【映画の感想】X-MEN ファースト・ジェネレーション
(前半はネタバレなし、後半はネタバレありです)
※フィルマークスに書いた感想の転載です
行政機関による統制を受けない位置に「巨大かつ強力すぎる」力が生まれた際に人類はどうすべきか、というテーマはアベンジャーズ でも取り上げられたけれど、とかく今の世の中はいろいろなところにパワーが生じるポテンシャルがある。たとえば少人数で立ち上げられたウェブサービスでも、アイディア次第では世界中の政治家を驚かせることができる(例:Facebook)
正体不明の強力なパワーを前にしたときの人々の選択は観客席から見ている分には愚かに感じるけれど、例えば街中で刃物を隠し持った人が結構な人数いるかもしれないと考えたら、必要以上に守りに入りたくなる気持ちも理解できるだろう。しかもミュータントの場合、刃物などより余程危険度の高い能力を隠し持っていることも大いにありうる。迫害の理由づけとしては十分すぎるともいえる。
X-MENは差別と迫害を重要なテーマとしていて、マグニートーは登場人物の中でも最も迫害を受けた存在となっている。一度目はホロコースト被害者として、二度目はミュータントとして。
現実世界の僕らが直面する差別問題は、相手がミュータントほど大きな力を持っていないにも関わらず生じてしまっている。その意味では、実はX-MENの世界の方がまだ差別の口実が作りやすいのかもしれないし、僕らはX-MENの世界ほど断絶は深くないのに解決しきれていない、と言えるのかもしれない。
X-MENにそこまで詳しくない身からすると、敵のボスというマグニートーのイメージから彼なりの信念や苦悩を知ることができて興味深い。というか彼は強すぎでは…「磁力を操れる」とだけ聞けば単純な能力だけれど、想像力次第であそこまでダイナミックなシーンになるのかと驚愕。
思えば、マーベルヒーローは「身体能力が高く、壁に張り付ける(糸を出すのは本人の科学力なのでさておき)」「めっちゃ頭良い」「力が超強い」、X-MENでも「手から爪が出る、傷がすぐ治る」「目からなんかビームが出る」など、言ってしまえばシンプルな能力ばかり(異能力モノの元ネタということもあるのだろうけれど)。
そんなシンプルな能力なのに、工夫次第で面白い使い方になるし、絵的にもダイナミックなものにできる。さらに仲間と連携すればわかりやすいのに激しくて引き込まれるシーンを作れる。
そのあたりにマーベルの強さの源流の一つがあるような気がした。