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階段ピラミッドの中の世界

ギザの大ピラミッドがあまりに有名だが、エジプトにはそれよりも古いとされているジョセル王の階段ピラミッドがある。今から4600年前の建造物で世界最古の石造建築物と言われ、ギザから車で約1時間ほど郊外の砂漠のど真ん中にある王墓だ。当初、花崗岩でできた白壁には水を模してラピスラズリの碧いパネルがはめ込まれていたという。ナイルの氾濫が頻繁に起きた当時はデルタ地帯だったこの地に建てられた墓の美しさはまさに王の権威とエジプトという国の誇りの象徴だったのだろう。このピラミッドに関しての資料を読むと、王の他に、ピラミッドの建築士、王の宰相イムホテップの名が幾度も登場する。彼は建築士であると同時に医学にも通じていたそうで神と崇められていたそうだ。
 
ピラミッドの入口へ向かうとそこは列柱廊だ。石の天井に開けられた窓から細く太陽光が差し込んで、両脇に20本ずつ並ぶ高い柱の列の間を進むとまるで神話に出てくる神殿の中を歩いているようだ。列柱廊を抜けるとそこはびっくりするほど広い中庭で、正面にはピラミッドが確かな存在感でそびえ建っている。

列柱廊

ピラミッドの中へ入る。外とは対照的にそこは光が入らない暗い通路で、空気はひんやりと冷たく、狭い。身を縮めるようにして進むと、やがて王の玄室にたどり着いた。壁に掘られたヒエログラフには当時の色、黄色や赤、青がところどころ残り、天井を埋め尽くすようにびっしりと掘られた星、星、星。そしてガイドが、壁のレリーフをよく見るようにと懐中電灯を当てた、その箇所を見て息を飲んだ。王が墓の中に自分の横顔を掘らせたのだと説明されたが、後頭部の膨らんだ巨大な頭と細い首。何度見てもそれはいわゆる宇宙人の横顔にしか私には見えなかった。これのどこが王の横顔なのだろう。一緒にいたグループの仲間はみんな王の横顔だと納得していたが、一体みんなが見ていたものは私が見たものと同じだったのだろうか。

このピラミッドを設計建築した王の宰相、イムホテップとは何者だったのだろう。どんな叡智を王と王国にもたらしたのだろう。彼の墓は今もまだ見つかっていないという。古代エジプトの王とその神格化された宰相、墓に残したレリーフと無数の星。エジプトのロマンは夢と想像力を掻き立てる。いつの日か、そのミステリーが解明される日は来るのだろうか。

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