【映画ネタバレ感想】ライオン・キング 実写みたいな動物から逆説的にアニメ化の意義を考えさせられる

雄大なアフリカの自然を背景に、王とその弟、そして王の息子が神話的なドラマを繰り広げるライオン・キングが実写…ではなく美麗な3DCGで復活。

とにかく子どものシンバが可愛い。2次元のアニメよりも可愛らしく感じられる。人間はともかく、動物の場合は漫画的表現は実写的表現を超えられないんじゃないかという気さえする。

音楽も期待通りの出来栄えで、鮮やかな風景、にぎやかな動物達を眺めつつ聴いていると、なんて贅沢なんだろうと感じさせてくれる。

今回は字幕版で見ましたが、子どもシンバ、大人シンバいずれもぴったりな声で、風景にマッチしたのびやかな歌声が心地良かった。

しかしアニメの意義とは? 実写(的表現)との違いとは? と考え始めると、僕らがかつてアニメのライオン・キングに引き込まれた理由について考えざるを得なくなる。詳しくは以下の、ネタバレあり感想で。

(以下スペースの後にネタバレあり。否定的な感想もあるのでご注意ください)

アニメの良さの一つに、本来は人間的に振る舞わないものでさえ人間であるかのように見せることができる、というものがある。

アニメ版のライオン・キングを観た記憶は随分遠いけれど、威厳のあるムファサ、如何にも悪そうなスカーなどはとりわけ人間的な表情を見せており、姿はライオンなのに立ち居振る舞いは人間、というキャラクター達が、これまた古くから人間が伝えてきた営為である神話の筋書きのようなドラマを見せる、ということに新鮮味を感じて引き込まれていた部分がある。

それを本物のライオン側に引き戻すということにどれほどの意味があったのか? と問われると、若干疑問が残る。

確かに、本作はより「本物っぽい」動物達が人間的に振る舞っていることから、上で述べたような魅力をアニメ版よりも強化できる、という理屈も成り立つかもしれない。

しかし実際に見てみると…どうだろう。思っていた以上に本物寄りである。ライオンをはじめとした動物達の動きなども随分と研究されたのだろう。本物寄りすぎて、あんまり表情が動かない。声と動きで感情は伝わってくるものの、今度は人間らしさがあまりない。

アニメ版ライオン・キングは「人間がライオンを演じている」ように感じられたけれど、本作は「ライオンの言葉を翻訳した」というのが自分にとっては近い。

個人的には、本物色が強すぎて「自分は何を見せられてるんだろう」という気がしてしまった。どちらかというと、動物にアフレコがついている形式のドキュメンタリーを見ている感じ。

またアニメ版は上手かったんだなぁと思うのは、どうしても避けがたい捕食・非捕食関係のあたり。サークル・オブ・ライフというテーマがある以上、描写せざるを得ないのだけれど、あれほどリアルだと余計に「何故この草食動物達は天敵を王と崇めているのだろう」と疑問が湧いてきてしまう(まあどの社会でも民衆にとって王は捕食者そのものなのかもしれないけれど)。漫画っぽいアニメなら許せていたものが妙に目につきはじめる。

一方で、「ライオンが寝ている」の曲あたりの動物達が楽しげに歌っているシーンはこちらも楽しくなってしまった。プンバァとティモンはややリアル過ぎる動物達の中にあって振る舞いが原作通りコメディ寄りであるため、アニメ版と同じ楽しみ方ができる。

音楽関連は概ね良かったのだけれど、大人シンバの「心配ないさぁ〜」がなかったのはちょっと残念。あの吹っ切れた感じがすごく良かったのになぁ…と思ってたら、あれって劇団四季のミュージカル版の歌詞らしい。

しかし人間のように振る舞うライオンを人間が演じる、というのもよくよく考えるとややこしいな…でもやっぱり、ミュージカルも含めて人間味が強めに感じられる方が自分の場合は楽しめるのかもしれない。

#映画 #映画レビュー #ライオンキング

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