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乳がんになった私 #81「手術前日⑤-身体の一部を失っても-」
急遽病院へ呼び戻された内田が、17時前に私の病室へ到着した。
ほどなくしてS先生が私たちを呼びに来た。
入院病棟のナースステーションの中、モニターのある部屋に案内された。
S先生が画像を映し出した。
S先生「これがね、さっき撮影した画像なんだけど…見てもらったら分かると思うけど、センチネルリンパ節がね、全く写ってないんだよね。」
たしかに、全く、写っていなかった。
S先生「本来は、放射線物質を注射したこの乳輪付近から、リンパ管を通って右腋のリンパ節に流れて行くはずなんだけど…多分、元々あったがん細胞のせいでリンパの流れが断絶されてるんだと思います。」
私「なるほど…そんなことがあるんですね…!」
S先生「なので、今日のお昼に話したように、リンパ節を全部取るか取らないかを、今決めなくちゃいけないんだけど、やはり僕は取った方がいいと思います。森さんはもともとリンパへの転移も確認されていたので。もしもがん細胞が消えてなかったとしたら、それを残してしまうのは怖いので。」
私の右乳房のがんはMRIの画像上ほぼ消えていた。だけど、画像は100%ではないので、全摘を決断したのだ。
(詳しくは #72 を読んでほしい)
それと同じように、右腋のリンパ節のがんもMRIやエコーの画像上は見えなくなっていたのだが、センチネルリンパ節が写らなかったために、リンパを全て取るか取らないかを、今の段階で決めねばならなくなった。
(センチネルリンパ節生検についての説明は #78 を読んでほしい)
ああ、またこの選択をしなければならないのか。
分かってる。命のことを考えるなら、取るの一択。だけど、私は右胸の時よりも、リンパを取ることによる右腕の浮腫の心配、ピアノの演奏に支障が出ないかを心配し、少しの間、返答が出来ずにいた。取るべきだとは分かっているけど…。
S先生「自分の身体の一部を失うことは、とてもつらい決断だと思います。だけど、森さんはそれ以上にたくさんのものを持ってるから。命さえあれば、なんだって出来るから。」
なんて言葉をくれるんだろう。
涙が止まらなかった。
私「はい…はい…そうですね…取ります!」
S先生「分かりました、では、この同意書にサインをしてもらいます。」
私はダラダラと涙を垂れ流しながらサインをした。
S先生「それじゃあ、明日ですね。ゆっくり寝てくださいね。」
私「はい、ありがとうございます!よろしくお願いします!」
部屋へ戻り、内田とあらためて強くハグをしてパワーをもらって、バイバイ。
手術前夜、いよいよひとり。
その日の夜ごはんはハヤシライスだった。明日は手術が終わるまで絶食なので、しっかり食べた。
仕事の連絡が来ていたので確認をしたり、友人知人からのLINEやメッセージに返信をしたり(ありがたい)、noteを更新したり、部屋に来た看護師さんと雑談をしたりしていたら、就寝時間が来た。
生きてるなあ。
と、思った。
生きて、明日、私は手術を受ける。
不思議と緊張や不安は消えていた。この夜は、生きていることへのよろこびと、右胸に今までありがとうという気持ちで心が満ちていた。
(↓実際のリアルタイム手術前夜の投稿)
(#82へ続く)
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