夏がはじまる、そして終わらない夏。

灼熱の新宿、とことこと私は気合を入れて歩いていた。
全てのはじまり、SNAへ。
私は何気なく勢いで入った新宿ニューアートに再び足を踏み入れようとしていた。
今日、見にきた主な理由は香山蘭さんの「反戦歌」を見るため。
SNAにいく前に、いばらきさんとご一緒して席とりをした後で近所の美味しいラーメン屋「みた葉」でずるずるとご飯を食べ劇場に戻りました。
蘭さんあてに差し入れを受付で渡し劇場内へ。相変わらず劇場は空調が効きすぎて少し寒いくらい。しかし土日で1回目としては立ち見まで出るほどの大盛況ぶり。
男性も多いけど、女性もひたすら多い。

そんな中、りんねさんのポラ列に並んでいた女性から話しかけられました。
「アヤメさんですか?」
そうです!と答えると、な、なんと、SNAの初ストリップの時、隣同士で座りずっと「また劇場で会いましょう!」と約束をしていた先輩でした!なんと前のSNA以来!本当に偶然!しかもSNA!いばらきさんにも紹介し3人で楽しく話してました。
あのあと色んな劇場に行って、推しの踊り子さんができたこと、ポラを撮っていること、そして感想など色々話して実に「プライスレス」な時間を過ごせました。そのあと蘭さんのポラの時に(先輩のことで反応頂いていたので)話したら本当に嬉しそうな笑顔で応じてくれました。ほんと嬉しかった!!!

さて定刻になり、1回目が幕を開けます。
今回からレポですが、全ての演目を説明するのではなく「見た中で記憶に残った演目」を中心にお伝えできればと思います。


1番 瀬能優さん

はじめましての踊り子さんでした。
私が見た中では3回目にされた「女性の激情、純愛」を表現した一作が胸に刺さりました。
傘を手に抱きしめるように慈しむように弄び、花を一輪持つと真っ赤な紐が現われ踊りながら妖艶に纏わりつかせる、この一見何の関係もなさそうな3つが混じり合った時、本当に鳥肌が立った。
傘と花をぎゅっと紐で締め上げた時。
「これはきっと、阿部定だ!!!!!」
と思った、二人で安宿に入り浸り世情から逃げるようにセックスだけを重ねていたが、相手の定吉が「殺してくれ」とばかりに互いに心中を願うようになった。定はその願いを叶えるように、そして独占欲で首を締めて定吉を殺し足に「定吉二人キリ」と包丁で刻み、男性器を切り取り持ち去ったという有名な事件。色情狂だと言われているが瀬能さんの演目を見る限り、花が切り取った「男性器」だとするなら表情も傘を男性に見立てて情交に耽ける様も間違いなく「純愛」だった。狂った愛は同時に真っ直ぐな愛でもある。それを見せつけられたようでどきりとしたのだ。でもOPショーでは底抜けに明るく笑い声が明るい踊り子さん。
最後の暗闇で交わされる「ばいびー」が最高にファンキー。

2番 椿りんねさん

「銀河鉄道の夜」
先輩曰く「今日は女性のお客さんが多かったので踊った」ということで見れた演目。
既に横浜ロック座でも見て強い衝撃を受けた作品だけど、SNAは全く違う魅せ方で朝から涙が流れた。
M2でゆっくりとりんねさんが踊り出した時、そこは間違いなく新宿ではなくて「広島」だった。
私が一度も行ったことがない、写真でしか見たことがない広島第一劇場にいるような錯覚を起こさせた。真っ赤な絨毯、2つある盆、そしてゆっくり開く背後の鏡、天井に張り巡らされた鏡たち、星がついた綺麗なミラーボール。
写真でしか見たことがないのに、私たちは広島の劇場にりんねさんの銀河鉄道に乗って辿り着いていた。とっても綺麗で切なくて、星がやっぱり星座みたいで何よりも劇場への愛と強い気持ちが込められて胸がいっぱいになった。これを朝イチで見せてくれることへの感謝。
SNAの真っ赤な照明、そしてスポットライト、キラキラと光るミラーボールと青くゆらめく光が最後まで没頭させてくれた。

