安倍元首相銃撃事件から見るテロルの可能性と社会変化

これまでいくつかのアナキズムの書物を読んだり読書会のような集まりに参加したことがあるがどれもしっくり来なかった…

単に無知ゆえに理解出来なかったということもあるがいくら書物を読んだり理解を深めたところでそれが現実世界には何ら影響を与えずただの己の知的好奇心を満たすだけの自己満足.自慰にすぎないと思ったからだ

小さなサークルのような集まりで理解を深めた気になって内々で楽しくやってるならいいがそれで革命だなんだと威勢のいいことを言ってるのでは聞いて呆れる…

確かに今の時代に革命など言っても夢物語だしましてやアナキズム革命などどの時代にあってもパラノイアだと思われるだろう…

しかし今の時代に本当に革命は不可能なのか?

革命とはいかなくても世の中を変えることくらいはできるのではないか?

その答えを昨年一人の青年が身をもって証明した!

安倍首相銃撃事件の山上容疑者である

彼はたった一発の銃撃で世の中を変えたのである!

それはこれまで世の中を変えることなど不可能だと思っていたすべての人達に衝撃を与えた!

これまで日本でも革命を唱える党派はいくつもあり合法非合法問わず様々な闘争を何十年もやってきたがその結果は無惨でありはっきり敗北と言っていいだろう

革命を進めるどころかその闘争により治安強化されたり人心の心は離れ保守反動化すらした…

そしてその敗北によりもはや日本では革命を行うどころか世の中を変えることすら不可能だというある種の虚無感厭世感が長い間世の中を支配してきた

そんな中でたった一人の青年の行動が世の中を変えたのである!

何を変えたかというとまずは戦後初めて一国の元首相を暗殺したという事実である!

それも安倍元首相は数いるただの首相経験者などではなく歴代最長の在任期間を努め退陣後も政界に厳然たる影響力を持っていた大物中の大物である

そんな大物を何の組織的背景を持たず個人の強い意志と手製の銃のみによって厳戒警備の中暗殺するという前代未聞の出来事によって多くの人に現代の日本でも一個人が首相を暗殺することが出来るという驚きと衝撃を与えた!

そしてその結果山上容疑者の目的は大部分で達成されたということである

伝えられてる通り山上容疑者は統一教会に深い恨みを抱いておりそれが強い動機であの事件を起こした!

そしてその後の世論、マスコミ報道によってその実態が明らかになると当初のテロ非難一色だった報道から反統一教会の機運が作られついに自民党と統一教会との癒着問題なども表面化し政府自民党にも少なからずダメージを与えるとともに自民党はそれまであった統一教会との関係も表向きは切らざるをえなくなった

またそうした世論の声を受けて統一教会被害者救済のための新たな立法化や全国での訴訟なども行われた!

こうした事件後におきた事実を見るに「自分が安倍氏を襲えば家庭連合に非難が集まると思った」と山上容疑者が供述している通り統一教会に対する恨みを晴らすという目的においてはかなりの部分が達成されておりその点は本人の想定以上の成功を収めたといえるだろう

そしてこの国を変えるには実はテロリズムが最も効果があるのではないかと多くの人が気づいてしまった!

さらにこの事件によりすでに山上容疑者の意思とは無関係のところですでに第2第3の山上容疑者を作り出す可能性が大きく増加したことであろう…


山上容疑者と同じ氷河期世代に限らず現代の日本では無敵の人と呼ばれるある種失うものなどないという鬱屈した絶望の中にいる人達が大勢いる

それまで彼らはただ自殺をするか世の中に対する恨みを関係ない人を無差別に刺したり自分より弱いものを襲ったりすることでニュースになってきた!

そんな事件を起こして単なる異常者、犯罪者と言われながら人生を終えるくらいならこの事件のようにこんな世の中にした政治家など大物を狙った方がいいと考える人が今後出てくるのではないだろうか…

現にこれを書いている数日前20代の若者が選挙応援中の岸田首相に爆発物が投げ込むといった事件が起きている

(動機は現時点では不明)

またこれまでの日本であればテロは100パーセントの悪でありこれに少しでも同情したり擁護的な発言をすれば猛バッシングを受け叩かれた

(現に今回の事件が起きた時野党含めすべての政治家は民主主義への挑戦であり非難するといった声明を出しそれ以外の声は皆無だった…同様にテレビなど表のメディアの論調や出演者も同様だ)

しかしある程度の匿名制があり気兼ねなく意見の言えるネットなどでは近年では珍しく犯人に対する同情や擁護の声も多かった(無論全体数で言えば非難の方が遥かに多いが)

現に全国から山上容疑者の減刑を求める署名や多額のカンパが集まったりもした
統一教会の問題が知れるにつれその比率も上がっていった!

このように日本でもテロ=100パーセント悪という風潮も少しではあるが変わってきたように思う!(この事件ではターゲット以外の人間を死傷させなかったのも非常に大きいだろう)

まさに彼は人生をかけてこの瞬間のためにテロという行動を実行したった一発の銃撃で日本を変えてしまったのだ!


翻って昨今の私達はどうだろう…

近年のアナキズムブームとやらでやたら新しい書籍などが刊行されたり一般紙でアナキズム特集とやらが組まれたりしたこともあったがなんのことはないそれはホントにただの小さな界隈の一時的なブー厶であり現実世界には何一つ影響を与えられていないのが現状である

そしてそのほとんども昔のアナキスト達の回顧や思想などの解説を読んで満足してそれで終わりだ!(無論革命には一見派手に見えるテロや直接行動よりも日々の日常に根差した地味な活動のほうが大半だが…)

しかしそういうのも否定はしないがそれらの行動はまったくアナーキーではないしもしそれでアナキストを名乗る者がいたら止めたほうがいい!


少なくとも戦前のアナキスト達は今よりも遥かに困難な状況下で文字通り命を賭けて活動した

今彼らに学ぶとしたら彼らの思想や小難しい用語の本を読んでお勉強するよりもその行動力や覚悟の方ではないだろうか?


以上のようなことを書いてきたが最後にやはりテロ、直接行動というのは非常にリスクが高く成功失敗問わず本人の人生を棒に振るだけでなく周囲の人間にも多大な影響が出る!

したがってアナキストに関わらずそのような行為を決して勧めるわけではない…少なくとも基本的にはやらないほうがいい(今回の事件は非常に稀有な例で多くは失敗し目的を達成できずその後の大弾圧や治安強化を招く)

しかし今回の事件は思想的背景からではないにしろテロによって世の中を変え目的を達成したという点において衝撃的であり閉塞感に満ちた社会を打ち破るための闇夜の灯火のようにも感じるとともに変革を目指すアナキストにとっては深く考えなくてはならない事件でもあろう!


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