【勝手にスピリチュアル】本物かもしれない偽物の魔力
「お母さん、財布失くした」
(°∀°)ヒィィィィ
あれは確か2月の終わり、離れて暮らす20歳の息子からのLINEだった。
「気付いたら失くなってた。おとといスーパーに行った時はあったんだけど、その帰りかなぁ、、、」
マジで頭が痛くなった。
「とりあえず交番に届けて、今日は午後から学生マンションに来るんでしょ?電車賃はあるの?」
「はい、モバイルSuicaに2000円程あります」
あー、頭が痛い。本当に世話の焼ける息子。
私が1人頭を抱えていたら夫に言われた。
「やっぱりあなたにソックリだよ」
ゲッ!
確かに、、、
いてもたってもいられない私は、そそくさとサンドイッチを作って、雨がザーザーとふりしきる中息子の学生マンションに向かった。
数日ぶりに会った息子は、、、
なんか痩せてる
私はサンドイッチを差し出すと、
「ありがとう。おとといから何も食べてないんだよ」
この子はそういう子なんだよ。
コロナで熱が41℃出た時も、ひたすら1人で耐えてたんだよ。
息子がサンドイッチをムシャクシャと食べている間に、私はサッと代わりの財布を差し出した。
「こ、これは、、、GU○CIですか?」
「いや、今となっては本物かニセモノかはわからないんだけど、、、ただこれは、お母さんが19歳の時に中国返還前のホングコング(香港)で買った財布なんだよ。確か免税店で15000円だったかな。当時は1ドル70円台の空前絶後の超円高だったからね」
「じゃ、じゃあコレは偽物か、、、」
「コレが本物かニセモノかなんて、今はそんな事はどうでもいいんだよ」
「じゃ、じゃあこれは」
「この財布はね、、、お母さんが20歳の時に友達とスノボに行って落とした財布なんだよ。その時は見つからなくてさ、友達に餞別を貰いながらスノボ旅行を過ごしたんだよ。確か行ったのは12月だったかな、、、それが雪解けの5月にスキー場から郵送で送られてきたんだよ。中身はそのまま全部入ってて、その時にお母さんは人の優しさと親切心を知ったんだよ」
「へー」
「アンタも確か、明後日からまたスノボに行くんでしょ?この財布をお守り代わりに持って行きな。それで祈るのよ、財布が見つかりますようにって。お母さんも毎日祈っておいてあげるから」
「うす」
「ちなみにお母さんも酔っ払って財布落とした時に、この本物だかニセモノだかわからない雪解けの財布を使ったら出てきたのよ。だからね、この財布にはそんな魔力があると思ってるの」
「うす」
息子はサンドイッチを食べ終わると、差し出した本物だかニセモノだかわからないGU○CIと書かれた財布をパカっと開けた。
そして中身の1万円札を見て驚く。
「こ、これは、、、あ、あざっす」
「そう、お母さんは甘いの。結局お母さんはお兄ちゃんには甘いのよ。スノボ、楽しんできなさいね。でも財布が出てきたらもれなく返してね」
「うす」
その後無事に息子はスノボに行き、平野歩夢並の華麗なるジャンプ動画(跳ね上がり高さ数センチ)も見せて貰ったから、財布が無いなりにも充分楽しめたのだろう。女にモテず、女に声をかけず、男だらけの水泳大会でも充分楽しめたのだろう。
よかったね
帰宅しても相変わらず財布は出てこなかったから、半ば諦めてクレカやキャッシュカードを再発行した所、、、
「ありました」
あったんかーい!
「ゴミ屋敷を掃除してたら、パンダのぬいぐるみの下にありました」
あったんかーい!
でもよかったよかった
私は、やはりこれはあの「本物だかニセモノだかわからないGU○CIと書かれた雪解けの財布」のおかげだと思っている。
きっとこの財布には魔力がある。
もし、
これを読んだ方で財布を失くしてしまう事があった時は、私がこの「本物だかニセモノだかわからないGU○CIと書かれた雪解けの財布」をお貸ししますね。
念じていればきっと財布は戻ってくるから。
この財布にはそんな魔力があると思うから…
もちろんその時は中身に1万円札は入れないけどね。
ということで、
最後に見つかった息子の財布の画像を貼っておきますね。
まったく学生の身分で生意気なんだよ!