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《神話-7》戦いの女神アーテナー

こんばんは。
Ayaです。
今日は戦いの女神・アーテナーについてとりあげます。

アーテナー

何度も取り上げているゼウスとへーラーですが、実はゼウスにとってへーラーは3番目の妻にあたります。
2番目の妻は掟の女神テミス(裁判所でよく飾られている目隠しをしてはかりで測っている女神)で、へーラーとの結婚が決まったときに身をひいているのですが、最初の妻メティスとは強烈なエピソードがあります。
メティスとはゼウスが父クロノスを倒す前からの仲で、ゼウスがクロノスを倒す手助けもしたといわれています。晴れて二人は結婚し、メティスが妊娠しました。しかし、ゼウスは彼女が身籠った子どもが自分を倒すことを恐れ、なんとメティスを飲み込んでしまったのです!(父子揃って同じ考えだったようです)
しばらくたったころ、ゼウスは強烈な頭痛に襲われます。我慢できなくなり、ペパイストスに命じて頭を斧で割らせました。すると、ゼウスの頭から完全武装した女神が誕生しました。彼女こそアーテナーです。

クリムト『パラス=アテナ』
額縁はクリムトの弟が手がけている。

さて、アーテナーは『戦いの女神』とされます。彼女が司るのは『正義の戦い』であり、ゼウスとへーラーの息子・アーレスは『戦闘』の神で残虐性も厭わないという違いがあります。そのため、英雄を助けるという立場での登場が多いのです。
また誕生のエピソードから知恵の女神、さらには学芸や工芸の女神ともされるようになりました。まずは工芸の女神としてのエピソードを取り上げます。

アラクネー

アラクネーという織物が得意な女性がいました。彼女は工芸の女神であるアーテナーより上手いと自慢していました。
彼女の噂を聞きつけたアーテナーは老婆に変身して、アラクネーを諭します。しかし、アラクネーは全く態度を改める気がないため、アーテナーは変身を解いて、彼女との勝負にうけてたちます。

ベラスケス『アラクネの寓話』
奥に鎧姿のアーテナーが描かれている

アーテナーは自身を含めた神々の栄光の歴史を、アラクネーはゼウスの浮気など神々のスキャンダルを織り上げました。アーテナーはアラクネーの技量を認めたものの、神々のスキャンダルを主題としたことに怒り、引き裂いてしまいます。アラクネーはプライドを傷助けられ、自殺してしまいました。彼女の自殺を知ったアーテナーは不憫に思い、彼女をクモに変身させ、永遠に織物を楽しめるようにしました。

エリクトニオス

さて、アーテナーはアルテミスと同じく、『処女神』とされています。同じように人間の男性に水浴中の姿を見られてしまいますが、アルテミスのように殺すまではせず、彼を失明させました。さすがに可哀想と思ったのか、アーテナーは彼に『予言の力』を与えました。彼の名前はテイレシアスといい、ギリシア史上でも屈指の予言者となりました。彼についてはテーバイの回で詳しく述べようと思います。
面白いことに『処女神』であるアーテナーには息子がいます。
ある日、アーテナーは武器の修理の依頼を頼みにペパイストスの工房を訪れました。当時妻のアフロディーテに浮気され、やけになっていたペパイストスに抱きつかれます。彼を蹴り飛ばして処女を守ったアーテナーですが、脚にペパイストスの精液がついたため、羊毛で拭き取って地面に投げ捨てました。すると精液がこぼれ落ちた大地が割れ、下半身がヘビの男の子が生まれました。
アーテナーはこの男の子を隠して育てることを決め、アテナイ王のケクロプスのもとに箱に入れて預けることにしました。アーテナーが訪れた時ちょうどケクロプスが留守だったため、娘たちに預けました。『開けてはならない』と命じられていましたが、娘の一人アグラウロスが好奇心に負けて、箱を開けてしまいます。下半身がヘビの赤ん坊が入っていたため、大騒ぎになりました。

ルーベンス『エリクトニオスを見つけるケクロプスの娘たち』

結局、アーテナーはこの子どもを自分の神殿で育てることにしました。この子どもはエリクトニオスと名付けられ、ケクロプスの養子となってアテナイの王となります。
かと言って、アーテナーは箱を開けてしまったアグラウロスを許したわけではありませんでした。彼女の妹にヘルメスが通っていると知ると、彼女に妹に対する嫉妬の心を植え付けます。彼女はヘルメスを誘惑しますが、ヘルメスは怒り、彼女を石にしてしまいました。

ヴェロネーゼ『ヘルメスとアグラウロス』
ヘルメスを必死に引き止めようとしているアグラウロスと、二人を見ているその妹。

アーテナーといえばアテナイの守護神となったエピソードがありますが、このエピソードはポセイドンの回で取り上げようと思います。
三枝和子著の『ギリシア神話の悪女たち』で、アーテナーは人々が都市で生活するようになってからの神ではないかと書かれていました。たしかに神としての役割や甲冑を着ているビジュアルなど、キャリアウーマン的で新しい神さまなんだろうなと納得しました。
アラクネーのエピソードは昔から女性をクモに変身させるって、イジワルなのでは?なんて思ってしまいます。
こどもがいるのに、処女神って面白いですよね。聖母マリアもそうですが、『純潔』の貴重性がわかるエピソードです。
次回は今回少し登場したヘルメスについて取り上げる予定です。

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