【ミニエッセイ】そよぐ風とそそぐ陽光に包まれて
人は幸せを求める。
そのために美しさを、富を、栄誉を追いかける。
息を切らして、体がボロボロになりながらも。
走り抜けることに夢中になりすぎて、
通り過ぎていくものに心寄せることも叶わずに。
そこまでして求める幸せとはいったい何だろう。
今朝の6時半。
私はいつもと同じようにカーテンと窓を開く。
開かれた隙間から、こぼれるように差し込む陽の光と、
くすぐるような爽やかな風が、
私の感情を揺れ動かす。
それはまるで偉大なる大自然が、
温かい眼差しで、愛おしく抱きしめてくれたかのようだった。
私の母として子である私を歓迎し、祝福を授けられた。
日常の何気ない、他愛のない瞬間である。
しかし、だからといって、これが幸せとは程遠いものであると歯牙にもかけないのは勿体ない気もしてくる。
心臓が破れるほど追いかけるものだけが幸せと呼ぶのであろうか。
葉からこぼれ落ちた一滴の雫が生む波紋のように、
凪の海で勇ましく飛び跳ねる魚のように、
小さくも、けれども、確かに、その命の限りの力強さが左胸を脈打つものもまた、
私たちが「幸せ」と呼ぶものに加えてもいいかもしれない。