おにぎりの中身
小学校低学年の社会科見学で郊外のダムへ行き、待ちに待ったお昼休憩になった。
遠足の楽しみといえば、何と言ってもおやつである。当時206円という消費税込みの枠内に収まるよう、近所の駄菓子屋で暗算で慎重に予算内に収まるよう計算しながら5円チョコやうまい棒といったお菓子を買い込んだものだ。
今回の社会科見学は遠足ではなく、授業の一環という整理だったせいか、おやつ禁止であった。
当時私はなぜかどうしてもおやつを持って行きたかった。しかし、お菓子をそのまま持って行ってこっそり食べるような勇気はなく、何を思ったのか母におにぎりの中にお菓子を包んでくれるよう頼んだのだ。
私の中ではラムネや飴が薄いセロファンのような包装ごと、ご飯の中心に入れてくれるイメージだったのだが(母に詳細に指示はしなかった)、母はあろうことか包装紙をとり、中身のラムネや飴そのものを梅干しのようにおにぎりの中心に入れ込んだ。
そのことに気づいたのは、おにぎりの一口目をかじった時だった。何やらごはんに赤いベタベタしたものが付着している・・・!?と。それはご飯の熱でとけたイチゴ味の飴だった。
ラムネは白いため、ごはんに色的には馴染んでいたが、おにぎりとかなり変な味だった。ごはんとラムネは全く合わない。今思うとテレビ番組の罰ゲームのようだ。
もちろんこのスペシャルなおにぎりを頼んでおいて食べ残すのはありえないため、全部きれいに平らげた。
当時私はクラスの仲の良かった友人たちから無視されていたため、このおにぎり作戦がバレなくて好都合だった。一人でサンリオの赤い可愛いビニールシートの上でこっそりと、中心にラムネや飴の入った不思議な味のおにぎりをもくもくと頬張った。
母が私のリクエストに対し、何を思いながらおにぎりを握ったのかも、今思うとなにか滑稽だ。
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