街に溶け込んだストリップ劇場
何気ない静かな駅、人通りも少ない。
いつもは車で通ったり、自転車で通ったりする普通の道だった。
それなのにまさか「ストリップ劇場」が隠れていたとは...。
はじめて足を運んだ「TS系」のストリップ劇場、それが「大和ミュージック」だった。
相鉄線・小田急線「大和駅」から徒歩3分。出口はどちらから出ても構わない。
昔は高架下は少し寂れて古い建物が多かったので怖かったが、今はリニューアルされてカフェやドラッグストア、飲食店が入り綺麗になった。
ちなみにこの中のお手洗いはとても綺麗で劇場からも近いので、特に女性は外出してお手洗いを探す際にはここがすごくおすすめ。劇場内にもお手洗いは場内にあるものの、男女共有で和式らしく、私はちょっと無理だった。
劇場は中に入るまでが第一関門、ここは1階に焼き鳥屋さん。2階に劇場がある。
勇気を出してとんとんと上がると券売機が見えた、てっきりそこで買うのかと思いきや係員の男性が立っていた。
「女性1枚で」
と伝えると親切にチケットをもぎり、検温をするとスタンプカードも作ってくれた。
そして入り口に備え付けのアルコールで除菌する。ロビーは劇場に入るほんの少しのスペースに長いベンチがあった。
劇場の中に行くと思いの外広かった。舞台、花道、そして回らない四角い盆がある。
そして傍には銀色の棒が立っていた。どうやらポールダンス用のものらしい。
備え付けの椅子ではなく折り畳み式のものだったので、観客との間が等間隔で空いている。
床には白線が引いてあった。始まる前の案内で「椅子がその先に出ない様に」と言われていた、踊り子さんと距離を保つという配慮だった。
場内は長年の染み付いたものなのか少しタバコ臭い、床は古かったがきちんと掃除されていた。注意書きには「女の子のためのストリップ劇場入門」の原作者、菜央こりんさんが書かれたイラストが添えられてあった、本は読んでいたのでそういう小さなポイントもとても嬉しい。
舞台後方には「大和売店」と呼ばれる軽食や飲み物を口にできるバーがあった。
今はアルコール類は販売されていなかったが、ノンアル飲料やソフトドリンク。そしてこの日は踊り子の新井見枝香さんお手製の炊き込みご飯おにぎりと野菜スープが用意されていた。値段もお手頃で正直、味はどうだろう?と思いながらも昼食で利用したが、素直にとても美味しかった。決して派手なものではないが家庭料理という温度を感じられるものだった。炊き込みご飯にもなめたけを使ったり、スープにしょうがを効かせて少しスパイシーだったり...と細かい所もポイントだったりする。しかも出てきたとき、実にあっつあつだった。美味しいものが熱々で食べられる、美味しいものを食べることが好きな私にとっては、それは贅沢でしかなかった。
場内には既に常連らしきお客さんがいてかぶり席に座っていた。私はぎりぎりかぶりの席のはしっこにカバンを置くと館内を観察した。
投光室は2階部分、がっつり人まで見える川崎ロック座タイプ。そこに小学校の時以来に見たスポットライトが見えた。どうやら照明は投光室から操作しているのもあるらしく、踊り子さんに真剣な姿で照らす姿も実は見えた。
舞台の上には小ぶりなミラーボールが回っている。決して派手な照明ではないが不思議なローカル感があっていい。
投光室から注意事項が入るがどこか味があっていい。なんでこんなにアナウンスとはどこか「昭和」の香りがするのだろうか?