3番 香山蘭さん

もう本当に長くなります。書かせておくれ。

「反戦歌」(0,1,2)
今回、この作品を見て本当に良かったと思いました。いつもは二回目で劇場を出て帰路につくことが当たり前でしたが、今回は最後までどうしても見守りたくて席に座っていました。
前評判の良さから、期待度マックスで全神経を集中させる気持ちでSNAに向かいましたが、その期待度を軽く超えてくるくらい私の中でとても大切な作品になりました。
文字通り、その身体ひとつで一人の女性の半生を生き抜いた凄い演目。
ではゆっくりと語っていきたいと思います。
まず「0」
全てのはじまり。レコードの音に耳を傾けながら踊る若い女性。昭和初期、レコードやオシャレを楽しむ趣味があるのは、きっと都会か港町の流行りに鋭いモダンガール(モガ)だと思った。彼女は楽しげに盆に乗るときっと盆の向こうにいる想い人に向日葵を渡したりする。
暗転すると太平洋戦争の開戦放送が流れる、すると舞台では一糸纏わぬ蘭さんが薄い黒い布を纏い踊る、それは性別や国、年齢を飛び越えて真っ黒な感情が人間を覆っていく「戦争」を表現しているように見えた。情け容赦ない黒、まるでプロジェクターで舞台に戦時中の映像が淡々と流れているみたい。そのあと、先程のモガ少女が想い人と簡素な結婚式を挙げていた。時代からか白無垢はなくきっと自分が持っている一張羅の着物を用意したのだろうと思った。それをするりと脱いで、初夜の寝床で待つ夫のために湯浴みをする。この時になんだか泣けてしょうがなかった。何気ない日常なのに私たちは先にあるものを知っている。丁寧に身体を拭う「日常」が悲しくて愛おしくてたまらない。
盆へ行くと静かに「よろしくお願いいたします」と三つ指で頭を下げて、新婚の夫婦が本能のままセックスをする。それは今までの想いをぶつけるようにとても激しく、そして二人が過ごせる最後の夜であることもよく伝わった。

こんな悲しいラブシーン、わたし見たことないよ。

戦地へ赴く兵士たちは「もう二度と戻って来れない」ことを覚悟して結婚する男性も多かった。お見合い結婚が多い中、この2人は好きあって結ばれた本来なら幸せな夫婦だったはず。何度も交わされるキスやセックスなどを見てると「なんでや...このまま幸せでええやんか」と思わずにはいられないほど。
激しい2人を覆い隠すように真夏にきっと外はどしゃぶりの雨、まぐわう姿の向こうでは入れ忘れた男性の寝巻きの浴衣が物干し竿で濡れている風景が浮かびました。
雨が止み、誰もいない夜明け前に夫は兵隊姿で家をあとにして、人に顔を決して見られないように処女を失った妻も夫の後ろ姿を白襦袢だけを身につけて手を降る。ここで楽曲のリフレインが心を刺す。

きっとこの後ろ姿を
送り出す自分の心を
葉に滴る朝靄を
彼女は
これから何度も思い出しながら生きていくのだろう。

送りながらも耐えきれず頭を抱え泣き出す妻。私もそれを見守りながら静かに号泣していた、出征する兵士を涙で送り出すことは許されていなかった。笑顔でお国のために散ってこいと笑って送り出した。きっとそれはできない2人だったんだろうと、思う。

そして舞台は「1」へ。
混乱する戦後、娼館に勤める先程の女性、薄手の着物で客を手招きし商売をしている。
今日も客の相手をする女性の脳裏に浮かぶのは、戦時中に一通だけ届いた戦地からの手紙。
戦地で葉書に筆を走らせる実直そうな兵士、ここではじめて視覚的に夫の姿が出てくる。
日除けがある薄い軍帽を被っている、軍服は長袖長ズボン。
日除け帽子を支給されている...。ここで彼が南方戦線に送られたことが予想できる。グァム、サイパン、ガダルカナル...どこも日本兵玉砕だけではなく病死や餓死がとても多い場所だった。彼も最後を覚悟しつつも、検閲があることも覚悟して、きっと国のために戦うとか妻を見舞う一言が書かれていたのだと思う。その葉書を手にしたたった1人で家を守る彼女にとってどんなに手紙が嬉しかったことだろう。葉書を手に盆へやってきた彼女は彼の面影を追うように自慰をする。それは見知らぬ誰かではなく、夫ただ一人。
こうやって彼女は果てたあとも、日々訪れる空襲や隣組の仕事もこなしていくんだろう。
そしてこんな女性たちが日本にどれぐらい沢山いたんだろう、そう思うととても切ない。
時代は娼館へと戻り、彼女は嬉しそうに葉書を抱きしめて物語は終わる。
ここで気になったのは文字通り、葉書である。娼婦という仕事に就くようになった彼女。だがなぜここにいきついたのか?彼女と共にいる家族はいなかったのか?
そう考えると、きっと彼女はやはり都会に住んでおり大規模空襲で家族や家を失い行き場を無くしたと考えるのが自然だった。しかしきっと夫からの「葉書」は自分の命より大切なものだったのだろう、だからどんな時でも肌身離さなかったんじゃないか?空襲警報が流れて、防空壕に隠れている時もずっと胸に抱いていたんじゃないか?
その答えは分からないが、彼女の手に大切そうに葉書だけが残っている。

