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音楽に寄せて|An die Musik


Du holde Kunst,in wieviel grauen Stunden,
Wo mich des Lebens wilder Kreis umstrickt,
Hast du mein Herz zu warmer Lieb entzunden,
Hast mich in eine beßre Welt entrückt!

Oft hat ein Seufzer,deiner Harf' entflossen,
Ein süßer,heiliger Akkord von dir
Den Himmel beßrer Zeiten mir erschlossen,
Du holde Kunst,ich danke dir dafür!

An die Musik (Op.88-4 D 547)

シューベルトは大好きな作曲家の一人だ。
中でも“An die Musik”という曲は音楽と付き合っていく上でバイブルである。


大学1年の時に、
An die Musikはまだ歌わせない
と師匠に言われたのがショックだった。
メロディーラインもシンプルで音域も易しいしドイツ語の捌きだって問題ないはずなのに何故。

その意味が分からずにいると先生は
まだあなたとって音楽がDu(君)じゃなくSie(貴方)だからだよ、
と呟いた。

何も言い返せなかった。



音楽が大好きで離れられなかったからこの道を歩むことになった。
続けさせてくれた両親には感謝しかない。

節目で出会う師匠たちにも大変に恵まれてきた。
それゆえに、越えなければならない自身の中の壁もうっすら感じていた頃だ。

大学に入ってからも厳しさのあまり自信をなくす一方で、いっときは人前で歌うのも怖くなり、でも逃げ出す勇気もなくて人知れず苦しんだ時期が長い。
大きすぎる師匠に畏れ、自分の感覚の鈍さに嫌気が差し、分からないことは膨大に増えるばかりだった。
“音楽とは高尚な勉強”
と捉えることで防衛していたのだと思う。

音楽さんとわたしの間にはしばらくかなりの距離があった。
よそ行きの角度からしか向き合えていなかった。
そしてそれが自分を苦しめていた。

そこからすぐに劇的な変化があって状況が一変したわけじゃない。
亀の歩みで一つ一つ自分の中で小さな成功体験を見出しながら、
今もやれているのだと感じる。



教員に宛てた授業評価アンケートというものがある。
授業内容や態度を生徒が細分化してこちらを評価するという代物なのだが、
その項目の一つに「担当教科を好きそうか」がある。

ちょっぴり自慢になるが、いつもこの項目だけはずば抜けて評価が高い。
それをいただく度に、
まだまだやれることはあるぞ
と思う。

色々はあるけれども、
好きという気持ちが強く強くあれば
まずは大丈夫ではないか、と今は自分を甘やかそうと思う。

音楽と生涯お友達でいたい。
音楽とは高尚な遊びでありたい。



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