美術大学でアートビジネスについて教えるべきかの一考察
私は大学でピアノを専攻し、大学院入学後は、主にアートマーケティング(ざっくり言うと、アートをどうやって売っていくかの方法を考える)を研究していました。
東京藝大大学院の、私が研究してた「音楽文化学専攻」は北千住に校舎があります(藝大の本校は上野)。
とってもきれいな校舎なのですが、いつ行っても誰もいない・・・・的な感じで、なんだか疎外感を感じつつ大学院時代を送りました。
実際、藝大の中でも、マネジメント系の研究室は北千住に集中しており、学生の間では、「アートをお金にする系の専攻は、上野から追い出されている」という暗黙の認識が漂っていました(笑)。
私は激しく疑問でした。
素晴らしいアート作品を作り出す事ももちろん大事だけど、それと同じぐらい、自身のアート活動を持続的に行うために、マーケティングやブランディングをガチで学ばなくていいのかと。
周りには、素晴らしい演奏をする子も、心を揺さぶるようなすごい作品を作る子もいました。
けど、いくら素晴らしいものづくりをしても、伝わらなければ、人の目に留まる機会を増やさなければ広まってはいきません。
すんごいモノづくりをすれば自然に広まっていくとか、有名なキュレーターの目に留まってアーティストとして有名になれるとか、そんな風に考えて一心不乱に創作活動をする人たちを横目に見ながら、私は3年かけて「アートをお金にする」論文を書き卒業しました。
その後、妹の死をキッカケにガラス工芸家として生きていきたいと藝大のガラス造形研究分野で勉強をし直し、アートマネジメントの知識と経験を活かしながら自分のブランドを立ち上げ、今に至ります。
先日、久しぶりにガラス造形の教授と飲む機会がありました。
私が「在学時からアートビジネスを学ぶ重要性」を訴えると、教授は言いました。
「大学にいる4年間は、自分と向き合い、探求し、純粋に作品のことだけ考えられる貴重な時間。例えば、ブルガリやヴィトンなどハイブランドの経営論を知ることはあってもいいが、小手先にアートをお金にする方法を知るのは、どうなのだろうか」と。
雷を打たれたような衝撃でした。
今、こうやって目の前の仕事に追われ、子育てに追われ、自分の時間を確保するのもままならない生活をしていると、自身と向き合う時間を取るのは至難の業です。
だからこそ、確かに私にとって学生時代に一心不乱にピアノを練習したこと、私だからできることは何かと、作品や論文を通して見つめたことは、今大きな資源の一つになっています。
確かに、美大生音大生(特に藝大生)は学生4年間でひたすらアーティスト活動を探求し、卒業して、ハッと気づきます。
「ヤバい、どうやって生活していこう(笑)」
けれど、そこから、アルバイトと並行してお金を稼ぐ方法を模索していき、細々とでも制作しながら生きていく人が多くいます。
そう考えると、別に卒業してから「小手先を学ぶ」のでも全然良くて、だからこそ、うちの会社で、卒業後のアーティスト活動を少しでもサポートできたらな・・・と思い、せっせと美術館に、若手作家の子を紹介するのでした・・・✨