ピアノコンクールの新しい楽しみ方
ピアノコンクールを題材にした直木賞受賞作を読んだことがきっかけで、ピアノ鑑賞がマイブームとなった。作者は3年に一度開催される『浜松国際ピアノコンクール』(通称『浜コン』)を4度取材し、この作品を完成させたとあって、その世界観や細かな描写は、ピアノが身近にあった人だけでなく、縁がなかった人の心をも魅了する一冊となった。さらに、映画も大ヒットとなったことも相まって、今年開催予定の浜コンを、私もとても楽しみにしていた。
ところが、「開催中止」とのこと。がっかりはしたが、このコロナ禍では、やむを得ない決定だったと思う。
「楽しみにしていた」とは言っても、実際に会場に通い詰めて鑑賞するほどの時間的・金銭的余裕はない。そんな私でも、その場にいる臨場感で楽しめる方法があった。主催者が配信する動画サイトでの鑑賞である。映画を観た後は、浜コンのアーカイブ動画ばかり視聴して、現実の世界とフィクションである小説の世界のはざまに浸ってしまった。
コロナ禍で舞台芸術も随分制約を受けてきたが、ライブ配信やSNSの普及、それらを魅力的に見せる技術を持ったスタッフが増えていることに感謝したい。現地で生演奏を聴くこととは違った楽しみ方が配信される映像にはある。観客席からは、演奏者の鍵盤を見つめる瞳の動きまでは分からないし、気に入ったところを何度も聞き直すこともできない。しかし配信映像では一等席にいるかのような音響で、映画顔負けのカメラワークで楽しめる。SNSでは、舞台袖やリハーサルでの張り詰めた様子、友人と談笑するプライベートな一瞬をも垣間見ることができる。
コロナ禍だからこその新しい楽しみ方は、IT文明の利器による相乗効果で、より手軽で身近となった。どんな方法であっても、未来ある演奏者たちを応援できると思っている。
#ピアノ #蜜蜂と遠雷
#浜松国際ピアノコンクール