東京ドームでもらったお守り

リトルトゥースならば誰しもが、二人の成長を見守ってきた自負があると思う。

しかし、今回の東京ドームは、今まで考えてきた前提を覆すようなイベントだった。

武道館はオードリーが主催する感謝祭

オードリーのオールナイトニッポンの武道館公演は、「オードリーが主催する感謝祭」のような印象を受けた。

たくさんの祝花に囲まれた武道館。
オードリーの過去の番組がフラッシュバックのように紹介された。

「面白かった」のはもちろんだけど、
それ以上に「オードリーが番組スタッフから愛されている」ことを実感した。
感動しまくりでずっとボロボロ泣いていた。

新規リトルトゥースの熱気に引いていた

一方、私は武道館以降に増えた新規リトルトゥースの熱気に若干引いていた。

私は、ずっとラジオを聞いているが、（物覚え的な意味で）あまり耳が良くない人間であるがゆえ、昔の名言はあやふやなものが多い。
一方、新規のリトルトゥースはYoutubeなどで動画を見漁った人たちなので、昔のエピソードは私よりも鮮明に覚えていることが多い。
だから、見知らぬ人から「私もリトルトゥースなんです」と言われると、一目散に去ろうとしたくなる。

リトルトゥースである自負は変わらないものの、オードリーが遠くに行ってしまった感があり、また、私が社会人になって仕事が忙しかったのもあり、毎週から2週に1回、1ヶ月に1回と、聞く頻度が減っていった。

そんな中で、東京ドームの発表。
私は、宣伝Tシャツを買わなかった。

晩年平部員だった部活のOBOG会に顔を出したら、部長をやっていた先輩が宣伝Tシャツを着ていて、武道館前後でファン層が変わったことを自覚した。

東京ドームで街中のリトルトゥースが宣伝している現状と、私の気持ちの整理が追いつかなかったんだと思う。

東京ドームでは、悔しさや寂しさを与える隙間が一切なかった。

それでも、東京ドームには行きたかった。
ラジオのイベントというより、若林さんの演出するステージが見たかったからだ。

そして、なんとか一般発売で手に入れた「ステージ裏体感席」。
会場で見れることが出来た満足感から、リセールに挑戦して、ランクアップしようとする気にならなかった。

そして、本番当日。

自分がオードリーのように成長出来ていない悔しさや、天下をとって遠くに行ってしまう寂しさを感じるライブになるんだろうと思っていた。

だから、前日に放送されたannkwは聞かなかった。

しかし、東京ドームでは武道館と異なり、ただただ面白くて、楽しかった。
悔しさや寂しさを与える隙間が一切なかった。

でも、私はイベントでもらったお守りの正体が分からず、心の中にモヤモヤとしたものが残った。
胸が苦しい。まるで恋をしたかのようだった。

「余韻が抜けてないのかもしれない」とも考えたが、余韻なら楽しい気持ちが勝るはずだ。
私の経験上、この感情は、大切なものを見落としている胸の苦しさだ。

私はお守りの正体を求め、オードリーANN15周年展に向かった。

オードリーはリトルトゥースのこと愛してくれた。

15周年展では、OPに流れていた「おともだち」が流れており、私は映像をボーっと見ていた。

このOPの主人公はリトルトゥース本人であり、リトルトゥースの成長物語である。

主人公は、オードリーの二人にどことなく似ている。それはつまり、リトルトゥースは誰しもが、若林・春日のどちらかに、自己投影していることを表現している。

ふと、オードリーがやった漫才を思い出す。

「自分への感謝」

そうか。このライブはオードリーではなくリトルトゥースが主人公なのか。

「売れたい」とか「認められたい」とかいう気持ちはすでに満たされているはずなのに、
「本当にオードリーって売れてる芸人だよね？」
と疑ってしまうほど、今回のライブに全力を注いでいた。
きっと、本気でリトルトゥースのことを愛を伝えたかったんだろうなと思った。

家族ではないどころか、会ったことない人に、こんなに愛してもらったことあったっけ。

しかも、
第一次ブームのときにファンになったミーハーを冷ややかな目で見ていた、
自分たちのラジオイベントなのに自分たち抜きでイベントやって（もちろんサプライズ登場とない）、
「ありがとうございました」と言うと、会場からクスクス笑いが起きていた、
そんな若林さん率いる、オードリーが、だよ。

リトルトゥースなら誰しも、二人の成長を見守ってきた自負があると思う。
しかし、本当は逆で、オードリーが私たちの成長を見守ってくれていたのかもしれない。

こんなに真っ直ぐな目で、こっちを見てくれたことあったっけ。
東京ドームには5万3千人もいて、さらにステージ裏で顔が見れない席のはずなのに。

やっと、涙が流れた。
この15年で、オードリーに、何度も何度も泣かされてきた。

私は、オードリー以外のイベントにも行ったことがあるけど、
イベントが終わったら、熱が覚めることが多かった。
イベントが終わっても、熱が覚めることがなく、
こんなにも「大好き！！！」て叫びたくなるイベントは初めてだった。

ステージ上のオードリーは、
タレント、芸人の枠をこえ、
明らかにスターだった。

もらったお守りは、あまりにも重すぎた。

お守りにぎっしり詰まった愛は、東京ドームのムーブメントに冷ややかな目で見ていた私でさえも、「あなたは間違っていないの！自分を信じて！！」と語りかけられているように思えた。

イベントでもらったお守りの正体はなんとなく分かった気がするけれど、今の私が持つには、あまりにも重すぎる。

コア層も、ライト層も、ミーハーも。もちろん私のような老害でさえ。
すべての人を包み込む覚悟を感じたイベントだった。

15周年展の帰りに、宣伝Tシャツを買った。

ハスっていた自分。めっちゃダサいなぁ…w
と笑いながら、
ドーム後の東京の街を、リトルトゥースの文字とともに歩いていた。