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新型コロナウイルスの難民への影響

新型コロナウイルスの世界的な流行が、私たちの生活に大きな影響を与えています。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、新型コロナウイルス国内感染が報告されている100カ国を超える国々のうち、34カ国で2万人以上の難民が住んでいます。

ウイルスは差別しない!?

Covid19に限らず、感染病は難民と地元民を区別しません。だから、難民も市民も両方を含んだ対応が、感染を防ぐために必要です。例えば、私がインドで勤務していた時のことです。ある町の多くの難民が住む地区で、何人かの難民が続けて高熱に襲われ、これは感染病ではないかと疑われました。そこで、地元でも、また首都のデリー でも、WHOを通じて地域の保健局に対応していただくようにお願いしました。WHOと保健局は、迅速に、難民にも市民にも対応してくださいました。おかげで、感染者がごく少数のうちにおさまり、また、感染者の症状も重篤にならずにすみました。

新型コロナウイルス の影響は、世界的なものとなり、感染防止のために人々の移動が、大きく制約されています。また、手洗いやマスクの着用、人と人の間隔を開ける、などが奨励されています。難民状況ではどのようなことが起こるのでしょうか?

混み合う住居、貧しい衛生環境

日本の多くの人が、バングラデシュのロヒンギャ難民キャンプの写真を、ご覧になったことがあるのではないでしょうか?たくさんの難民がきゅうきゅうに住んでいます。また、世界中、衛生環境の貧しいところで、難民がたくさん住んでいます。そのような中での、手洗い、人と人との間隔を開ける、ということはかなり難しいように思えます。結果、難民にとって、新型コロナウイルス感染のリスクは高い、ということが考えられます。

庇護へのアクセス、解決への道

人の移動の制限は、私たちの経済や暮らしだけでなく、国際保護を必要とする人たちに深刻な影響を与える可能性があります。迫害や紛争によって故郷を逃げてきた人が、別の国へ入国することが、一段と厳しくなることも予想されます。

さらに、難民となった人たちへの解決の一つ、「第三国再定住」については、現実の問題として現れています。第三国再定住というのは、難民として、ある国(庇護国)に住んでいる人が、その国で十分な保護を受けることができない場合、そして、別の国が受け入れに合意した場合、その第三国に移り住むことをいいます。例えば、アメリカ、カナダなどが、現在の主な第三の受け入れ国となっています。

その第三国再定住(第三国定住と書いている説明もある)の受け入れの決まった難民の人たちが、実際に渡航できなくなっています。UNHCRとIOMは、いくつかの国が第三国再定住を中断している、と報告しています。第三国再定住は難民にとって、重要な生存のための機会であり、両団体は、緊急なケースは、特別に継続して受け入れしてほしいと要請しています(https://www.unhcr.org/news/press/2020/3/5e7103034/iom-unhcr-announce-temporary-suspension-resettlement-travel-refugees.html?query=covid)。

情報の流れ、就業機会

日本の難民支援協会(JAR)は、難民申請者や難民が、ウイルスについての情報を持っていなかったこと、また、就労許可をもらったものの、アルバイトの時間を減らされたり、採用の話が立ち消えになったケースについて報告しています。JARは社会的に弱い立場にある難民への影響を懸念し、支援を訴えています。(https://www.refugee.or.jp/jar/report/2020/03/19-0000.shtml)。

また、私が以前に働いた国の元同僚からも、ロックダウンのために難民が働きに出ることができず、さまざまな困難を抱えている、というメッセージが来ました。市民の中でも日雇いの仕事をしている人々にとって、一日働けないということは直接の収入減になるでしょう。難民も同じで、その国では大多数の難民が、「貧しい」または「非常に貧しい」状態にいることがわかっています。ロックダウンの期間中働けないのは、死活問題になりかねません。

国際社会からの反応

このような中で、国連事務総長のアントニオ・グテレスは、Covid19対策に関して、20億ドルの人道支援を加盟国に要請しました。これは、医療制度が脆弱な国を支援する目的です。世界の難民の84%が中進国、途上国に住んでいる現在、その受け入れ国を支援する政策は、難民支援にも重要な意味を持ちます。

また、国連難民高等弁務官のフィリポ・グランディは国連人権高等弁務官ミチェル・バチェレと共に、Covid19対策が全ての人にー高齢者・弱者に、女性・女子に、難民・移民にーいきわたることを訴えています(https://www.unhcr.org/news/latest/2020/3/5e69eea54.html)。また、UNHCRは、3月23日、イランに新型コロナウイルス対応支援として、マスクや手袋などの空輸しました。

国境なき医師団も、ギリシャの島々に住む難民の感染リスクの高さ、より適切な居住地への移動の必要性を訴えています (https://www.msf.or.jp/news/detail/pressrelease/grc20200313.html)。

ノルウェー難民評議会(Norwegian Refugee Council NRC)は、もう一歩踏み込んでいます。新コロナウイルスの感染拡大に関して、難民や移民を不当に非難しているとして、ヨーロッパの政治家を名指しで批判しているのです(https://www.nrc.no/news/2020/march/10-things-you-should-know-about-coronavirus-and-refugees/)。公衆衛生の観点から感染経路を調べることとは別に、悪者探しの結果、不当に非難されるのは、概ね社会的に弱い立場に置かれた人たちです。1980−1990年代に、HIV感染について娼婦や同性愛者が非難されたことが思い出されます。NRCの発言は、非常に勇気のあるものだと感じました。

人道支援者のメンタルヘルス

最後に、私も最近までそうであった、人道支援の現場の人たちについて書かせてください。人道支援者は、厳しい環境で働くことがしばしば。私の最後の任地であるインドは、社会経済が発展しており治安も保たれている場所が多く、私たちの私生活に支障はありません。けれども、紛争地や極端に治安が悪いところー私が赴任したところでは、アフガニスタン、コソボ、イエメンーでは、人道支援をする人たちの行動に、安全面の配慮から、大きな制限がかけられています。仕事での移動制限は、とりも直さず、援助が必要な人たちに援助をすることができない、ということになります。また、休日に出かけることはおろか、日用品の買い物もままならないほどでした。

そのようなところで働いていると、イライラしたり気分が塞いだりしがち。職員の精神衛生上、ほとんどの団体が、リラックスするための特別休暇を、定期的に設けています。特別休暇中、職員は自国に戻ったり、外国に出かけたりします。実際、特別休暇の一週間くらい前になると、がんばりの限界に近づき『這うようにして』働いてる、という気分になったものです。新型コロナウイルスによる渡航制限が厳しい今日、現場で働く人たちは、特別休暇が取れていないのではないかな、と思いをはせています。

タイトル写真はUNHCR日本のウェッブサイトより、https://www.unhcr.org/jp/24813-ws-200312.html 

今日の私

60の手習で始めたお茶のお稽古。6ヶ月経ち、入門のお免状をいただきました。コロナの影響でお稽古もお休みでしたが、U先生とI先生が、修了式の機会を作ってくださいました。感謝。また、心温かいお仲間に出会えて、お茶のお稽古に行くと、素直に感謝の気落ちが湧きます(普段は忘れている…)。いつもより真面目な着物を着ています。一つ紋の叔母の着物と母の帯。

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