1人で頑張る彼女の物語と考察
前の職場に、とても真面目で、優しくて、責任感の強い女の子がいた。私より少し年下で、セミロングの髪と白い肌、おっとりした話し方のその子は、おとなしそうだけど芯が強い印象だった。
その子の入社から6年程経った頃、私と業務で関わるようになり、一緒に仕事をすることが増えた。
すると、彼女の仕事のやり方にビックリした。
システムからダウンロードして使えるデータがあるのに、なんと紙の資料からExcelに1つずつデータを転記していたのだ。それも7,8桁の数字を100個以上!
彼女はどんな仕事も、任されれば残業しても一人でやる子だった。上長も他の同僚も彼女の責任感の強さを褒めていたし、頑張りを認めていた。
でも、その時間のうちデータを入力する時間にどれほど充てられていたのだろう?きっと他にもそんな本来必要のない、途方もない作業を一人でしていたんではないだろうか?と思う。
ひと言聞いてくれれば、教えられるのに。
彼女の仕事ぶりにどうこう言いたいわけではない。
彼女は全身に蕁麻疹を出しながら働いていて、そんな彼女を思い出して少し苦しくなるのだ。
上長も同僚(私も含め)も彼女の頑張りを褒めるのではなく、もっと手前で話を聞いて、伝えられることがあったんではないだろうか?と反省した。
「落ち着いて視野を広げたら、もっと楽に仕事が進むよ」
「しんどいなら立ち止まって周りを見渡して頼るんだよ」
「もっと楽する方法を探してもいいんだよ。」
「しんどいことが頑張ってるってことじゃないよ」
私がシステムからデータをダウンロードして資料を完成させて彼女に渡すと、申し訳なさそうに「すみません」と言われた。
「ありがとうって言ってくれたら嬉しいから、また手伝いたいな」って伝えたら、可愛い笑顔で「ありがとう」って言ってくれた。
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あなたは彼女をどう思いますか?
少しこの状況を客観的に見てみると、彼女は決して”かわいそう”でないと思います
他の方法を探すことも、人に頼ることも、彼女にしかできない、彼女の選択肢です。なのに「一人で抱え続ける」を選択しているのは彼女自身なのです。
どの選択肢を選ぶか?で、きっと彼女は時間の使い方も、仕事へのイメージも、モチベーションも全然変わるはずです。つまり、「人生は全て自分次第」ということ。冷たいように聞こえるかもしれないけれど、これが実は世界で一番優しい格言じゃないかと思っています。
今、自分が選択を変えることで
未来は自分が望むものに変えらるということなのです。
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そして、マネージメントや会社側の視点で見てみると、さらに違った見方が出来ると思います。
彼女が今の選択をし続けることは、残業代等のコスト面、入力ミス等の人為的なミスのリスク面、彼女の健康という意味での人材面、あらゆる面で良い影響があると言えません。
長い視点で見るとどうでしょう?
もし、今彼女が「楽な方法」を考えたら、次にその業務を担当する人が最初から「(今より)楽に」その業務を回すことができます。
彼女が何を選択するか?は実は彼女だけの問題ではないということです。
そう思うと、彼女自身のためだけではなく、「楽な方法を探すこと」が周りのためにもなると私は思います。