こころほかほかあたたかい町をふりかえる 【大人が仕込んだ部分】
こどもがつくるこどもの町 なのでこどもたちが「こんなまちにしたい」と思ったことを形にしたのですが、大人が「仕込んだ」部分ももちろんあります。
それは、「私たちがめざしたい社会をこどもたちが体験する」ということです。
●時給は1000円以上
2023年8月時点の新潟県の最低賃金は890円です。全国平均は1004円。「こころほかほかあたたかい町」では1クール(90分)のうち1時間ほど働くと(ここは柔軟です。1クール内で数回転職するこどももいました)3ココ(1500円相当)のお給料を受け取ります。そのうち1ココ(500円相当)を納税として白い箱に自分で入れます。天引きではなく、自分の手で、見える形で納税するようにしました(透明化!)。手元には2ココ(1000円相当)残るので、働いていない時間は食べ物を買ったり、ギルドで遊んだりできます。新潟が目指したい最低賃金を、こころほかほかあたたかい町では導入しました。
●教育は無料
こころほかほかあたたかい町には、こども実行委員の希望で「こども大学」という企画がありました。たくさんの面白い大人が来てくれて、面白い話をしてくれました。大学の参加は無料です。プロボノで登壇してくださった先生方のおかげでこども大学は本当に充実したコンテンツだったので、詳細はまた別の投稿で書こうと思います。こころほかほかあたたかい町では私たちが目指したい(大学までの!)無償の教育を導入しました。
●だれでも社会に参加・参画できる
ヘルプマークを導入しました。参加するこどももボランティアを含めた大人も、なんらかの支援や配慮が必要であれば市民証などと一緒にヘルプマークを紐に通してもらいました。裏に具体的な支援内容(指示は一つずつ、○分ごとに休憩が必要、時短で働きたい など)を書いてもらい、仕事場にいる大人ボランティアが確認し対応しました。ヘルプマークを使った人は数人でしたが、世の中にはこのようなものがあるという周知ができたと思います。だれでも「このように助けてください」とセルフアドボケートができる社会が、わたしたちが目指したい社会です。今回参加した学生ボランティアの中には全盲のゼミ生がいました。ゼミボランティアをしないと単位を出せないので彼女もしっかりボランティア活動をしなくてはいけなかったのですが、合理的な支援を受けながら、こども大学の講師として点字を学ぶワークショップを行い、彼女がもっている力や知識で「こころほかほかあたたかい町」に貢献することができました。
●こどもの権利が完全に守られてること
こどもが作るこどもの町なので、当たり前にこどもファースト、こどもがまんなか なのですが、大人はこどものあそぶ権利、休む権利、決定する権利、失敗する権利を尊重することが義務付けられていました。大人は全員以下の禁止事項の説明を受けてから町に入ります。警察が取り締まりをしていますし、違反行為は絶対に許されません(会議では罰金という案も出たくらいです。実は留置所も作ったのですが、大きくて持ってこれませんでした 笑)。素案は私が作ったのですが、こども実行委員が重要度を考え並べ替えたり、暴力と搾取の禁止をつけたしました。
こどもは小さくても市民であり、そして完璧な人間であり、人格があり、人権があり、意見があります。何をしてもいいし、何もしなくてもいい権利があります。それらを大人が邪魔しないことを徹底しました。
●民主主義
最上位目標があり、対話で合意形成がなされる社会が、私たちがめざしたい社会です。何か決めなくてはいけないことがあれば話し合うこと。みんなの意見が聞こえること。だれひとりとして取り残さないこと。だれひとりとして排除されないこと。こころほかほかあたたかい町では民主主義の基本がこどもたちに見えることを大切にしました。
このように、私たちが目指したい社会を「こころほかほかあたたかい町」という仮想の町のフレームワークとして作り上げ、こどもたちには「これが自分たちがつくっていく町」として体験してほしいのです。この体験をしたこどもたちはもしかしたら、「こころほかほかあたたかい町」の外の、リアルの社会に疑問を持つかもしれません。そんなクリティカルな視点とちょっと先の社会への視野を持ったこどもたちが自分たちの社会を変えていく人になるかもしれない、と大人は希望を持ってもいいと思うのです。あの公園で、希望の種をたくさん蒔いてみよう、「こころほかほかあたたかい町」の外でこどもたちが根を張り、花を咲かすかもしれない。そんな気持ちです。
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