そして、大和ミュージック1回目の幕が上がった。
1番 相田樹音さん
1回目はアマビエに扮した樹音さん、悪霊退散!と言いながらステージ中を踊り回る。軽やかなステップが舞台、花道、盆でも止まることがなく、ほぼベットに移るまでずっと踊りっぱなし。しかも息一つ切れない、凄くない?客席にも目線を丁寧に配り私にも気づいてにこっと微笑んでくれた。あんなに目線を送られたのは初めてかもしれない。ちょろいオタク。
コロナに、そして世界に祈るアマビエの姿。その微笑みは慈愛度100%で底抜けに優しい演目だった。
2回目は、とある物語をめぐる少女の物語。疫病が蔓延る世界を救うべく読書好きの少女と、世界を守る女王の2役。世界を救う”ヒーロー”を必死で探す2人。でも少女は自分こそがヒーローにもなれて世界を救える力を持つ!と気づき、嬉しそうに踊る。
ファンタジーのようで、実は強いリアリティーのある願いが込められた演目だった。
ポラで樹音さんは新井さんを目当てに来たということでとても喜んでくださった。娘をよろしくね!と優しく微笑んでいた。「幸福の王子のよう」と新井さんが書かれていたことが分かる様な気がした。
2番 新井見枝香さん
この話、長いっすよ!(先述)
さて、初めに私がストリップ興味を持たせてくれたのは川上奈々美さんだと川崎ロック座のレポで先述したが、劇場へ行く「決め手」となったのが、実は新井さんだった。
ストリップのレポを読んでいる時に見つけたのが「大和ミュージック」での新井さんと相田さんのチームショーの話だった。まだ新井さんが踊り子さんになる前のお話だ。
新井さんが大和で出演されると知って、ぜひ行きたい!と思った。踊り子として、お客さんとしての目線のコラムも読みやすく、嘘みたいなホントの話が起きた大和ミュージックでお会いしたいなと思っていた。加えて、相田さんまで乗られることが決まって「やったー!!」と思ったのは言うまでもない。
以前、私が勢いで「渡したい」と緊急事態宣言前に買い、予定が全部消え寂しいGW中に「おれ、またスト活するんだ」と見つめつつ自分が行くモチベにしたプレゼント、それは新井さんに手渡したいと思っていたものだった。今回、初対面でお渡しするのは負担かな?と迷ったけど、結果持っていって気持ちを伝えられて本当に良かったと思う。
1回目は周年作。
からくり造りのロボットが次第に気持ちが芽生え、恋を知り、かわいいワンピースを着て幸せな笑顔を浮かべ、盆で「希望」を見つける。表情の変化で舞台に物語が形作られていくのを見れた。
舞台を支配する、作り替える変化を感じる踊り子さんがいた中で「物語を積み上げる様に作る」ところを観れるのは初めてだった。絵本のようで優しい世界が広がっていく。自分の身体について新井さんは色々コラムで言われていたが、私の目から見るととても綺麗で卑屈になる要素なんてどこにもなかった。小柄で中性的な身体ならば広がる演目もあると思う。つい先日、浅草の武藤さん観たから余計にそう思ったのかな?と。
2番目は新作。なのでここでは詳細は控えます。
しかしここで新井さんの姿を見ていて何かもやっとしたのだ。演目が悪いとかそういうのじゃなくて、もしろとても綺麗で恥じるところは可愛らしい表情で場内を見渡していた。だけど、可愛く微笑む横顔を見た時のヒラメキ。
(ここから妄想タイム)
...この人は、可愛い顔してえげついことをする演目とか似合うんじゃないか?例えば男をじわじわと毒で殺す演目とか、心中ものとか。どちらかというといい子は今日、沢山見たので逆の「ヒール」も見たいかも、と。
そこで一人の歴史上の人物が浮かんだ。
「川島芳子」
東洋のマタ・ハリと呼ばれた実在の人物(詳しくはwikiって下さい)。王女なのにスパイ、女性でもあり男装の麗人とも呼ばれた。死すら謎が多い謎の女。
そんな謎を含ませた「物語」がとても似合うと思った(妄想タイム終わり)
ポラの時にも伝えたつもりなのだが、声が小さなかったので聞こえなかった可能性が。だからここでがっつり書きました。ヒール役という言葉に新井さんも頷いて「面白いかも!」と反応してくださったので長い目でこれからも期待!これからも踊り続けてください!
