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お出かけ。

気になってる女性がいる。なんとかご飯に誘うことができたものの、その日のレストラン等はまだ決めていない。ぶっちゃけどこでもいいのだ。彼女と話しさえできればそれでいい。本当にそれでいい、と僕は思っている。

ご飯をする場所が決まった。最近、流行りなのかは知らないがビールを専門とするお店CRAFT BEER BARである。インスタグラムでは、そのお店の季節限定ビールや全国の地ビール、少しの海外ビールの写真がハッシュタグとともに並んでいる。これが映えというものらしい。我ながら良いチョイスだと思う。土曜日の19:30にお店を予約した。当日まで少しでもビールの勉強でもした方がいいものか。

当日である。

空は曇っているが夜には晴れるらしい。

お店に着き、彼女がまだ来ていないことが分かる。焦ることはない。僕は予約時間よりも早めに着いているからである。
到着から10分弱遅れて彼女は来た。薄ピンク色のシンプルなワンピースを揺らし歩いてくる姿は某お伽話の川から流れてくる桃のようだ。ピーチ風味のフルーツビールの隣に綺麗な桃が大きく載ったメニューを見てたせいか、わけのわからない感想を頭で唱えている。とりあえずおすすめの樽生ビールを店員さんに聞いた。一通り、料理の注文を済ませてちょうど届いた、苦目のビールとホワイトビールで乾杯をした。
2人で過ごす時間はものすごく楽しかった。料理もお酒も美味しいし、何より雰囲気が良い。バランスが取れている。このお店を選んで良かったと感じた。僕は、お手洗いに行くと彼女に伝え席を後にする。
トイレの内装もひどく洒落ていた。興奮状態を抑えにきたようなものだがまるで落ち着かない。時計をみると21:00にもなっていなかった。良かった、もう少し楽しめるみたいだ。
僕は席を目指し、ドアを開けて進んだ。違和感を感じる。彼女の姿が見当たらない。2階のトイレにでも行ってるのかと思ったが荷物も無くなっている。とりあえず残っている生ハムを肴にビールを流し込む。

時計の針は、11:30を過ぎようとしている。どうやら僕は逃げられたみたいだ。お会計を出してから約1時間経とうとしているが、一向に動こうとしない僕をみて店員さんの顔は笑顔とはかけ離れている。やっとの思いでお会計を済ませ、代行を1台頼んだ。到着に30分程が過ぎただろうか、帰宅の準備に体を動かそうとするが代行は隣のお客さんへ向かった。勘違いを注意する気力も無く、また30分ほどが過ぎた。店員さんがお冷をさり気なく置いてくれたが、飲めなかった。飲まなかったのかもしれない。お店を出る時には1日はとっくに終わっていた。

晴れているでも無く、土砂降りでもない。
真っ黒の中、小さくて冷たい粒が腕に当たっている。


読んで頂きありがとう。 時間潰せたかな。