「治る」

「なにかが治っていく過程というのは、見ていて楽しい。季節が変わるのに似ている。季節は、決してよりよく変わったりしない。ただ成り行きみたいに、葉が落ちたり茂ったり、空が青くなったり高くなったりするだけだ。そういうのに似ている、この世の終わりかと思うくらいに気分が悪くて、その状態が少しずつ変わっていく時、別にいいことが起こっているわけではないのに、なにかの偉大な力を感じる。突然食べ物がおいしく感じられたり、ふと気づいたら寝苦しいのがなくなっていたりするのはよく考えてみると不思議なことだ。苦しみはやってきたのと同じ道のりで淡々と去っていく。」

-よしもとばなな『ハネムーン』

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