そして「2」
娼館から、彼女は赤玉ワインをがぶ飲みしながら客を取る街娼になっていた。
どこか人生に諦めた顔をしながら、男を誰でも誘い影で金を取り下半身を開く。非常に退廃的で「一体、1→2まで何があったの?」と思わずにはいられない。
酔った彼女は夜中、ドヤ宿かそれとも公園か橋の下か洋服を脱ぎ捨てると枕にしてシュミーズ姿で眠りこける。そんな時、ぼろぼろのカバンから取り出したのは先程、夫が身につけていた帽子だった。それを見つめて寂しさを埋めるように自慰をはじめた。もう香りなんてついていないかもしれないのに帽子に顔を埋め、亡くなった夫の姿を求めるように激しく身体を律動させる。見てて辛い、半端なくつらい。
しかしここで気になったのが「夫の軍帽」である。なぜ戦地で被っていた帽子が彼女の手にあるのか、ここからは私の想像だが「夫の死を知っている生き残った戦友が戦後、娼館まで届けに来たんじゃないか」ということ。南方で戦死しても家族に知らされるのは紙の死亡届か、石ひとつ。その場の遺品が戻ってくることは0に等しかった。だから帽子を届けたのはその場で夫と共にいた誰かだと思えた、おそらく夫は妻に想いを告げてくれと彼に伝えたのかもしれない。だってそこには検問はないから。そして事実を知った彼女は絶望し悲しむ、知らせにきた戦友と互いの寂しさを埋め合うように身体を重ねたのかもしれない。戦友は罪悪感で去り残された彼女も娼館から逃げた。帽子ひとつだけ持って。想像おわり。
絶望の夜を超えて、起き上がった彼女に聞こえてきた明るい音楽、思わず踊り出す。
そうだ、私、踊ることが好きだったなぁときっとモガだったころの記憶が蘇る、すかっさらしの土に落ちる一枚の紙。

「踊り子さん、募集中」

食いつくように彼女は紙を手に走り出した。
日本最古のストリップ「額縁ショー」
額縁の中で半裸の彼女は笑顔を讃え、ポーズを取る。そしてキラキラの衣装を身につけると満面の笑顔で踊り始めた。戦争で全てを失い、最愛の夫はいない、でも踊ること、そして生きることを見つけた踊り子となった彼女のダンスはとてもキラキラして眩しかった。
息ができないほど、泣いた。思い出しても泣く。

0で象徴的に出てきた向日葵の花言葉。
「あなたを見つめている」
それは最後に彼女を見つめる私たちの目は向日葵だったのかもしれない。

そして私から、彼女へ。そして演じ切った香山蘭さんへ。
もうひとつの向日葵の花言葉を送って、感想レポの最後としたい。

「あなたは、素晴らしい」

4番 虹歩さん

今回、はじめましての踊り子さん。
先程の蘭さんが役者としての踊り子さんだとしたら、虹歩さんは「ザ・ダンサー!!」のはじめから最後まで踊りまくるタイプの踊り子さん。とにかく言葉にできないほど踊りの質が高すぎる、体幹とか身体の柔らかさとかそういう問題じゃない!
与えられた時間内でダンスパートもベットパートも、魅せられる身体の限界を超えて見せてくれている!と感動を受けた方です。
キレある踊りの間に見えるへそピアスがとても綺麗。特にすごいと思ったのはベットでのポーズ。はっきり言ってあんな凄いスキルが必要なポーズはあまり見たことがなかったので、文字通り「口があんぐり」開きっぱなし。
立ったままそのまま背中を逸らせてブリッジ、そのまま立ち上がったり、ブリッジして片足を上げてI字バランスを取ったり(裏覚えですが)ベットでも高難度の技を次々と見せてくれた虹歩さん。実にエネルギッシュで胸に流れる汗も輝く笑顔もキュートで可愛かったです。めちゃ元気もらえました!

