「スターダストメドレー」歌詞の意味を考察!
きさらさんのボカロ曲「スターダストメドレー」には、どんな意味やメッセージが込められているのでしょうか。
歌詞やMVの内容について、とことん考えてみたいと思います。
「スターダストメドレー」とは
「スターダストメドレー」は、2023年3月19日、きさらさんによって投稿された楽曲です。
「VOCALOID Collection(通称ボカコレ)2023春」のTOP100ランキング第3位。
さらに、リズムゲーム「プロジェクトセカイ カラフルステージfeat.初音ミク」の公募企画「プロセカNEXT」の採用作品として、ゲーム内に収録されています。
きさらさんについてまとめた記事はこちら
【プロセカNEXT】きさらさんについて調べてみた|六日野あやめ (note.com)
2023年6月24日時点で、ニコニコ動画での再生数は26万回。YouTubeでは38万回を記録しています。
魔法少女アニメのようなパステル色のMVと、くるくると変わるミクの歌声が魅力です。
曲のテーマは?
テーマを確認するために、タイトルの意味を見ていきましょう。
まず、「スターダスト(star dust)」は「多くの星の集団」という意味。
これは「ボカロ曲」の楽曲群を表しています。
「メドレー」は「二つ以上の曲目を区切りなしに演奏すること」。
つまりこの曲は「区切りなしに演奏されていくボカロ楽曲たち」がテーマです。
MVについて
「昔のアニメのオープニングっぽいMVだな」と思った方も多いでしょう。
それもそのはず。このMVは80年代に放送されていたテレビアニメ「クリィミーマミ」のパロディです。
上のMVでは、画面の比率が「クリィミーマミ」放映当時のテレビと同じ 4:3 になっています。
ですが最後のサビで、現在と同じ 16:9 になり、副音声を模した字幕も現れます。
「クリィミーマミ」はアイドルのお話です。
ミクとクリィミーマミは同じ「アイドル」であること、ミクが、テレビの比率が変わるほどの時間が経っても「万世(永遠)」に愛される存在であることを示します。
それでは、次は各パートの歌詞を見ていきましょう。
「信じた幻との約束」とは?
まずはAメロ。
「ボカロ音楽がどういった性質を持っているのか」という説明です。
「かくもおかしなメドレー」は「信じた幻との約束」。
「信じた幻」とは、何でしょう?
それは、MVの主人公「初音ミク」です。
ミクは、クリエイターによってさまざまなデザインをしています。
ファンからは上記のどちらも「初音ミク」として認識されていますが、公式のミクには、身長・体重などの最低限のプロフィールしかありません。
つまりボカロP(以下「P」)は、公式のミクの要素から、自身の作品に見合うイメージ(幻)を取り出し、それに沿って(約束して)作品を作っているのです。
さらにMVの中には、パッケージのデザインと同じミクが登場します。
パッケージと同じ姿をした初音ミクは、公式のミク。
対して、ピンク色の服を着た初音ミクは、きさらさんが「約束」した「幻」のミク……「きさらさんちのミク」です。
また、2007年……ミクが発売された「大昔」にはネタ曲が多く「オタクのオモチャ(戯れ)」的なポジションでした。
そんな「戯れ」に「馬鹿」みたいな熱量で曲を作ってきたクリエイター(P)がいて、ボカロという大きな「メドレー」は奏でられてきました。
同時にボカロ文化の特殊な点は、だれかの創作を「拾い上げ」ただれかの手で、創作の輪が広がるということ。
歌が「響く」「新世界」とはインターネットのことでしょう。
きさらさんはご自身でイラストも手掛けているので、音楽だけでなく、周辺の創作物も含んでいるかもしれません。
「迷子になった」とは?
Bメロで語られるのは「産みの苦しみ」。
気まぐれで作ったけど、投稿していいのかな?
とっておきだけど、見てもらえなかったらどうしよう。
右往左往するウサギは、ミクと二人三脚で歩むPです。
そんなPが悩んで作った作品(星)を、ミクは「全部」受け取り、大砲に詰めて「空へ掲げ」ます。
最後のサビで「穿て天上」とあるように、空は、動画を投稿するプラットフォーム。ニコニコ動画やYouTubeなどを指します。
「ばずりた散歌」にも大砲が登場します。
きさらさんにとって、大砲は「打ち上がりたい!」という想いの象徴。
打ち上がった先でたくさんの人に作品を届けたいと願っています。
「星々の連鎖」とは?
作品は「連鎖」し、新しい作品の糧となります。
創作の輪が「ずっと遠くのその先」へと繋がっていくのです。
同じことがlivetune(kz)の「Tell Your World」でも語られています。
サビの後半は、きさらさんがボカロに抱いている愛情です。
ボカロの世界は魅力的で、創作の過程でどんな悩みがあっても、やめることができません。
Pにとってのボカロは「好きを追える」場所。
現実では、好きな時に好きなことをするのって難しいですよね。
だから、好きなことができる夢みたいな世界から「ずっと覚めないで」と願うのです。
Cメロ
ここでのテーマは承認欲求。
再生数が伸びない作品でも、ひとつひとつが「かけがえない」作品。
しかし、それじゃ足りない!
「超新星爆発」のようにバズりたい、目立ちたいという「煩悩」を抱えています。
でも、そんな「煩悩」まみれの作品にも、何かを表現したいという「ハート」はこもっています。
そんな作品を誰かに見てもらい、気持ちを分かち合うことは、素晴らしいこと。
「乾杯」は、相手がいないと出来ませんよね。
MV中、「きさらさんちのミク」が、一瞬「公式のミク」に変わります。
作品を投稿することで、「きさらさんちのミク」も、他のあらゆるPのミクと同じように「初音ミク」という共通の幻に吸収されてしまうからです。
Dメロ
語り手のルーツについての箇所です。
頭がくらっときたような感動、目が覚めるようなインスピレーション(神来)といった、今まで感じたことの全てが、自分を作ってくれた。
一般的な邦楽はCメロ→サビの構成が多いのに対して、Dメロまであることもまた「メドレー」のイメージでしょう。
サビ
画面比率が変わる点、万世の意味は前述しました。
愛憎は「愛することと憎むこと」。
さまざまな感情を歌にして、高みへ打ち上げよう!と語りかけます。
創作意欲が湧かなくても、バズれないまま底辺を這いつくばろうとも、嘲笑されようとも、「好きを追う」という気持ちは消えない。
「新世界」で何度でも、ミクと一緒に作品を作っていきたい。
ずっとミクに「愛して恋して溺れたい」。
ミクをめぐる創作へのラブコールで、この歌は終わります。
「最後に」
「スターダストメドレー」は、様々な感情を作品に昇華し、創作の輪を広げていく創作の楽しさ、辛さについて描かれた曲でした。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
※文中で引用した「スターダストメドレー」の画像は、冒頭に掲載した動画から引用させていただいています。