髪を染めるかわりにロックを聴く
"髪を染める"
それは自分を変えることのできる手段のひとつ。
初めて髪を染めるときはかなりの勇気がいる、はずだ。
長い髪を切るときだって多少は思いきりが必要なのだから、染めるときは尚更だろう。
断定できないのには訳がある。
何を隠そう、私はまだ一度も髪を染めたことがないからだ。
そう言うと、珍しいという反応が返ってきたり来なかったり。
そんな私でも、髪を染めたい、つまりは自分を大きく変えたいと思った時期はあった。
それは、大学生の時。
いわゆる大学デビューという言葉に近いかもしれない。
クラスメイトや先輩、友だちなどの髪色がどんどん変わっていくのを見て羨ましくなった。
『私もあんなふうに変わりたい』
そう思ったはいいけれど、いざ髪色を変えた自分を想像してみてすぐ、その気持ちは萎えてしまった。
昔から外見に自信もなく、大人しいと評される顔立ち。
そんなやつにどんな色が似合うか、分からなかった。
美容室で相談しても、無難な色を提案されてしまう。
多少の変化では意味がない。
変わるなら大きく変わりたかった。
そんなとき、いつものようにCDのレンタルコーナーを訪れた。
音楽を聴くことが好きなのは今も昔も変わらない。
あの頃は好きな音楽を聴くためにCDをレンタルしていた。
当時はJ-POPと呼ばれる類の音楽をよく聞いていて、その日も好きなアーティストの過去のCDを借りるためだったと思う。
借りようと思っていたアーティストの向かい側。
いつもは聴かないロックなアーティストが目に留まった。
ロック。激しい響き。
私のような大人しめの人間がロックを聴いているといったら驚かれるだろうか。
いや、他人がどう思うかよりも、自分の中に新しい変化を求めているほうが大きかった。
『よし、聴いてみよう。』
新しい選択にドキドキしながら、ロックなCDを手に取った。
家に帰って、パソコンにCDを取り込んで初めて響いたロックの音。
これが求めていた変化だと思った。
それはまるで、探していたパズルのピースがハマったような感覚。
それが、私とロックミュージックとの出会いだった。
"変わりたい"
そう望んでいた思いも、ロックを聴くことで満たされていった。
外見のように他人から分かるものではないけれど、自分の中で確かに起こった大きな変化。
そのとき、変わったことを誰かに知ってほしかったわけではなく、ただ"変わりたかったんだ"ということに気がついた。
『#髪を染めた日』
このテーマを見たとき、今回のnoteのタイトルを思いついた。
"髪を染めるかわりにロックを聴く"
私にとっての髪を染めた日はロックを聴きはじめた日。
-おわり-