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【昔話】セクシーな男になりたかった男の話 前編

なんか変な気分なので昔話を一本書きます。

四半世紀以上も前の話ですが、瑞々しい気分になれたら嬉しいです。気持ち悪くなったらメンゴねw

これは私が短大時代の話。

当時私は個人塾の講師のバイトをしていた。
(あまり自分のキャラに合っていない短大に通っていたので、塾の講師をつとめる事ができてました。あしからず)

どこにでもある西東京の個別指導塾だったけど、講師陣はバイトリーダーの現役東大生を筆頭に、東工大、W大、K大、と頭がいい人達ばかりに囲まれていた。こんな人達と一緒で大丈夫かと思ったけど、頻繁に飲みに行くようになり自然と仲良くなっていった。(また酒かよw)

そのメンツの中で、特に気が合ったのがW大に通っていた同い年の西沢君だった。西沢君は濃い系のイケメン(今思えばね。当時はタイプじゃなかったからあまり思わなかったw)、性格は硬派で低音ボイスが特徴的だった。最初はなかなかとっつきにくい人かと思ってたけど、こういう何かを内に秘めた人をほじくり出すのを得意技としていた私は、飲み会の頻度が高くなるにつれて徐々に仲良くなり、ついには西沢君が陽気な毒舌キャラであることを発掘した。
「俺は本当はこういうキャラじゃないんだよ!」と言いながら、ノリノリで変顔をしたり変ポーズをしたり英語の変発音をしたりして、この私のバカなノリに付き合ってくれた。西沢君は本当によく一緒にふざけてくれた。

短大2年生になり、1つ歳下のK大の女子2人が加わって遊ぶ頻度は増した。女子3人男子4人のグループで、飲み会やバーベキュー、花火やドライブ、泊まりのスノーボードにも行ったりした。

そんなある日のこと

「自分が生徒だったら誰に教えて貰いたいか?」

という話になり、

名だたる大学に通う講師陣たちが、「英語は○○」「数学だったら○○」と、それぞれの名前を出しながら、私も確か東工大に通う男子を指名したと思う。そんな中で西沢君がボソリと言った。

「俺は・・・平山なんだよなー」

そこで一同爆笑が起こった。
W大の男子が短大生の私に何を教えて貰いたいのか。

「俺もよくわかんないんだよ。一体こんなヤツに何を教えて貰いたいのかは。自分でも本当にわからないんだけど、俺は俺が生徒だったら間違いなく平山を指名する」

その場にいた1人が、

「西沢マジかよw」

と笑いながら言うと、

「英語は平山、数学も平山、国語も…全教科平山一択。なんなんだよ俺はー」

また笑いが起きた。

ギャグの一つかと思ったけど、その時の西沢君の言葉がとても印象に残った。

西沢君は優しい訳でもなく、気が利く訳でもなく、決して私に気がある訳でもなかったけど、友達として私を好きでいてくれたのはわかった。

それは西沢君本人もよく言ってたし、塾の中でも「西沢の平山好き」は公然としていたものだった。そのうち西沢君が仲間のうちの一人であるK大の女子と恋人関係になっても、その彼女ですらも「アヤちゃんは特別」と認めていた。「アヤちゃんとなら2人で会っても構わない。身体の関係があってもアヤちゃんなら許せる」と、そんな事は勿論無かったけど、私と西沢君の仲は恋人すらも認めている、全く不思議な関係だった。



そうそう、
西沢君はよく

「セクシーな男になりたい」

と言っていた。若干20歳の男子がセクシーかと笑っちゃうんだけど、私は西沢君の話に真面目に付き合った。

「どうすればセクシーな男になれるのか?」

という議題に対して、私達はバカみたいに深く話し合った。そのうち周りの皆はあまりにくだらなすぎて別の話になるのだが、私達はしつこく話し合った。
セクシーな喋り方、セクシーな飲み方、セクシーな歩き方、セクシーなポーズ、セクシーな発音、最後はただ「セクシー」と言いたいだけになったりして、それもまた楽しかった。

そういえば、
西沢君が私の車を運転していた時にこんな会話をした事を覚えている。

「平山、この車ってアクセルが効くまでの遊びがあるね。結構踏まないと加速しない」

と言ったので私は、

「西沢君、その遊びって言い方、ちょっとセクシーじゃない?」

「はい出たセクシー。平山、続けろ」

「いや違うな、遊びという言葉自体がセクシーなのかもしれない。なんて言うのかな…遊びって余裕っていう意味だよね?余裕という言葉を遊びと表現する所に、そこはかとないセクシーさを感じるんだけど、西沢君どう?車のアクセルの遊びからのセクシーって、どうよ?」

「遊びがセクシー…確かに、遊びは英語でplay…そう考えるとセクシーだわ。いいねー、やっぱ俺平山の言葉の感性好きだわ」

(どんな感性だよw)


時が流れた

私は一足先に卒業し就職した。
バイトのメンバーは、当時就職難であったにも関わらず、大手新聞社、大手鉄道会社に決まり、西沢君は財閥系の商社に就職した。一方西沢君の恋人だったK大の彼女は、最大手の外資系IT企業に決まったが、それと同時に2人の仲は破局した。

破局の理由は、西沢君が振られたと言うことだけを聞いていたが、それ以上は話したくないと言っていたので聞かなかった。

バイトのメンバーとは徐々に会わなくなっていったが、私はたまに西沢君に電話をしていた。

西沢君は、この時↓に男に殴られて大泣きしていた私をハグしてくれて、一緒に泣いてくれた人だった。

そしてこの時も↓、不倫相手の男に怒り狂って電話をしたのは西沢君だった。

その他にも、事あるごとに私は西沢君を頼っていた。西沢君はいつも私の話を聞いてくれた。


また時が流れた


25歳の時だった。

バイトのメンバーとは全く会わなくなっていたけど、相変わらず西沢君とは連絡を取っていた。そんな中、私は思い立って西沢君に合コンの提案をした。
女子のメンツは今でこそ「50の恵ナンチャラ」を企画する例の仲良しの同期だ。

私は密かに、財閥系の総合商社で海外赴任をする奥様の座を目論んでいた。


中編に続く








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