ポジティブ心理学でウェルビーイングな日々を・11「フローを体験しよう=最高の瞬間は仕事をしているときに訪れる」
今、仕事は楽しい? つらい?
仕事や勉強って、基本的には大変だよね。
金曜日には「明日は休みだ~!」って嬉しくなるし、
日曜日の夜には、「明日から仕事か~(学校か~)」って気が重くなるよね。
でもね、つらくて大変だからこそ、
本当はその経験が、
幸福感に結びついているかもしれないの。
というのはね、
ポジティブ心理学者たちは、
「人は娯楽の方が好きだという一方で、
フロー状態やピーク・エクスペリエンス(至高の喜び)は、
仕事をしているときに体験することが多い」
ということを突きとめているからなんだ。
「フロー」って聞いたことあるかな?
「フロー」とは、特定の作業に没頭し、
その作業との一体感を感じている状態のこと。
スポーツにおいては「ゾーンに入る」という言い方をすることもあるね。
あなたにも、目の前の仕事に没頭して、
気がついたらものすごく時間がたっていて、
しかも完了したときに清々しい充実感が残った・・・、
という体験があるんじゃないかなぁ?
それが、「フロー」だよ。
「フロー」を研究した心理学の大家、
ミハイ・チクセントミハイの言葉によれば、
「私たちにとって『最高の瞬間』は、
私たちの心または肉体が、
価値のある何かを達成しようとして、
背伸びしているときに発生する」
つまり、
フロー体験は幸福感を高める、としているんだ。
達成しようとする目標が、
難しすぎず、易しすぎず、
今の自分の能力にとって「少し背伸びしたもの」であるとき、
フロー状態は訪れやすいといわれているよ。
でもさ、
現実の目の前の仕事って、
そう上手い具合に設定されている仕事ばかりではないよね、正直。
だったら、目の前の仕事を「少しの背伸び」の範囲に
自分でコントロールする方法はあるのかな?
ここで、「ジョブ・クラフティング」理論の
3つのステップを紹介しておくね。
「ジョブ・クラフティング」というのは、
自分の仕事を「やらされているもの」という捉え方から、
「やりがいのあるもの」へと変えていくこと。
仕事そのものの内容を変えるわけではなくてね、
自分自身の考え方や行動を主体的に変えることで、
目の前の仕事を自分なりに「再定義」することなの。
1.関係者との関わり方を見直す
上司・同僚など一緒に仕事をする仲間との接し方(質・量)を見直してみる。
時には、自分の今の仕事について、
全く違う部署の人に相談をして、
新たな視点からアドバイスをもらってみるのもひとつ。
2.仕事のやり方を見直す
単調な繰り返し仕事を同僚と競争することでゲーム性を持たせたり、
もっと効率化できないかと知恵を絞ったりすること。
従来の慣習や前例にとらわれず、
自由な発想で取り組める範囲を探してみる。
自発的なアイデアは自分の強みや得意なことが反映されやすく、
仕事に取り組む意欲も変わってくる。
3.仕事の意義を見直す
仕事に対する意識の修正。
自分が担当している仕事の目的や他者への貢献度を、
高次の視点から、より俯瞰的に捉え直してみる。
今の仕事に対して、
今まで気づかなかった価値を見いだせることがある。
具体例としては、レンガ職人の寓話が有名だよね。
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【レンガ職人の寓話】
ある男が、道々出会うレンガ職人に問いかけます。
「あなたはいったい何をしているのですか?」
一人目の職人は「見ればわかるでしょう、レンガを積んでいるのです」と答えました。
職人が続ける愚痴ともとれる悲観的な言葉に、
男は慰めの言葉をかけて通り過ぎます。
次に会った二人目の職人は「大きな壁を作っているのです」と答えました。
家族を養うためという説明に、
男は励ましの言葉をかけて通りすぎます。
最後の三人目の職人は「人々を幸せにするための偉大な大聖堂を造っているのです」と答えました。
大変ですねという男の言葉をこの職人は否定し、
自分は素晴らしい仕事をしていると答えました。
男は、お礼を言って通りすぎるときに、
自分も元気になったことを感じたのでした。
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第4回目のコラムの中で
「物事そのものに良し悪しはなく、
良いか悪いか判断している私たちの心があるだけ」
と書いたね。
仕事も同じ。
面白い仕事とつまらない仕事があるのではない。
面白い、つまらないと感じる私たちの心があるだけ。
あなたの仕事によって助かったり、
喜んだりする人たちの顔を思い浮かべてみて。
シャハー先生も、
「今の仕事を天職としてとらえうるものに作り替えることは、
ほとんどの人たちにとって可能なことです」と言っているよ。
「天職だなんて! 今の自分の仕事を、とてもそうは思えない」という人も、いるかもしれないね。
でも、ある有名な料理家が言っていた。
「天職を見つけたいなら、目の前の井戸を掘れ」と。
とりあえず目の前にある仕事を、
覚悟を決めて、
とことん、本気でやってみろと。
目の前に来た仕事を掘って、掘って、掘って、
水が出て井戸になるくらい掘ることができたら、
探しに行かなくとも、「天職」のほうからこちらにやってくると。
自分の目の前にやってきた仕事は、
どんな仕事でも無駄なものはないんだ。
その仕事に誠実に、真剣に、とことん向き合えば、
そこからどんどん新しい仕事に繋がって、
その先に「天職」はあるんだよ、きっと。
さて。
「フロー」の話に戻るね。
フロー状態を作るには、
「少しの背伸び」に加えて、
自分の「強み」を活かすことも重要なんだ。
あなたの仕事を意義あるものにするためには、
あなたが「重要だと思うこと」と、
あなたの仕事が結び付いている必要がある。
そして、そこにあなたの「強み」が活かされていれば、
さらに充実感が深まり、
「フロー状態」が訪れやすくなる…というわけ。
チクセントミハイは、
「フローを体験するには、
明確な目標を持つことが不可欠である。
私たちが何かに没頭するためには、
それをすることが自分にとって重要なことでなくてはならないからだ」
と言っているよ。
私が、重要だと思っていることって何だろう。
大切だと思っている価値観、
「未来の利益」のために意義があると思うことって、何だろう。
今まで仕事をしていて、一番嬉しかった瞬間って、いつだったろう。
なんで、嬉しかったんだろう。
私の強みって、何かな。
仕事をしていて、
教えられなくても楽にできたり、
自分では普通にやっただけなのに、
人から「すごいね」と褒めてもらえたことって、
何かあるかな。
やり続けることが苦にならなかったり、
やっているとエネルギーがわいてくる感じがするのは、
どんな仕事をしているときかな。
私も考えるね、考え続けるね。
みんなと一緒に。
こうしてみんなに向けて、文章を書いている。
誰に頼まれてもいないのに。
そこにもヒントがあるよね、きっと。
「プライベートは楽しい、仕事はつらい」という紋切り型のイメージは、
もう、捨てていいと思う。
「Well-being」のイメージを形にするなら、
私は「胸の奥で静かに燃える炎」を思い浮かべるよ。
今、心穏やかで満たされていること。
そして未来に向かって内なるエネルギーが燃えていること。
その両方を、自分の中に感じている状態。
それが、「幸せ」ってことじゃない?
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※このコラムは主にポジティブ心理学に基づき、
幸せでいるためのエビデンスに基づく方法を紹介しています。
※ポジティブ心理学の分野では「Well-being」を高める方法が数多く研究されています。
※このコラムの参考文献 :「HAPPIER」タル・ベン・シャハー著