5番 ののかさん

5月の横浜以来、二回目です。
前のレポでは「ナイスバディでセクシーで綺麗な人」と書いた記憶があるのですが、2ヶ月でこんなにも印象が強く変わるかとびっくりした踊り子さんでした。
出されていた演目はどれも特徴があり面白かったのですが、やはり新作の「葛藤」がストーリーものが好きな私にとっては記憶に残りました。
はじめはかんっぺきなイケメン枠の男子学生服で登場するののかさん、キレ良く踊りながらも表情は何かに苦しむような表情。まるで疑問を抱くように制服を脱ぎ捨てていく。すると制服の下からは女性の下着と白い網タイツが見えた、主人公のジェンダー的部分については触れられていない。だけどその心の葛藤だけはとても伝わる。
男らしく、女らしく、自分らしく。
日本ではそれを突き通すのは難しい。でも、自分らしく生きられたら。そんな気持ちが吹き出すように女性の制服を身につけて華やかに踊る、とても嬉しそうに。
ベットにやってくると真っ白な下着を脱ぎ捨て気持ち良さげにポーズを切る。
5月見た時より踊りが格段にレベルアップして、すごく目を奪われるポーズを切られると思わず目を奪われた。聞けばまだ踊り子さんになられてもうすぐ2年目に入りそうということ。なのにこの進化は素直にほんとに凄いと思った。まだまだ大きくなりそうな予感。
ののかさんのナイスバディをポラで撮れる機会だと思って勇気を出して列に。
はじめて自分から脱ぎのお写真を撮ることができました。イメージではののかさんはセクシーで声が低くて大人っぽい方だと思っていたのですが、実にフランクでポン酢みたいにさっぱりしてて「姉御」感があるカッコいい方でビックリしました。
いばらきさんに言った一言「いやあ、ポラでちゃんと話してみるものだなあ...」

6番 真白希実さん

初めて足を運んだSNA以来二度目ましての真白さん、来場していた女性の方は結構真白推しさん沢山おられました。
今回、とても心を奪われたのは4周年演目「恋華草」です。真白さん演じる花街に生きる女性が一人の男性に心奪われ、恋に落ちて堕ちていくという印象を受けた演目でした。
盆からはじまる本作、突然の大胆なポーズからはじまります。花魁が手に持った飾り傘を高速回転(真白さんはバトンがお上手とのこと)させるところは目を丸くしちゃいました。涼やかな顔をしながらもものすごい勢いで傘が回っていたよ!!!!
そしてベットになり、照明がぱああーーっと当たりながら、真白さんが冒頭のポーズを切るところ!
「なんて激しい恋!」
と圧倒された、ポーズだけで想いを表現するのは風圧みたいな広がりを感じました。
真白さんはクールビューティなイメージがあるので、あまり感情だとかで考えたことがなかったのですがこの作品では必死に恋する男性を離すまいと縋り付いたり、男性を待ち焦がれている花街の風景が見えるようでドキッとさせられました。
そしてポラ列の長いこと!毎度毎度本当にファンの方が多くて圧倒されました。凄いなぁ。


蘭さんの3回目を見た後にすぐ劇場を後にした私、かなり時間が押していたので終電時間ぎりぎりだったのです。泣き顔で電車に乗りながら余韻にひたる私。

「反戦歌、スト演目とかの括りを超えてる、これを他の人に伝えられたら...」

と強く思いました。私の言葉はとても小さいもので届く人も少ないかもしれないけれど、こんな人の心を揺さぶり残る作品と出会えたことを、そしていつか人に引き継がれていく演目であることを「そんな作品があるなら、見たい」という人がいつか劇場に足を運ぶきっかけのひとつになったら...と強く思っています。

そんなことを思いながらも、SNAの記録と記憶がレポを書いたらぜんぶ昇華してしまいそうな気がして、今回はとても筆が重かったのです。
新作を考えられているということで、今年がどうやら最後の「反戦歌」だったようで見れて本当によかったと思っています。ストリップを見始めた当初、香山さんのことを調べたら「反戦歌」が必ず代表作の一つとして出てきました。調べれば調べるほどとても気になる演目で見たいと願っていた作品です。今回、長い時間でしたが本当に見れて良かったと思える作品でした。

ストリップ演目は映像で残ることはないので、目に焼き付けるしかない。記憶を脳に残すしかない、一期一会。だからこそこの記憶を大切に...本当にとても大切にしたいと思いました。
今日はそんな気持ちと共にレポを終えたいと思います。

まだ夏ははじまったばかり。そして夏はまだ終わらない。

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