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ベンチャー起業後10年で生存率6%という現実。イノベーター理論から読み解き、キャズムを乗り越えるために知っておくこと3つ
矢内綾乃です。
最近、はじめて起業を考え始めた起業初心者に、下記の質問を受けることがとても多くなりました。
なぜ起業しようと思ったのですか?
失敗が怖くなかったですか?
この2つ目の問について書きたいと思います。
失敗は怖くなかったかと言えば、嘘になりますが、動き出す前に下記のことを学び、確かにそうだな、と素直に実践し、今は間違いなかったな、と感じています。
失敗に対する恐怖という点では、
ベンチャー企業の創業から5年後の生存率は15%、10年後6.3%、20年後はたったの0.3%という分析結果があります。
「明日飛行機乗らない?生き残るの6人で、94人は目的地につかないんけど〜っていう飛行機に乗りますか?」
こういう書き方をすると、飛行機が途中で墜落してしまったようなイメージ与えてしまいますね。
ですが、初めて空を飛ぶ飛行機が失敗する場合は、大きく2つターニングポイントがあると思います。
1. そもそも飛べるほどの完成度ではなかった
2. 目的地まで行ける完成度を有していたが、誰も乗らなかった
現実のビジネスシーンでは何が起こっているのでしょうか。
イノベーター理論におけるキャズムとは?
まず、
イノベーター理論とは、マーケティングや技術の普及における消費者の行動を分析するための理論です。アメリカの社会学者エベレット・ロジャーズ(Everett Rogers)が1962年に提唱したもので、新しい製品やアイデアが市場に浸透していくプロセスを、消費者を5つの層に分類して説明しています。
5つの層イノベーター(Innovators: 2.5%)
最も新しい技術や製品に敏感で、積極的に試す層です。冒険心が強く、リスクを取ることを厭いません。
特徴: 技術に詳しく、最新情報を常に追い求めている。
アーリーアダプター(Early Adopters: 13.5%)
イノベーターの次に新しいものを受け入れる層で、他の人々への影響力が大きいです。社会的信用が高く、リーダー的な存在。
特徴: 製品の価値を見極め、他の層への普及を促す役割を果たす。
アーリーマジョリティ(Early Majority: 34%)
製品が一定の信頼を得た後に採用する層で、慎重に新しいものを受け入れます。
特徴: 主流市場の中核で、実績や口コミを重視する。
レイトマジョリティ(Late Majority: 34%)
多くの人が採用していることを確認してから、新しい製品を取り入れる層です。価格や利便性に敏感で、保守的。
特徴: 新しいものへの抵抗が強いが、周囲の影響で導入する。
ラガード(Laggards: 16%)
最も保守的な層で、新しい技術や製品を最後に採用します。変化を好まず、伝統を重視する。
特徴: 新しいものに対する関心が低い。
応用例
イノベーター理論は、製品のマーケティング戦略や新技術の導入戦略を考える際に利用されます。例えば、新しい製品を最初にイノベーターやアーリーアダプターにアピールすることで、口コミ効果を狙い、その後の普及を加速させることが可能です。
グラフ
この理論を視覚的に表した「普及曲線(Diffusion Curve)」は、横軸が時間、縦軸が普及率を示す正規分布の形状をしています。技術や製品が「キャズム(溝)」と呼ばれる大きなギャップを越え、アーリーマジョリティに浸透するかが成功の鍵となります。
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キャズム理論: イノベーションの初期市場(イノベーター・アーリーアダプター)と主流市場(アーリーマジョリティ)の間に存在する「溝」を超える重要性を示した理論。16%の壁とも言われます。
日本メーカーが電子書籍を普及させる事が出来なかった理由を分析した記事を引用しました。
日本では2010年が「電子書籍元年」と呼ばれていますが、電子書籍の歴史を遡ると、1990年代にソニー(1990年「ディスクマン」)やNEC(1993年「デジタルブックプレイヤー」)が専用端末を発売しているのです。
結果的に、アマゾン「Kindle(キンドル)」が勝利した原因はなんなのでしょうか。
現実のビジネスシーンで起こっている、起業の生存率を下げてしまうキャズムを乗り越えるために必要なことを、次の章で3つにまとめました。
キャズムを乗り越えるためには?
