フルート:本田歌音②
歌音ちゃんと私
インタヴューで久しぶりに会った歌音ちゃんは、ものすごく大人びていた。
数年前の新年にスーパーのイートインコーナーで偶然会った時はまだまだ不安そうな様子だったけど、しばらく見ないうちに落ち着いた芯のある素敵な女性になったなと感じました。
このインタヴューの数日前に道で久しぶりに会った時、ものすごく急いでいて「今からオペラでトップ吹くんです。頑張りますっ!」って笑顔で挨拶して去っていった。
ただでさえ世界中が大パニックの中、単身知らない異国に引っ越してきて、困ったこともたっくさんあっただろうに、それを一つ一つ乗り越えて大人になってきたんだなあと思ったら、彼女が走っていく後ろ姿を見てこっちが泣きそうになった。笑
今回はフィンランドの第一印象と、今のシベリウス音楽院の様子をもう少し詳しく伺っていこうと思う。
フィンランドの最初の印象
フィンランドに興味を持ってから、フィンランドについて調べ始めて「なんか寒そう…」って。笑
だってネットで調べたフィンランドって真冬の雪景色か、緑生い茂る真夏か!で両極端なんですよ。あとオーロラとムーミン。
それからフィンランドにいるうちにサイマー湖のワモンアザラシ(saimaannorppa)を見に行きたいです!
あとは母が車のラリーを見に行きなよ!と言ってくれたんですがくれたんですが、ユヴァスキュラが遠い…。
スキーも検定持っているくらい得意なので、ぜひこっちでスキーをやってみたいです。
実際住んでみて、すごく安全な国だなと感じています。今までヨーロッパもアジアも色んなところに行きましたが、リュックを背中に背負えるってすごいって思います。楽器を持っていても跡をつけられたり、持っていかれることもない。誰も他人のことをいい意味で気にしてない。
それから天気は冷たいけど、人は温かいなって感じています。 一見冷たそうに見えるけど、わからないことを聞いたら優しく教えてくる人が多いですよね。中にはやっぱり英語が苦手な人もいてフィンランド語しか喋られなくても、外国人の私のことをなんとかして助けようとしてくれる。
日常生活でもそこまで困ったことはない気がします。
雪の日が大変なくらいで。
ご飯も美味しいし、バスも乗り方がわかれば簡単だし、スリも少ないし。
あ、カビーキラーみたいなのが欲しいので、どなたかいいもの知っていたら誰か教えてください!笑」
筆者も知りたい!
歌音ちゃん、今度一緒にスーパーでカビキラーみたいなの探そう!笑
シベリウス音楽院でびっくりしたこと
シベリウス音楽院では、将来的に「音楽家として生きていく」ために多種多様な授業が展開されています。
歌音ちゃんに彼女のビックリした授業、そして面白かった授業を伺いました。
「授業でピッコロのレッスンがあること!
学士の間に副科でピッコロのレッスンを取るんですけど、これ個人的にはすごくいいことだと思うんですよね。日本にはないです。
日本だとオーケストラでも吹奏楽でも、突然ピッコロ吹いてって言われても初めて吹く人結構いるんですよ。そもそもフルート人口が多すぎて、オケに乗れない人も結構いるのにピッコロなんて触る機会が少ないんですよね。
ピッコロの授業を通して、ピッコロにはピッコロの吹き方があるっていうことを知りました。今までフルートと同じように吹いていたんですが、フルートとは力を入れる場所がちょっと違うのでレッスンがあって良かったです。ピッコロはフルートとは全然違う楽器なんですよね。
しかもちゃんとオケでピッコロを吹いている人(フィンランド放送響のソロピッコロ奏者ハンナ=カーリナ・ヘイキンヘイモ)が教えてくれるって素晴らしいことですよ。」
「それからオケスタの授業も取れるし、実際にオケにインターンできる仕組みがあったり、それの為にもオーディションもあって、模擬オーディションもあるし、さらに伴奏の先生がレッスンについて来てくれてたりもするんです。
最初、その伴奏の先生にどうお礼をしたらいいかわからなかったので伺ったんですが、その人が言ってくれた言葉が今も忘れられなくて。
「私たちは後輩の音楽家を育てる為にここにいるの。だからお礼は物じゃなくて、あなたがいい音楽家になること」
って言ってくれたんです。その後もピアニストの市橋直子さんにも同じようなことを言われました。こういう考えの人たちがこの学校で教えてくれているのがとても嬉しいなって思います。
この「後輩を育てる」って気持ちは、これからもずっと継承されていくんですよね。
きっと世の中には義務感で教えている人たちもたくさんいる中で、シベリウス音楽院では先生たちが高い志を思って私たちに接してくださるのでとても嬉しいです。
こっちにきてすぐの頃はフルート続けようか悩んでいた時期もあったんですけど、自分一人の時間が増えて色々考えて、さらに先生方にそういう言葉をかけてもらってちゃんとフルートと向き合わなきゃいけないなって気持ちを取り戻すことができました。
そういう伝統っていうか、ここから先も伝わっていくものっていうのをちゃんと受け継いで、私もちゃんと勉強しなきゃって思いました。
だから今ちゃんと音楽と向き合えているから「今まで私がやってきたことは無駄じゃなかった」って思えているし、アイディアをたくさん提供してくれて音楽家としての引き出しをたくさん作ってくれるこの環境がすごくいいなと思っています。」
シベリウス音楽院で面白かった授業
「ディスカッションする場面がすごく多いですね。
例えば教育学の授業では「どうやって小さい子に楽器を教えるか」っていうのをお互い意見交換をするんですけど、その時に「音楽を教える上で何が大切か」っていう話になって、他の人の意見を聞いて新しいアイディアをたくさんもらいました。
私がいたのがフィンランド人と留学生の混ざったクラスだったので「自分の国ではこういう風に教えている」とか「自分の出た音楽学校ではこういうメソッドを使っている」とかも聞くことができました。」
「あとはヨガのクラスがあります!ピラティスの授業もあります!それから私は時間がなくて受けられなかったけど、アレクサンダーテクニックの授業とかも。
ソルフェージとか理論とか歴史とかそういったことだけではなく、自分の体のことを知る授業ってすごく大事だなと思いました。
入学してすぐのまだ授業が始まる前にオケの学生で集まって学校の施設で合宿したんですけど、その時にも「自分の吹いている時の姿勢って骨に筋肉がついている状態でどう作用しているか」というセッションがあって、「あなたは今こういう姿勢で吹いているけど、ここ痛くない?うん、痛いよね?じゃあどうしたらその痛みがなくなるかな?」って話し合いをしました。
ボディマッピングみたいな感じですかね。でもボディマッピングも別に授業があります。日本にはないかもしれません。
演奏することも大事だけど、その「土台作り」も学べるっていいですよね。一度習ったあとは、自分の体の使い方をよく考えるようになりました。
ピラティスの授業はオンラインで取りました。ピラティスの先生はホルンの先生なんですよ。オンラインで勉強できるってすごく便利でありがたく思いました。」
ちなみに面白い授業といえば、筆者は在学中にアフリカンダンスを選択しました。
国立オペラなどでも振付師の経験があるアフリカ出身の先生が教えてくれました。
リズムの取り方が西洋音楽とも日本の音楽とも異なるので、とても楽しかった記憶があります。
あとがき
今回はシベリウス音楽院での授業の内容などについて掲載しました。
次回は大学受験の裏話や歌音ちゃん自身の音楽に対する考え方などをお届けします。
次回もお楽しみに!