見抜かれていたであろうが、自分の趣味に夜遅くまで付き合ってくれた初めての友達のことは何があっても大事にしたいと思っているだろう。
「くるみちゃんが他の子のこと気にするなんて珍しいね」ってセリフで大河くるみさんが既に東ゆうさんの目的に気付いてるっていう話をXで見て脱帽した。言われてみれば確かにそれを示してるとしか考えられないセリフだ。
西のアシストもあり東西南北は揃ったのだった。
東ゆうの策謀
アイドルになった後のための好感度稼ぎ(ボランティア活動)。
東ゆうさんが自分の思い通りにことが運ばないとと態度に出てしまう人物であることや自己正当化癖(味噌汁のくだり)がある人物であることを描いている。味噌汁の件は仕方ないとも思うけれど。
学祭、またしても東ゆうの策謀は梯子を外される。落胆はしたものの楽しい時間を楽しまないほどもう子どもじゃない。
そんな中訪れた写真部の展示。10年後の未来の姿を考える。
かわいい服を着て、眩しい照明に囲まれて、たくさんの声援を浴びて……
いつも考えてることだ。
でも、今はみんなが見てる。夢のことを語るのはもっと先でいい。
そんなふうに考えてるときに託された。
今まで着たくても、着たくても、着たくても、着れなかった服。
私今光ってる……。なんてね。
でもこのお礼はしないとね。約束するよ。
今まで私のためだったけど、ちょっとだけあなたのためにもアイドルになるって。
流れに乗って
お城のボランティアをきっかけに東西南北は「流れ」に乗る。今までの細い道筋とは違いすべてが用意されている。あれだけ焦がれていた「アイドル」の称号はいとも簡単に手に入った。
このシーンは作中を通して東ゆうさんが最も嬉しそうな顔をしていると思ってる。
ずっとずっと憧れてきた夢が叶う瞬間を見届けたい。
「アイドル」前夜。
東ゆうさんのどうしようもない青さ。
この作品は前編を通して東ゆうさんが直接努力をしてるシーンがほとんど描かれてないが、その説明をしてくれているシーンでもある。(それが巷で色々言われている一因になってる気もするが)
東ゆうさんの強い思想に焼かれていたい。
初見時はここまで東ゆうさんのことがわからなかったがこの後の「なぜオーディションでなくわざわざこんなに回りくどいことを」という問いかけに対してはぐらかし、「全部落ちたなんてカッコ悪くて言えないよなぁ」と独白するシーンで等身大の女の子であることが理解できてここまでの全てがスッと理解できた。
なりたいじぶん、夢の中を歩みながら本当になりたい自分を探して行く曲。
ここの曲はもっと皮肉を効かせても良かった気もする。
破綻
筋書き通りすぎる破綻。
誰もがアイドルになりたい、そんな都合のいい自己肯定のために芽生えた思想から生まれたアイドルグループは大きな成功の流れの中にいても自滅して行く。自分にとって大事なものがそれぞれ別にある少女たちの心はその名の通り散り散りになって行く。
手に入れたはずのものが手から滑り落ちて行く。
理解できない。なんで?
私たちって今アイドルでしょ?最高の職業だよ?
なんで?なんで?なんで?なんで?
私がなりたかったアイドルって
これだっけ?
いい夢を見れた
でも結局光ってなかった
たくさん傷付けた
まだここにいたいな
いい加減起きなきゃな
あー、でも明日からでいいや
そうしてたら、起こされた
楽しい、そうやって夢を笑って?
もういいや、ルールなんて
これからか
受験のことも考えないとな
あれ、電話だ
出口、私は
古賀さんから"楽しかった"と言って貰えて諦められそうだったアイドルがやっぱりどうしても諦められなくなった。
こんなにみんなのこと傷つけておいて、最低だ。
アイドル失格だ。いや、こんなやつに元々アイドルの資格なんてないか。なんでみんなみんなみんなみんな諦められるんだろう。
私には無理だ。
すぐそこにあった出口は、もう見えなくなっていた。
古賀さんからの電話を受けて電車を逃すシーン。
この作品において電車は大きい(逆らえないような)流れのことを指していてこれまでの東ゆうさんは、ただ突き動かされてアイドルを目指すしかないから目指していて、東西南北のメンバーも同じように電車に乗っていた。
それに対してこのシーンでは古賀さんからの電話を受けて、"楽しかった"という言葉をもらって自分の意思でアイドルになろうという選択肢を選び取ってるんじゃないかなと感じた。(多分本人は気づいておらず無意識で)
東ゆう:ライジング
どうしても夢を諦められなかった東ゆうさんは、まず考えた。
自分の悪いところを洗い出すために、昔から自分のことを知っていて、きっともう嫌われているであろう亀井美嘉さんに話を聞きに行った。
そんな亀井美嘉さんから、「東ゆうさんの最初のファンだった」という言葉が出てきて東ゆうさんはとても驚いたと思う。
東ゆうさんの在り方で救えてた人も間違いなく、居た。
その後のラジオのシーン、サチちゃんからの「夢って叶うんだね」ってシーンは作品外の話だが個人的に刺さるものがあって号泣してしまった。
夢を叶えてくれて、勇気をくれてありがとう。
花鳥蘭子さん、大河くるみさんも東ゆうさんから光をもらって自分のやりたいことのために歩みを進められるようになった。
(ここは正直ご都合主義な部分も感じたが)みんなアイドルを経験して良かったのだ。
ちょっと遠回りな旅だったが東ゆうさんにとって楽しくいろんなものを得られた旅だったのだと思う。
性格と往生際の悪い女の子がアイドルを目指す話はここから始まる。
その努力を、東ゆうさんは我々に決して見せてくれないだろうけれど、きっと3人の女の子たちが俺たちの代わりに見届けてくれるんだろうなと信じている。
あの時の私へ
物事を俯瞰的に見れるようになった時に、青かった自分の選択を好きでいれる。
そんな生き方をしてきた東ゆうさんにどうしようもなく嫉妬して、尊敬して、その生き様を見せてくれてありがとうと言いたい。
以上、お終いです。
くもりガラスの向こう側にいる、作品の登場人物に手を伸ばすこと、とても楽しいのでみなさんもぜひやってみてください。
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