1. イノベーターではなく、アーリーアダプターと繋がる
イノベーターは、0から優れた商品やビジネスモデルを作り出す人です。
イノベーターにとって大切なことは目新しさであって、その商品やビジネスモデルがどのようなベネフィットを生み出すのかに比重がないことが多そうです。
アーリーアダプターは、そのもののベネフィットに着目し、自分は周囲にベネフィットを提供することができれば、自分のネットワークを通じて、熱心に広めていく熱意のある人たちです。
イノベーターは、誰も知らないことにモチベーションを感じるため、特許で囲ってしまって広まらず、歴史の中で消えてしまったり、
あるいは、収益化できずに、アイデアの出し損をしてしまった人たちも、史実には現れない領域ではたくさん存在しているのだと思います。
資金が尽きてしまう前に、イノベーターからアーリーアダプターにスイッチしていけるかどうかは、生存率に大きく影響を与えていそうです。
斬新なアイデアを持っている人や、大きなことをいう珍しい人に期待して飛びつきがちなケースは少なくないのではないでしょうか。
ただし、生き残りをかけるのであれば、過去ビジネスの世界での成功体験の無い起業初心者は、どの手段を扱ったとしてもうまくいかせることのできるアーリーアダプターと繋がり、メンターとなってもらい、指示を受けるのが生存率の最大化であり、最善策だと思います。
2. 起業初心者が絶対に成功したいなら、最初の一つ目で手をだすビジネスモデルは、成功実績があるものがいい
さらに生存率をあげるのであれば、成功実績のあるアーリーアダプター属性の成功者にビジネスモデルを教えてもらうか(そう簡単に仕組み・やり方・成功ノウハウを教えてもらえるラッキーがあるかはわかりませんが、、、)
あるいは、成功者のビジネスモデルの一部として働き、指導を受けるその人にもメリットのある形で成功することだと思います。
成功実績のあるビジネスモデルと、成功者からの指導を受けた場合、成果を作らないのだとしたら、ビジネスモデルでも、指導者のせいでもなく、100%自分が原因です。
自身の何かを変えなければなりません。
裏を返せば、自分を変えれば100%成功するのです。
生存率の最大化するための最善な選択の二つ目です。
起業初心者の私が、最初に大事にしたこと
☑️どんな手段を扱ったとしてもうまくいかせることのできる原理原則を体得している人と繋がる
☑️メンターとなってもらい、指導を受ける
☑️メンターと同じビジネスをし、最初の成功体験を手にいれる
何がしたいのか以上に、どうなりたいのか?
起業の目的にも方向性があり、自分自身に対して次の問いかけをし、明確に答えを出しておきましょう。
「自由にやりたいのか、自由になりたいのか、どっち?」
Do you want
to do free
to be free
Which one?
成功した上で、オリジナルでやってみたいビジネスアイデアがあれば、さらにどんどん多角経営をチャレンジしたら良いと思います!
3. ラガードに大きな声を出させない
すでにビジネスモデルに参加し、行動を起こし始めている人に向けてのとても重要なメッセージです。
ラガードには、絶対に大きな声を出させないようにしましょう。
後述でいう、否定的クレーマーとか獅子身中の蟲と表現しているものも、この属性に該当します。
ラガード:
「Laggard(ラガード)」という言葉がある。「のろま、ぐず、鈍い人、怠慢な人・・・」の訳がつく。
コストが大幅に低下しない限り、新しい技術や製品に投資することを避ける
消費者に位置する
同じ目標実現のために集まっていても、立ち位置が異なる人材が混在している場合は、場が荒れている状態です。
その場にいる人が、どの立ち位置にいるか、話している内容を聞くとわかります。
①作り手プレイヤーか
②評論的コメンテーターか
③否定的クレーマーか
私が経営で指導を受けている方は、「金の舟」「銀の舟」「泥の舟」と表現ししていました。
①作り手プレイヤー
本人にポジションを与え、周囲にもその人の話をよく聞くように言って聞かせ、プロジェクトの中核におくべき人は、①作り手プレイヤーの言動を常々している人であるべきです。
たくさん関わる人がいる中で、私が関わるべきトップ4%に選ぶ人は、この立ち位置の人物です。
②評論的コメンテーター
この立ち位置の人たちは、時として、改善を後押しする進化圧になりうるので、関係性を築いておくことは重要です。
ただし、意思決定の権限を与えてしまったり、周囲に対して影響力を持たせすぎると、成果物を作れない理屈を話し続けたり、周りを巻き込んで不可能だということを納得させてしまったりするので、とても注意が必要な人物でもあります。
悪意なく、正しいことを言っていると思っていることもままあるので、成長を待つと、作り手プレイヤーになる場合もあります。
考え方、立ち位置が変わるような育成の場に身を置くように関わりながら、忍耐して成長を待つ必要があります。
③否定的クレーマー
ダムは蟻の穴一つで決壊するように、周りをネガティブに巻き込んでいき、実現するものもしなくなっていきます。
今は調子の良いことを言っていても、友達が極端に少なかったり、前職の上司がとても嫌な人で、だからこっちがいいとか、親に大事にされなかったという被害者的なストーリーを持っている人は要注意です。
比較して、あなたたちがいいと言ってきますが、内部に入れてしまい、依存が始まると、同じように被害者的な構図を作り始める傾向がとても強いです。
経営の指導者は、このような事態を、「獅子身中の蟲を体内に飼うな」と表現していました。
わかりやすい加害者的言動をする場合と、逆に被害者的なドラマを作り出して、心配してくれる周りの人を巻き込んで害をなすので、本当に気をつけなければなりません。
最後に
あなたの頭の中に、ラガードが存在している場合も、もしかしたらあるかもしれません。
自分の中のラガードを沈黙させ、「どうやったら成功するか?」「どう在ったら成功するか?」この答えを出し、実践し、習慣にしましょう。
成功者の習慣と、成功者の在り方を手に入れた時に、精神的にも、経済的にも、人間関係も、to be free が実現することでしょう。
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私自身、まだまだ道半ばで、次の大きな目標に向かうときは、ラガードが囁き始めます。
(「今じゃない」「やらなくても結構幸せだ」「明日からやろう」など)
なんとかかんとか弱い自分を捩じ伏せて、ビジョンを実現させ続けます。