
息子のアパートを決めるの巻 後編
前回の続きです。
学生マンションのエントランスを訪れた私と息子、それを見て・・・
おおお、こ、これは・・・
自転車置場がカオス状態
「これは酷いね。秩序が保たれていないというかなんというか。まるで一昔前のニッポンを思い出すよ。こんなんだった。自転車の上に自転車、そのまた上に自転車…」
「ってそこまでじゃねーだろ」
「そ、そうね。ただ、無秩序は感じるよね。これが学生マンションってヤツよ。ここに入るヤツのお里が知れてるってヤツよ」
そこで息子がスマホをポチポチと操作した。
「ちょ、学生マンションの口コミ開いてみたけど…オーナーが人間じゃないって書いてある。怖さしか感じないんだけど」
「まぁ、口コミは闇っぽい人が書いてるからね。それにしてもオーナーが人間じゃないって何?妖怪なの?」
「そんなん言ったらさ、あの営業マンの鼻マスクの中身からも闇を感じたんだけど」
「小山ね…
ってかアイツどこ行った?車止めに行ったけど遅くないか?」
・・・
「お待たせしましたー」
あ、来た。闇営業マン小山。おせーよ、どこまで車止めに行ってんだよ、事前に調べとけっつーの。
「こ、この自転車は、、、」
どうやら鼻マスク小山もまた、無秩序な自転車の山に驚きを隠せなかったようだ。
「酷くないですか?」
「ま、まぁ、学生ですからね。でもエントランスまでが日本庭園みたいじゃないですか?」
確かに、なんだかわからないけど自転車の無秩序さと反比例してエントランスまでのアプローチが日本庭園ばりの風情がある。
なんなんだよ、この学生マンションは!!
「1Fのこの部屋になります」
薄暗!!!
めっちゃ薄暗い。
笑っちゃうぐらい薄暗い。
冷蔵庫小っさ!!!
ビジネスホテルの冷蔵庫かよwww
収納の位置、高っ!!!
175センチの息子ですら届かない収納、これ意味あんの?
下駄箱大きすぎだろっ!!!
壁一面のシューズボックス、靴がこんなにあるんかい!!!
とりあえず、ダメ出しをしまくりながら内見をしていると、息子がポツリと言った。
「ミニマリストになろうかな」
???
なんだこの発言は。
気になりながらも薄暗い学生マンションを後にした。
・・・
2軒目、Bの小規模マンションに到着。
「ちょっと近くに車停めてきますので物件の前でお待ち下さい」
出たよ。だから事前に調べとけっつーの。
もう15分も待ってんだけど、小山はどこまで車を停めに行ったんだか。
そしてようやく中に入ると、3Fの角部屋南向きなのでめちゃくちゃ日当たりがいい。
「おぉぉぉぉ、これだよ。やっぱり人間は日に当たらないとダメよ」
私は日当たりの良さに感動を覚える。
「いいんじゃない?今住んでいるところとほぼ間取りも同じだし、収納も十分あるし、家から近いし、日当たりは抜群だし」
小山も薦める。
「いいですよね。ここは穴場物件だと思いますよ。家賃も安いし御自宅からも近いですよね」
ほぼほぼ決まりかと思われたけど、なぜか肝心要の息子の顔が曇っている。
「うーーーーーん」
な、何を迷うことがあるのだろうか?
1軒目の学生マンションとは雲泥の差なんだけど。
「うーーーーーん」
・・・
3軒目のCのロフト付きアパートに到着。
「このコンビニに車を停めますので物件の前でお待ち下さい」
広い駐車スペースがあるコンビニで降ろされ、私と息子は物件の前で待っていると、
「お母さん、ちょっとアレ見て」
息子が指さす方向を見ると、小山が広いコンビニの駐車スペースに車を停めようとして、四苦八苦しながら何度も何度もハンドルを切り返してる。
「アイツ、運転下手すぎるだろ」
「お母さんに言われちゃ、終わりだよね」
・・・
小山がようやく四苦八苦駐車を終え、3軒目のロフト付きアパートへ
「2階になります」
って、廊下狭っ
「玄関ドアがギリギリだし、人と人とがすれ違いが出来ない狭さだねぇ。何よりもデブには窮屈だよ」
入るや否や、そこまで狭さは感じないけど、アパートなだけに簡易な感じ。それにしても、息子が住むイメージが湧かない。なんつーか、もっとこう、こういうアパートって華奢で痩せてる人が住む感じ?
とりあえずロフトに上がってみることにした。
壁に掛かっているハシゴを見て、
「すみません。これ、ハシゴからロフトまで距離があるんですけど、登ってから上で飛び移る感じですか?」
「あ、あの、、、このハシゴは壁に沿って登る訳ではなくて、ロフト側にこうして立て掛けて登ります」
壁にかかっているハシゴをロフトの縁にかけ直す小山。
「え?」
「お母さんバカだろ?飛び移る訳ないじゃん」
「あ、そういう事ね。私、忍者みたいに上で飛び移るのかと思ったわ。やだ、そんな訳ないわよね、全くSASUKEじゃないんだからね。アハハハハ~」
「お、お母さん、、、」
「ア、ア、アハハハハ」(鼻マスクの下で苦笑いする小山)
いつもはツッコミ一辺倒の私でも、こんな風に本気でボケる時もある。
そんなロフトに上がる息子を下から見つめる私。
尻がデカい!
デブにロフトは似合わない!
そう吐き捨てると、
「落ちたらこえーから無しだな」
ということで、ロフトの部屋を後にする。
・・・
3軒内見した結果、車内で息子の出した答えを聞いてみた。
「学生マンションでお願いします」
ようやく小山の運転にも慣れた所なのに、またつんのめったわよ。
なぜ?なぜ?学生マンション?
「普通なら2軒目にする所なんだけど、、、なんかつまらないんだよね」
え?どういうこと?
「住む事に想像が出来るからつまらない」
じゃ、なんで学生マンション?
「うーん、、、ネタになるから」
え?ネタ?
「あの小さい冷蔵庫に何入れるのかわからないし、あの届かない収納もどう使えばいいかわからないし、あの下駄箱にはもはや靴以外のものを置くことしか想像出来ない」
アンタナニイッテンノ?
「ただ、オーナーが人間じゃないってのがこえーんだよな」
だからアンタナニイッテンノ?
「住民が学生ってのもこえーけど」
は?
「とにかく学生マンションでミニマリストになりたい」
ちょ、ちょ、ちょ、ちょ!
意味わかんないんですけど!!!
っというわけで、息子の「一人暮らし第二章」は、築60年の人間じゃないオーナーがいる薄暗い学生マンションに決まりました。大丈夫か?
ただこのアパート探しで私が感じのは、
うちの息子って、ちょっと変なヤツだな
と思ったのです。
*
明日、2年ぶりに息子のゴミ屋敷を訪れる予定です。
「ハムスター飼おうとしてゲージがそのままになってる」
「アコースティックギターと、エレキギターと、アンプ諸々があるんだけど、全部捨てようかな」
「冷蔵庫の冷凍庫が開かずの扉なんだけど」
今から恐怖の館です。。。