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駐在のお作法
今週1週間はかなり激動で、ゆっくり執筆する時間も持てませんでした。
というのも親会社から日本人社長が来ていて、今後チームを再編成することや子会社方針の立て直し・確認のための会議が連日行われていた為。この1週間で私は正直言ってがっかりする経験をし、改めて「日本人が外国で生きる難しさ」を再確認しました。
子会社のある土地現地での採用者と親会社のある本国からの派遣・駐在員との軋轢、というのは珍しくなくある話だと思っています。うまくやっていくための方策としては、力を持っている親会社が頭ごなしに価値観を押し付ける方法もあるのかもしれませんが、状況やお国によってはそれが許されない・それでは上手くいかない組織もあると思います。人数比、従業員個人の能力、子会社が持っている力の割合などなど…
実例で言うと、私の前職は日本政府絡みだった為に職場は「海外に越してきた日本」と言う感じ・現地採用ドイツ人も8割は日本語話者でしたので、社内ルールなどは日本勢力優勢な印象は受けました。ですが生憎、日本のお役所風価値観は全く受け入れてもらえずローカルからは反発が大きくて、結果非協力的なローカルの尻拭いを日本人駐在がする。日本人駐在はローカルには強く出れないと言う構図になっていました。今回の会社についていえば、ドイツ人ローカル60人に対し駐在は3人、20年前に買収された時から社名が変わり子会社になりましたがその前から同社は長く存在していた(しかも強めな)販売店だったために前滓が色濃く残っている、それに対し駐在が送り込まれたのはようやく7年前から&その人は失敗しコロナを名目に帰国させられたというプレヒストリーがあります。で今いる駐在3人は2023年3月と7月にそれぞれ送り込まれたメンバーで、2024年12月現在調和していない&ギクシャクしている。
こういう状況を鑑みたとき、私ならば「日本人側が低姿勢でドイツに歩み寄る」という姿勢をとります。上記を踏まえれば至極ナチュラルなストーリーかと思います。
なのに日本人社長がこの1週間で下した&駐在が賛同した結論は「日本風の働き方を色濃く反映した昭和メッセージをドイツ人従業員に公開する。からテキストを翻訳せよ」と言うものでした。
で受け取ったメッセージが…まあひどい。昭和の根性論炸裂。例を挙げると「Noは言うな」「言われた以上の仕事をこなして返上しろ」などなど。
この状況わかってんのかな???と悶絶しました。それで私は「今こうしたメッセージを伝えるのは逆効果では」と問題を提起したところ、子会社を外から見てるだけの社長だけならまだしも、1年半現場で働いている駐在員も「何故?本社の想いをわかってもらうためのいい機会だ」の一点張り。先日も書いた通り、新生活で疲れ切ってる私なので4対1の多勢に無勢で、もう反論する元気も無くなって。
なんて愚かな親会社なんだろうって思ってしまいました。そしてがっかりした。でも同時に私の思考も振り返るきっかけになった。
私はドイツ語をやってかれこれ19年。もっと上手になりたい、と夢中で勉強を重ねてきました。なので正当な滞在許可を持っている今でも「ドイツにいさせてもらっている」と言う気持ちはどこかにあるし、ヨーロッパにおいては日本人は弱者になりがちであるという価値観をこの長い「ドイツとのコンタクト」の中で常に持ち続けています。なので「相手を理解しよう」「折り合わなかったときは自分が誤っていることが多い」と考えがち。郷に入っては郷に従えです。
そう言う想いって、駐在さんってないのかな…?どこもそうだと思いますが、駐在の給料はローカルの比ではなく、社用車や家賃補助などの手当も厚く、そこらへんがローカルとの歪みの原因にもなっていると思います。「恵まれている」立場にいると言うことや、「親会社から来ているのだから、子会社の人間より知識もあり優れていて有能であるべき」と思っているローカルもいる、と言うことは自覚があるのか。そこら辺を気にしないと、ローカルに嫌われるのは目に見えている、と思うのです。少なくとも前職では駐在がそれはまあやり過ぎなくらいにローカルをたてていて・それでバランスが取れていました。
そういうバックグラウンドのある私からすると、今回の日本人チームの決断は残念としか言いようがなく・また私の意見を聞いていただけなかったこともショックでした。彼らの方針によって、唯一のドイツ語話者である日本人のローカルスタッフの私が、現状ただでさえ日本人を信用していないドイツ人に対し、更に居心地の悪さを覚えること等慮ってももらえないんだなって。
言葉が通じる日本人なのに、全く感覚が分かり合えないことほど悲しい事はないです。だったら駐在などいないで全員ドイツ人に囲まれた、孤独な状況の方がまだ良かった。
今週は泣きすぎました。ゆっくり寝ます。