#24 繊細ですから
嫌々帰省に付き合うからか、母の実家では頻繁に体調を崩した。発熱した私を伯父と一緒に病院へ連れて行ってくれたまでは良かったが、先生から「早くよくなるからお注射しようね」と告げられた途端
「先生、私繊細なので注射の針が見られないんです。待合室に行ってますね」
そそくさと退散。繊細な人は自分で繊細だとは言わないんだよ、ママ。伯父と楽しそうに笑っている話し声が響いてくる中、知らない場所で知らない先生に注射をされる心細さ。あの母親の子供に生まれた以上、孤独とも戦わなくてはならない。
寒暖差に弱い私は東北の温度変化に対応出来ない。海水浴が出来るほど蒸し暑いのに夕方からはぐっと冷え込む。くしゃみを連発しているうちに呼吸が怪しくなってゆき、喘鳴が出る頃にはもう苦しくてたまらない。その様子にいち早く気づいた母が、居間から離れた二階の一番奥の部屋まで私を連れていき布団を敷いた。
「ここで寝ててよ。ぜーぜーヘンな音立ててたらみんな不快になるから」
「分かった。ママもここにいて」
「どうして?私はお兄さんとお喋りしたいから居間に戻るわ。そんな意地悪言わないでよ。大体広い家が嬉しくて走り回ったんじゃないの?ママいつも口を酸っぱくして言うわよね、大人しく座ってなさいって。子供みたいにはしゃぐからこんな苦しい目に遭うのよ。言いつけを守らなくてごめんなさいって言いなさい」
いや滅茶苦茶すぎる。しかも子供みたいにってまだ私は9歳なのに。
「具合が悪くなるのは私のせいなの?友達は走り回ってもこんな風にならないよ」
「そりゃそうよ、よその子は親に反抗しないもの。悪い子だけが苦しくなる病気なの。さ、もう下りるわよ、お兄さんが心配するといけないから」
病気になるたびバチがあたったと説かれる。私の何がそんなにいけないの?こんなに自分を押し殺してるのに。