3番 内田みるさん
どこの昭和のお姉さんが飛び出してきたのかと思った。
大和初乗りの踊り子さんです。
見た目は黒髪、ワンレン、唇が厚くセクシー。
イメージ的には今のビニ本ではなくて、昭和のちょっと過激なビニ本の袋とじで微笑んでそうなイメージのお姉さん、それがみるさんだった。
黒いハットに真っ赤な花飾り、そして黒と赤のドレス、ところどころキラキラと光る。
楽曲もどこか懐かしさを感じるものばかりで、ゆっくりとした動きでとにかくエロい。
色っぽいとか妖艶なじゃなくて、エロい。
時にはお尻を強調したり、椅子の上で感じる表情をしたり、ポーズを決めたり、ドレスを脱ぐとまさかの緊縛気味の下着がこんにちは。盆でも表情が妖艶で、最後まで劇場に匂い立つ「昭和」
Twitterをあとで見るとみるさん自身が昭和を愛し、元はキャバレーで踊っていらっしゃったと聞いて凄く納得した。
4番 箱館エリィさん
1回目はお手洗いに一時外で走っていたのでほぼ見れませんでしたが、音だけだとどうやら野球?やプロレス?や何だか楽しげな曲が鳴っていました。
2回目は和服で登場、美しく舞台で日舞を舞いながらM1を終えると、次に登場した時は「大漁旗」(だったと...)と派手に描かれた和服に舞台上で一気に着替えると鳴子を手にし満面の笑み、全力でソーラン節を踊りあげた。先程まで日舞だったのにソーラン節という歩振り幅。汗いっぱい流して肌襦袢に身につけ盆までやってくるとオナベがはじまった。
生まれてはじめてのオナベ鑑賞。しかも演技とはいえ息遣いや手の使い方がやはり「魅せる」ことを一番にした盆での姿、それが終わると勢いよくポーズを決めていた。
やはりかぶりつきではじめてのオナベはとても恥ずかしいもので、しかもお客さんの顔も見える席だったので余計に気恥ずかしくなってしまった。
5番 松本ななさん
1回目はポールダンスを披露していました。浅草でエアリアルは見たことがあったのですが、考えればポールダンスははじめてで数m先でポールをぐいぐいと上がり足を絡ませながら次々とポーズを決めていく姿は風を巻き起こしてるみたいでカッコよくて拍手喝采でした。
「滑ったー!」と、ポラの時に悔しそうな顔をしておられましたが、身体の線が綺麗に見えて凄く見てて楽しかったです。
そして2回目はとある歌手縛りの演目、アニヲタならきっと分かるお馴染みのあの方。
口ずさみながら黒い軍帽と黒くキラキラと光るミニスカートと真っ黒なロングブーツで歌いながら楽しげに踊ってらっしゃって本当に好きなんだと伝わりました。
ベットになると悩ましげにオナベに入って、何だかドキドキしました。客席に目を走らせ目があった常連さんがうんうんと頷く姿。その光景が余計に「覗き見」しているようで背徳感がいっぱい。
ちなみにフィナーレで上野さんと賑やかにやりとりしてしながら、花道を歩いている姿はTGCみたいでした。
6番 上野綾さん
上野さんの1回目、2回目に共通すること!
それは「凄まじいステップ」
涼しい顔をして舞台を縦横無尽に動き回ると、その度に香水の甘い香りがふっと場内に。ピンク色の羽を纏わせ軍服姿。手にはながーい鞭、それをぴしっぴしっ!と叩くと音が聞こえる、実に健康的な官能音感。そしてすっごく高いヒールでステップを踏んでいく。他の踊り子さんにも言えることだが、足でリズムを刻んだりステップを踏んだ時、地面がずんっと揺れる。それが余計にストリップを「体感」できているようですごく楽しくなる。その踊りの技術と世界観に手拍子とか忘れて見入ってしまった。変に手拍子打ってしまうなら、もうやめて見ることに集中してしまおうという体である。
劇場を一気に「上野綾」色に染め上げていた。テンポの速い楽曲で音速級の足捌き、気がついたらもうベット着で盆へ来ていた。
上野さん見た目、がっつりカラコンで金髪ロングでカッコいい女性。
そんな女性がベットに移ると額に汗を光らせながら、遠くを見つめる様にゆっくりと服を脱いでポーズを次々決めていく、身体が柔らかくとても妖艶だった。
OPショーでは来ているお客さんと会話していた。いや、ほんっとうに普通に。
場内にいた女性が珍しかったのか、とんっと盆に上野さんがしゃがむ。
上「どうも」
私(どうも)
私は頭を下げると、どうやらその日が強風と雨が酷かったのでそのせいで髪の毛がダメージでぼんばってしまったらしいことを嘆かれた。
ひいい、明らかに眩しい陽キャな人に語りかけられるとオタクは溶けるのです。私はあわわと言いつつ何も言えませんでした。機転良く「そんなことないっす、凄くダンス素敵でした!」って感想を返せば良かったなぁと、帰り道にただ後悔するオタク。
私は2回目終了後、合同フィナーレのあとで帰路についた。
「ありがとうございました、またどうぞ」
という投光さんの声が私にも掛けられ、そのアットホームな劇場の階段を降りて外に出ると、すっかり雨もやみ風にあおられながら傘をささずに済んだ。
頑張れば自転車で来れる大和ミュージック、家から劇場まで行くのもなかなか楽しそう。
また機会を見て是非、足を運びたい劇場でした。