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《神話-11》英雄と女性たち


こんにちは。
Ayaです。
ギリシア神話では様々な武勇で知られ、人々から英雄と崇められた者たちがいました。
今日から2回に分けて、3人の英雄と、彼らに関わった女性たちについてとりあげます。

王女メディア

テッサリアにイアソンという王子がいました。彼の父は叔父に王位を簒奪され、不遇のなかで成長しました。彼は成長すると、叔父に王位の返還を求めました。当然叔父は彼に王位を返還する気はありません。そこで、叔父は『黄金の羊毛を持ってきたら、王位を返還する』と約束しました。
この『黄金の羊毛』はアジアのコルキスという地にいる羊から取れるものでした。その存在自体噂に過ぎませんでしたし、コルキスの王が許すはずがないとの思惑がありました。
イアソンは早速船を作ってコルキスに向かいます。この船は職人の名前から『アルゴス号』と名付けられ、この冒険の噂を聞きつけて、武勇の誉高い男たちも集まってきました。ヘラークレース、カストルとポリュックス、オルフェウスなど50人の勇者たちで、彼らは『アルゴータイ』と呼ばれました。
ヘラークレースが戦線を外れたり、船が渦に巻き込まれそうになったり、様々な困難を乗り越え、一行はコルキスにたどり着きました。
コルキスの王は案の定黄金の羊毛を取ることを許しませんでしたが、イアソンに一目惚れした女性がいました。コルキスの王女・メディアです。彼女はイアソンへの愛のために、智慧や得意の魔術を駆使しました。そのおかげでイアソンは黄金の羊毛を手に入れました。
目的のものを手に入れたイアソンは、メディアを連れだしました。コルキスの王が追ってきましたが、メディアは目の前で幼い弟を惨殺、とりみだすコルキスの王のスキをついて、一行は逃亡に成功しました。
約束を果たしたイアソンでしたが、叔父は約束を翻し、王位を譲りません。
夫の念願を果たすため、メディアは暗躍します。父の老いを気にしていた叔父の娘たち(イアソンの従姉妹)に『お父様をバラバラにして、煮込みながらこれから教える呪文を唱えなさい。そうしたらお父様は若返りますよ』と唆したのです。叔父の娘たちは実行しますが、呪文が嘘だったのです。叔父の死によってやっと王位を手に入れるはずだったイアソンでしたが、人々はメディアの恐ろしさを知っていていずらく、ふたりはコリントスに移り住みます。
コリントスでメディアは子どもたちを出産しましたが、イアソンはメディアを恐れ、夫婦の間には隙間風が吹いていました。そんなとき、イアソンはコリントスの王に気に入られ、娘との結婚を勧められます。メディアとの関係は内縁関係であり、彼女に飽き飽きしていたイアソンは、この縁談を喜んで受け入れました。メディアはイアソンから別れを切り出され、健気にも王の娘の結婚衣装まで用意して別宅に立ち去りました。
王の娘がこの結婚衣装を試着したところ、突然火がつき燃え上がりました。娘も助けに入ったコリントスの王も死んでしまいました。怒ったイアソンは子どもたちを連れて逃亡したメディアを追いかけました。

ドラクロワ『王女メディア』

イアソンが追いついたときには、すでに子どもたちは息絶えていました。母のメディアが斬殺したのです。あまりのことに呆然とするイアソン。彼を嘲笑しながら、竜に轢かせた馬車でメディアは姿を消しました。
すべてを失ったイアソンは放浪して、アルゴス号の残骸にたどり着きます。彼がかつての栄光に思いつつ眺めていたところ、アルゴス号が崩れ出しました。イアソンはその下敷きとなって亡くなりました。

テセウス

逃亡したメディアは身元を隠して、アテナイの王の後妻におさまります。彼の子どもを出産して第二の人生を歩み始めた彼女でしたが、問題が発生します。王が昔恋人に産ませたテセウスが現れたのです。
魔術でテセウスの身元を知った彼女は、夫に彼を反逆者と讒言して処刑させようとします。処刑を実行する直前、王はテセウスが自分の子どもであると気がつき、メディアを問い詰めます。言い逃れできなくなったメディアは赤子を連れて逃亡しました。のちに、この赤子はアジアに国を建国し、母の名前から『メディア』と名付けました。
メディアが逃亡し、王子として迎えられたテセウス。前回取り上げたとおり、クレタ島の怪物・ミノタウロスにアテナイの若い男女を生贄として捧げていると知ると、退治に出かけます。(このミノタウロス退治はこちらをご覧ください)

