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#23 屁理屈…?

母が兄を慕うという行動があまりにも常軌を逸していて、子供ながらに『兄妹なのにいちゃいちゃして気持ち悪い』と思っていた。母の様子はどう見ても恋人に対する振る舞い。何か美味しい物を見つけると「私が好きなものはお兄さんも好きに決まっている」と送りつけ、一週間と空けずに近況報告の連絡をしあう。伯父が上京してくるとなると大喜びで御馳走の準備だ。娘の誕生日にさえ作らない、心のこもった手料理を。

「卯月は役に立たないんだからいたずらしないであっちに行ってて」

私のすることを全て「いたずら」と呼んでいた母。片づけも掃除も手伝いも全て。この表現は私が大人になっても続き、その都度苛立たせた。

そんな言われ方をするほど役に立たない私ではないと米びつのスイッチを押す。いつもしているからしっている2のボタンを押した私に雷が落とされた。

「お兄さんが来るのよ。今日は2合じゃないわよ!どうしてくれるのよ。だからいたずらするなと言ったじゃないの」

とものすごい剣幕。怒りながら2合の米にラップをかけた。

「これでお兄さんが帰るまで別に擱いてかなきゃならなくなった。場所取って邪魔になる。こういうの余計なお世話って言うの。覚えておきなさい!」

こわごわ質問する。「ママ、今日は何合炊くの?」と。

「3合よ。もう絶対手を出さないで。あなたは役に立たないんだから」

「1のボタン押してそれと合わせたら3合になるよ」

そう告げると驚き

「あら、ホントだわ」

と落ち着きを取り戻した。

日常のほんの些細なことでパニックに陥り、その度にこうやってヒステリーを起こす。そして絶対に反省はしないのだ。何かにつけて私にごめんなさいって言いなさいよと強制する母自身がごめんなさいを言えない人。

祖母の死去後、これで里帰りもなくなると密かに喜んだ私だが、年に二回が一回になっただけ。

「おばあちゃんが居ないのに何しに行くの」と尋ねると

「お兄さんが居るじゃないの。私と血を分けた大切な家族なの。会いたいに決まってるでしょう。大体卯月はどうしてなつかないのよ。お兄さんはね、卯月のおじいちゃんのつもりなのよ。私のお父さんは早くに死んでしまったから、おじいちゃんの気持ちであなたを可愛がっているの。だから好きになって甘えなさいよ」

「そんなこと言われても伯父さんは伯父さんだもん、おじいちゃんじゃない」

冷静沈着に正論を述べたので久しぶりに引っ叩かれた。

「なに屁理屈言ってんの!」

屁理屈は私じゃないと思うな。

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