アメリカにいる中国人と台湾人と香港人の「絶妙な距離感」
先日、いや今も香港では「逃亡犯条例」改正案の「完全撤回」を求めて大規模デモが続いている。「逃亡犯条例」とは簡単にいうと、香港人、香港に渡航した外国人の犯罪容疑者を、中国側の要請があれば中国へ引き渡すことが可能になる法案である。この法案が通れば、中国が「あいつうざいな👊」と思った香港にいる人間を、中国の法律で裁くことができるようになってしまう。当然、言論の自由は規制されるようになる。
私が日本にいたら、大してこのニュースも気に留めなかったであろう。しかし、今のクラスメイトが香港人で、毎日のようにデモに関するストーリーをインスタで流すので、気にせざるを得なくなった。
その香港人の友達は「私の友達もほとんどデモに参加してる」と言っていて、「気をつけてね!」などのメッセージをたくさん友達に送っていた。
さて、そんな香港人を中国人はどのような視線で見ているのだろうか。そもそも中国国内ではこのニュースは規制されて見られないようになっているが、アメリカにいる中国人は当然ニュースを目にする。
私の日本人の友達のクラスでは、先生が中国人の生徒に「香港のデモについてどう思う?」という質問をし、一瞬教室がヒヤッとしたそうだ。その子は、「香港は元気な国だからね。」と流していたらしいが、人によればもっと批判的な感情が返ってきてもおかしくない。というか、この先生かなり無神経であると思う。
アメリカに住んでいて徐々に分かってきたのだが、中国と台湾と香港にとって、彼らの国の問題は日本人が考える以上にシビアである。何もわからない外国人がズケズケ聞ける質問ではないのだ。
私がそれを一番最初に実感したのが、語学学校の初日に学校で行ったパーティーのときだ。先生が、「今回のタームはどこの国の人がいるのかな?」「日本人の人!stand up!」みたいに進行していたのだが、「台湾からきた人!」と言ったあとに、中国人の男の子がバッと立ち上がって、「台湾は国ではありません。ちゃんと分かってますか?」と言ったのだ。その時のヒヤヒヤッとした空気は半端なかった。
しかし、彼らが友達にならないのかというとそういう訳では全くない。私が「どこの国出身?」と聞いたら「香港!中国とは違う国だから!」と強めに返してきた女の子も、一番仲がいいのは中国人の女の子だ。また、台湾人の男の子の知り合い(A君)も、常に中国人の男の子(B君)と一緒にいる。
一度、私の友達が、A君に「B君とは政治の話をしたことあるの?」と聞いたら「お互いそういう話はしたことない。」と言っていたらしい。A君とB君は、ほぼ毎日一緒にいてベストフレンドに見えるのに、やっぱその点に関してはシビアなんだなと思った。
日本人の私の立場からすると、中国と台湾と香港は別物だと捉えている。というかそうしないと、台湾人とか香港人の友達に「中国でもそうなの?」とか聞いてしまったら怒られそうだ。
でも、一度逆パターンの失敗ならしたことがある。中国人の女の子とタピオカの話で盛り上がっていて、「あれ、タピオカってどこの国のだっけ?確か台湾だよね?」と言ったときに、「…」と無言の空気が流れて、「私的には、台湾は中国の一部という考えをしてるから、中国のかな」と言われた。その瞬間わたしは(あーそうだーそうだったー!😓)と心の中で大量に汗をかいた。こんな風に、平和にタピオカの話をしていても彼らの政治問題が入り込んでくるのだ。
あと一つヒヤヒヤッとした思い出は、台湾人と中華料理屋さんにいたときの話である。確か、彼らは中国と台湾の漢字の違いを、日本人である私と友達に教えてくれていたのだが、「中国の漢字は簡単だけど、台湾の漢字は伝統的な方を使ってるんだ。こっちが本物だよ。台湾は中国とは全然違う。」などと言っていた。そしたら、中国人の店員さんが「おいおい、何言ってるんだ」みたいな感じで話に入り込んできたのだ。その人は「嘘嘘!冗談だよ!気にしないで!hahaha」とすぐに撤回したのだが、みんな一瞬「やべえ」と思ったのは間違いない。
こんな彼らの距離感は、日本人と台湾人のカップルにも現れる。私の友達が台湾人の男の子と付き合っているのだが、「日本の政治の話はいい。だけど台湾の政治の話は絶対にしないでね。もしそれをされたら、君でも僕は怒る」と言われたらしいのだ。
結論、中国と台湾と香港の関係はめちゃくちゃに複雑である。しかし、アメリカで共に暮らしている彼らは、政治の話は避けつつ、うまく共存している。日本人の私からすると「絶妙な距離感」という感じがする。お互い国同時では批判感情があるけど、仲良くなってしまえば、それは一度脇においておけるのかもしれない。だって、自分の立場で考えてみたら、同じ言語を話すのに仲良くならない方が難しい。
でも一つ言えるのは、日本人である私たちは、興味半分で政治の話を彼らにふらないべきということだ。反応は人によるだろうが、よそ者がちょっかいを出せるような話ではなく、いつもニコニコしている人がサッと真顔になってしまうような「シビア」な問題であるということを忘れてはいけない。
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