親愛なるジュンコへ 4/8話
4 消えた純子
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純子が消えた
携帯に電話をしても「ただいま使われておりません」とコールされるだけだった。私は純子の自宅に電話をしたが、お父さんや弟が出て素っ気なく「いません」と言われるだけだった。
純子はどこに行ったのか?
私は宮沢とイケに電話をした。
2人からは「おまえが知らないなら俺たちが知る訳ないだろ」と言われた。アフロカズヤにも電話をしたがアフロカズヤは「ハァ?俺は広田に金貸してるんだけど。いなくなるとか何?ふざけてんの?平山、広田に連絡取れたら俺に金返せって言っといて」とまで言われた。
それから何度も純子の家に電話をかけたが、何度も同じ対応だった。
いったい純子はどこに行ったのか?
そんなある日、純子の彼氏だと名乗る男が私の家にやって来た。
「アヤPさんですか?純子どこにいるか知りませんか?」
知らねーよ、こっちが知りたいよ。ってか、おめー誰だよ、なんでウチを知ってるんだよ。ってか「アヤPさん」ってなんだよ。
純子はどこ行ったんだよ、どこに行ったんだよ!!!
よくよく考えたらうちに来た彼氏と名乗る男は、純子の彼氏2だった。
BBQでイケに相談していたのが彼氏1で、別のルートから彼氏3も純子を探しているとの話を聞いた。
純子、アンタなんなんだよ…
と思ったが心配だった。ただただ私は純子の事が心配だった。
私は何度も純子の家に電話をかけて事情を知ろうとしたが、いつもお父さんや弟から「いません」の一言で電話を切られた。そこで私は食い下がらずに「ジュンコさんは元気にしているのでしょうか?」としつこく聞いたら「一応生きてます。でもどこにいるかは知りません」と伝えられた。私はもう純子の家に電話をかけるのはやめた。
それから何年かは純子抜きでも集まっていたが、いつも仲間達に会うと聞かれる第一声は「広田から連絡来た?」だった。しかし私はそれに答えられることは一度も無かった。そして私達はもうあの頃のように、みんなで集まらなくなっていった。
*
純子が目の前からいなくなって6年が経った
2003年
私は27歳になったばかりの夏、大きなお腹でバスに乗っていた。
後ろから声を掛けられた。
「アヤP?」
純子だった。6年前に消えてからプッツリ連絡が途絶えた純子だった。
「ちょ、ちょ、ちょ、ジュンちゃん!」
私たちは久しぶりの再会に盛り上がった。
バスの中で大声でしゃべり、近況を報告し合った。
純子は今までどこにいたのか?
彼氏1と静岡で暮らしていたとの事だった。
失踪する少し前、彼氏1の度重なる浮気に愛想を尽かした純子は、かつて私の家まで押しかけて来た彼氏2に乗り換えることを彼氏1に話した。するとそれを聞いた彼氏1が逆上し、純子の自宅で包丁を持って暴れ、そのまま純子を彼氏1の実家の静岡に拉致したとの事だった。彼氏1は例のミカの元セフレで自動車整備工場に勤める男だった。
その彼氏1とは5年間、彼氏1の実家の近くで同棲を続けていたが、結局別れて1年前に地元に戻ってきて、またお父さんと弟と3人で暮らしているとの事だった。
なんで連絡が取れなかったのか?
当時、着の身着のままで連絡先も何も持たずに男の元に行ったから、と言っていた。
純子は全てを捨てる程彼氏1の事が好きだったし、彼氏1も純子の事が死ぬほど好きだった、お互い若かったと言っていた。
なんで別れたのか?
その問いに対して純子がはぐらかしたのは気になったが、私たちはバスの中での20分間、お互いの事とかつての仲間の話をした。
マキさんはスーさんと別れてネオミと結婚して、宮沢は料理人をやりながらかわいい彼女と同棲してる。イケは不動産会社で働いていたのに辞めて半ばパチプロになってる。アフロカズヤは証券会社でサラリーマンやってる。イケメンヒロミは一時Jリーグの2軍にいたみたいだけど、今はサラリーマンかな。1年前にクラブでナンパした女をやり捨てした事は聞いたわwww
そんな話で盛り上がり、バスが純子の降りる停留所に着く前に、私達は携帯の番号を交換した。
「ジュンちゃん、もう黙って消えないでね」
「アハハ、わかった。アヤPも元気な赤ちゃん産んでね」
それから私たちは、またちょくちょく会うようになった。
純子は子ども向け英語教材の営業の仕事の傍ら、私の家に寄るようになった。私は子どもを産んですぐだったので、純子が家に来ておしゃべりをしてくれるのが嬉しかった。
「また皆で会いたいよね」と私は言ったが、純子は「いやー、私はお金借りたりしてるし、もう無理かな」と言ったから「ちょっと!私の靴と服も借りパクしてるよね?」そんな話も今となっては笑い話だった。
今後は落ち着いた関係を築けていけると思っていた。
しかし、私はこの後純子の全てをシャットアウトすることになる。
それは、純子から彼氏1との別れた経緯を聞いたからだった。
「お互い好きで好きで仕方がなかったのになぜ別れたの?」と聞いたら、「子どもが出来たんだよ。でも降ろした、降ろすしかなかった。」
その言葉は、子どもを産んだばかりの私にとってはどうしても許せない言葉だった。純子は「お金が無かった」とか色んな理由を付けていたけど、私はどうしても純子が許せなかった。
なぜなら、純子の堕胎は私が聞いた限り、もう4回目だったから。
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