クレタ島から帰国したテセウスはアテナイ王に即位しました。前回取り上げたとおり、ミノタウロス退治に協力したアリアドネーを捨てた彼でしたが、皮肉なことにその妹パイドラと再婚します。テセウスは前妻に産ませたヒッポリュトスを呼び寄せます。
ヒッポリュトスは絶世の美男子でしたが、女性を嫌い、純潔の女神アルテミスを崇拝するような人物でした。日頃から彼の態度が気に入らなかったアルロディーテは、パイドラが彼に恋に落ちるように呪いをかけました。
パイドラは継子のヒッポリュトスに恋焦がれて耐えきれなくなり、彼に告白します。しかし、純潔を尊ぶ彼からは、罵詈雑言が浴びせられました。夫テセウスにバレるのを恐れたのと、ヒッポリュトスへの恨みから『ヒッポリュトスに暴行された』と遺書を残して、パイドラは命を絶ちました。

カバネル『フェードル』
『フェードル』はパイドラの仏語。ラシーヌによる劇は最高傑作とされる。


妻の死に悲しんだテセウスは、息子の弁明を聞かずに追放してしまいます。その上、日頃から崇拝していたポセイドンに息子を殺すよう願います。
テセウスの願いが通じ、ヒッポリュトスの馬車が暴走して、彼は重傷を負います。崇拝をうけていたアルテミスは不憫に思って、瀕死のヒッポリュトスをテセウスのもとに運び、真実を伝えます。パイドラの讒言だったと知ったテセウスは息子に許しを求め駆け寄りました。しかし、すでに遅く、ヒッポリュトスは息を引き取りました。

アルマ=タデマ『ヒッポリュトスの死』
純潔を求めたためか、乙女たちに崇拝された。彼の神域には死の原因となった馬を近づけてはならないとされた。

妻と息子を亡くしたテセウスは、再婚を考えます。同じ頃妻を亡くしていた友人と『再婚するならゼウスの娘がいい』という話になり、スパルタのヘレネーとベルセフォネーを略奪して妻とする計画を立てました。
スパルタからヘレネーを攫って、自分の母に預けたテセウスたちはベルセフォネーを略奪しようと冥界に下ります。ベルセフォネーの夫・ハーデスが許すはずもなく、二人はイスに縛り付けられます。縛り付けられて何年か後、ヘーラークレースに助けられアテナイに戻ります。しかし、嫁探しのために何年も国を離れ、ヘレネーの故国スパルタから侵攻を受けたアテナイの人々は彼にあきあきしており、廃位させていたのです。
スキュロース島に身を寄せたテセウスでしたが、その地の王は簒奪されるのではないかと彼を恐れ、海に突き落として殺してしまいます。デルホイの神託によって、アテナイの人々は彼を許し、遺体を引き取って英雄として祀ることとしました。

本当はヘラークレースについても取り上げるつもりでしたが、長すぎるので前後編に分けました。
イアソンひどいけど、メディアの我が子殺しは恐ろしいですね。北条政子の亀の前事件がかわいくみえちゃう‥。
テセウス、こんなんですが、他にも活躍のエピソードがあり、ヘーラークレースについで英雄とされています。しかし、アリアドネーを捨てて、パイドラには裏切られ、最後は嫁探しのために国を空けるって‥ドンくさすぎません??そりゃ民心離れるよ‥。
一応弁護しておくと、ヘーラークレースはギリシア人固有の英雄でしたが、テセウスは別の民族の英雄だったらしく、こんな扱いになったのかも??
最後に、とりあげるのを忘れていたエピソードを紹介します。ミノタウロス退治で、『生きて帰ってきたら、白い帆を上げて帰ってくる』と父王と約束したテセウス。しかし、アリアドネーの一件のせいで忘れてしまい、黒い帆のまま帰ってきました。これをみた父王は早合点してテセウスが死んだと思い込み、海に身を投げました。そのため、父王の名前(アイギストス)から、海は『エーゲ海』と呼ばれるようになりました。
‥やっぱり、テセウス、どんくさいよ‥。
次回は『ギリシア神話最大の英雄・ヘーラークレース』です!

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