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刹那
あの会社に就職した先輩は、元気だろうか。そんなことを思いながら沖縄行きの全日空の飛行機に乗った。沖縄へは仕事だ。観光する時間もなく夜の22時過ぎに到着し、翌日の18時の飛行機に乗り帰宅する。
先輩とは、大学のサークルで出会った。何歳離れていたかは、もう覚えていない。明るくて意地悪、でも面倒見がよく、学部が全く違う私たちをよく飲み会やライブに連れて行ってくれた。
当時の私は、どうにか恋人を作ろうと医学部外のサークルに入っている友達を頼り、文系学部の野球サークルのマネージャーになった。そのサークルは、平日は放課後練習をして、休日には他のサークルと練習試合をするなど、野球が好きで集まっている人たちが楽しんでサークル活動をしている、といった感じだった。マネージャーは女の子10人はいなかったが、5、6人はいた気がする。飲み会要員とも言われていた。
先輩とは最初、野球サークルだけの付き合いだった。でも、話をするたびに好きなアーティストが一緒だったり、バイト先が近かったりして、2人でどこかに行くようになるのに時間はかからなかった。2人でいることが心地よかった。きっと先輩もその当時、恋人と別れたばかりで都合が良かったのだと思う。2人でライブやごはんに行く関係がしばらく続いた。
きっと、1年も無かった。
知り合って、先輩が就職して、段々連絡が取れなくなるまで。
数年後、先輩はサッカーにハマり、J1のとあるチームのサポーターになった。私は今の恋人の影響で、先輩とは違うチームのサポーターになった。
きっともう交わらないだろうと思っていたが、また引き寄せられ、連絡を取るようになる。
でも今はあのときのような高揚感はない。それは、誰かに好いてほしかったあの頃の私ではなく、今の私を肯定してくれる恋人がいるからだ。
また会おうと先輩は言った。
私の応援しているチームがJ1に上がったら。
会うときには若さだけだったあの頃より、素敵になっていたい。今はなんとも思っていなくても、過去に好きだった人の前では少しでも綺麗でいたいと思う。
高揚感がないなんて嘘だ。
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