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キュリナリーズのポトフ⑩
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姫は悴んだ唇でつぶやく。
「私には、もう居場所も生きる意味もない。でも、せめて私のこの哀しみを、不幸を、あいつらに味あわせてから死んでやる」
それは、か細い姫の声を一言一句聞き漏らさず聞いていた。
「しかと聞き届けたぞ」
そして、四本の腕を空に向けて高らかに挙げると、たちまち暗雲が立ち込める。
その光景は不吉で邪悪で、まるでこの世の終わりを告げるかのようだった。
やがて姫とそれを囲む木々の間から、漆黒の霧が忍び寄る。
ゆっくりと、確実に姫に近づいてきた。
この異様な光景の渦中にいても、姫はもう何にも驚くことはなかった。
――つづく
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