羊文学「マヨイガ」という作品に寄せて

塩塚モエカ氏の作詞、作曲による「マヨイガ」という作品は、

「おかえり、ずっとまっていたよ」

この歌詞から始まる。

シンプルながらとても心温まる言葉だ。

「おやすみ 君の明日はどうしたってやってくる」


少し違和感を覚えるフレーズである。


「行け 行け その明日がきみを苦しめようと」

「行け 行け 痛みを知る優しい人でありなさい」

と、続く。

ギターのリフレインが、その心強い「言葉」をより一層増幅させる。

曲でいうところのサビへ突入する。

「言葉よどうか いつもそばにあり
これからの奇跡に全部形を与えてください」

「そうしてきみは小さな幸せ
宝箱いっぱいに集めて世界を愛してください」

という歌詞で綴られている。

ここで記されている台詞を端的に取り上げると、

「痛み 」「苦しみ」 「優しさ」 「幸せ」 「愛」

という言葉で構成されている。

作品の序盤ではあるが、人が「五感」で感じるものが揃っているように見受けられた。

曲はこのように続く。

「行け 行け その先が闇に思えようと」

「行け 行け 今ここにあなたを信じる場所がある」

「命よどうか 輝きをやめず これからの奇跡を全部、僕らに照らしてください」

「そうしてきみは ありあまる夢を花束いっぱいに抱きしめて世界を愛してください 愛してください」

こちらも前途したように取り上げると、

「闇」 「場所」 「命」 「輝き」 「奇跡」 「夢」
「世界」 「愛」

という言葉の数々である。

作品の中盤で表されているものは、
人間が「目には見えない」「恐怖」や「幸せ」などを感じているように思えた。


作品は終盤へと突入する。


「祈っている、たとえどんなに遠く離れても
君の今、君のすべてが、喜びで溢れますように
溢れますように」


終盤で気付かされる、この「作品」は「創作者」による「祈り」だったことを。

「おかえりずっとまっていたよ もう大丈夫だから」

曲の冒頭にも出てきた「おかえり」という、
人の血が通っているとても温かい言葉で続く。


しかし、

「おやすみ きみの明日はどうしたってやってくる」

優しさに溢れた「おやすみ」という言葉とは相反するような、
「どうしたってやってくる」という冒頭にも現れたこの台詞。


一見、残酷にも見える。
しかしこの台詞は、曲中で何度も繰り返し唱えていた、「行け」という言葉。

その先には「おかえり」と言った「人」が待っているのではないだろうか。

人間の日常、捉え方によると人間の生涯をも表した作品なのかも知れない。

いいなと思ったら応援しよう!