11.女性は子宮で考える
「男性は頭脳で、女性は子宮で考える」
こんな言葉を聞いたことがある。これは男女の違いを表す言葉として古くから使われているらしいのだけど、「男性は理性で、女性は本能で」というような意味らしい。ふーん。
病院と電話でやり取りして、「付き添いが見つからなければオリエンテーションも手術も延期。もしかしたら子宮を取るかもしれないのよっ。」と言われたのが前回の話。
(※子宮を取るっていうのは電話の看護師のオリジナル発言だったことは後日分かるのだけど、この時の私はまだそれを知らない)
思うようにならない現実への悔しさに、電話越しでちょびっと泣いてみたものの、看護師とのやり取りに涙が凍った私は、とりあえず子宮を取るとはどういうことなのかと、子宮頸がん・子宮体がんに関連するブログを読み漁った。
子宮頸がんの高度異形成手術から回復し元気になった人、その後妊娠出産している人、悪性腫瘍が子宮体がんとなり子宮を取ることになった人、抗がん剤などで治療中の人、幸せを綴る人、孤独に耐えている人、ブログが途切れた人・・
様々な女性の姿がそこにあった。
「子宮を取るかもしれない」
この言葉はこれまで意識なく保っていた私の身体を強く意識させた。妊娠出産経験もない自分。今後もその可能性もないかもしれない自分。
もし子宮を失うとどうなるんだろう・・
子宮を取るということは様々な身体の部分に影響があるようで、排尿障害とかホルモンバランスの変化による体温調節の困難などいろいろ書かれている。何より自分の精神に大きな変化が起こるだろう。うまく想像しきれないけれど、巨大すぎる喪失感だろうと思う。
私はそれを受け止められるのか自信がない。途方もないことのように思える。そしてそれを受け入れ乗り越えている人も多くいて、それも私が持っていない途方もない強さに思える。
子宮・・これまで当たり前にあった体のそれは、単に臓器というだけでも、妊娠出産だけを意味するものでもないように思える。
子宮・・お前は一体何者なんだ・・?
返答できない子宮の代わりにお腹が「ぐ~」と鳴る。(おめえはすっこんでろ)
ああそうだ、こんなことしてはいられない・・付き添いだ。病院に付き添ってくれる誰かを何とか見つけなくっちゃ・・
ああでも、手術の日に万が一、看護師が言うように子宮を取ることになるとしたら、オリエンテーションまでにそれを決意しなくちゃ。
子宮を取るのか取らないのか。取らないという選択肢があるのかどうかも分からない。取らないと命に関わるよ、と言われたらどうだろう。命が優先だろうとは思うけど、子宮と共に生き延びることは出来ないのだろうか。
ああその前に、付き添い誰か見つけなきゃ・・
こうして思考が右往左往し立ち往生してたら、結局何も進まず決まらないまま、何とオリエンテーションの前日になってしまった・・
・・というか・・
実は誰にも声を掛けられずにいた。
誰に声を掛ければいいのだろう。
誰が付き添ってくれるのだろう。
もし万が一その人がコロナ感染をして、その人の家族に感染したら・・その人の職場の誰かに感染したら・・もし何かあったら・・
ああ子宮を取るかの覚悟・・・あああ、それより付き添い、ああああ子宮、あああああああどうする子宮!!
で・・・ふと。タイトルのこれ。
ー 女性は子宮で考える ー
今から話すのは、きっとおかしい考えなんだけど。その時はそう思ったので書きます。
昨年、
私が家族みたいに兄弟みたいに一緒に暮らしてた男の子が突然この世界からいなくなってしまって、その子はずっと重い精神病と闘っていて、私は何とか絶望の中でも人生にはきっと希望があると思ってほしくて、それは私も人生はそうでありたいと信じたかったからなんだけど。
「絶対あやこさんはぼくより先に死なないでね。一日でいいからぼくの後ね。」って言ったその子は私の予定寿命120歳よりうんと早くに一人でいっちゃって。
で、ふと思ったんだ。
「あの子、どこかできっと一人でさびしいのかなー。」って。
「あーそれならそうか。それでもいいのかな。そういうふうにできているのかな。」って、何かよく分からないけど一人で納得して。
そしたら、ふっと、今への未練がなくなって。
頭の中のごちゃごちゃがすーっと消えてった。
何一つ論理的じゃないけど私の答え。
・・・
何がどうなるのか分からないけど、オリエンテーションでもし子宮を取る決断を伝えなければならないなら、
私は子宮を今はそのままにしたいと伝えようと思った。病気が拡がっていたら、そんなことは出来ないのかも分からないけど、とにかく今の気持ちだけ伝えよう。後のことはスーパードクターと相談すればいい。何かしらいい声で答えてくれるだろう。
何となく生きる長さにも見通しがついた。
・・・
そして明日がオリエンテーションという時。
ダメ元で何人かに付き添いをお願いできないか連絡してみようと思って、一発目に連絡した友人ワサエちゃん(仮名)の返事。
「心配で連絡しようと思ってたんだ!明日?明日休みだよ!付き添い行けるし、あ、手術の日も休み取れるから行くよー!」と・・・
て、て、て、天使キターーーーーーーーーーー!!!!
神様!仏様!天使様キターーーーーーーーーー!!!(お迎えがきたみたいに聞こえる)
出来たら下半身(ここでは魅惑と呼ぶ)のことだし、付き添いは女性がいいな・・って思ってたから、女性天使キターーーーーーーーーー!!!
え、まじでまじでまじで?明日なの。明日だよ。平日だよ。仕事でしょ?何で?何でいいの?いいの?ごめんね急で。本当に明日来てもらえるの?
ワサ「いいよー何時でも行くよっ!」
もうこれは本っ当にありがたかった。通常平日勤務のワサエちゃんは、このコロナの折で交代勤務となりちょうどこの日が休日となっていたそうだ。奇跡かよ。
ありがとうワサエちゃん!このご恩は子々孫々に至るまで語り継ぐよ!(子どもいないけど)
ワサエちゃんに甘みを抑えることなく甘えて、付き添いをお願いすることに。更に甘みを加えて書記係もお願いする。(ワサエちゃんは甘党だったろうか)
人生、思えばずっと人に甘えっぱなしだけど、やっぱりそれでも甘えてみるものだ、頼ってみるものだと思う。(私はそればかりではいけないんだけど。)人って優しいな・・
そしてその後も別の友人が「手術大丈夫?付き添い必要なら行くから言ってね!」とか言ってくれたり、身近な人も「出来ることあったら何でも言うんだよ!」とか・・妹は「北海道から車で行く!」とか・・
はあ?もう何なの!? ・・世の中天使で溢れてるんですけどぉぉ・・涙
こうして私は「付き添い必須!」という大壁を乗り越えて、予定通りの日程で『オリエンテーションwithワサエ』に向かうのでした!
つづく・・
※もしもあなたが私と同じような状況で誰も見つからず困っていたら連絡してね。(自転車圏内なら速攻) 行きます!だって人類皆家族。