「見つけたいのは、光。」飛鳥井 千砂
この小説自体は好きだ。
ただ、3人いる登場人物のうちの1人(この人の語りから物語は始まっているので、実質的に主人公なのかもしれない)がどうしても好きになれなかった。
【登場人物】
亜希(30代半ば、1歳の子供と夫がいる。無職)
茗子(30代後半、夫がいる。管理職)
三津子(40歳、シングルマザー、大手ゼネコン勤務)
茗子と三津子は好きだ。2人とも、自分が充分な大人だという自覚があり、自分の強みも弱みも知っている。その上で、社会や自分に対する「諦め」も持っていて、人生をそれなりにやりくりしている。
3者の中で亜希だけが異質だ。ブラック飲食に勤める薄給の夫との間に無計画に子を設け、それを知った亜希の派遣会社は契約更新を行わない決定をするが、それに食ってかかる。
子供がいない茗子に対し「いい歳をして子供がいない人のことをバカにしていると言えば嘘ではない」、見た目も中身もガサツなおばさんである三津子に対し「ブログのイメージと違った。私はあなたが嫌い」と言い放つ。
この人の目的は「自身も仕事を持ち、もう少し余裕のある暮らしがしたい」というものだが、被害者意識が強く、気分の浮き沈みが激しく、母であるというアイデンティティを強く持ち、空港のロビーで人目も憚らず大騒ぎするなど、言ってしまえば「面倒臭い人」だ。一緒に働きたくないタイプである。
最終章でも亜希が「両手両足をバタバタさせながらテンション絶頂で話している」シーンがあるが、読者としては引いた。そして、やり手である三津子の部下として亜希がやり仰るとは思えなかった。
「あなたのもとで働かせてください」と言われた三津子も断るに断れなかったと推測でき、三津子に同情せざるを得ない。